クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第一話 The Black Ones (2)

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   ◆◆◆

「アイちゃん、遅いよー! はやくはやく!」

 友達はわたし達よりも先に来ていた。
 待ち合わせ場所である駅の前で大きく手を振っている。
 わたし達は慌てて駆け寄り、お母さんが頭を下げた。

「すみません。お待たせしてしまったようで」
 
 これに、お友達のお母さんも同じように頭を下げて口を開いた。

「いえ、こちらが待ち合わせ時間より早く来たせいですから気になさらないで……この子があまりに急かすものですから、私も気が焦っちゃって」

 こんなやり取りをしてる最中でも、友達は「はやくいこーよー」な感じを出している。たぶんわたしも出しまくってる。
 でもいくらわたし達がその気を出していても、列車が来る時間がはやくなるわけじゃない。
 だからお母さんは落ち着いたいつもの調子で口を開いた。

「列車が来るまで少し時間がありますし……そこらの露店でものぞいてみますか?」

 駅の周りにはたくさんの露店が並んでいる。
 店の種類はいろいろ。食べ物を売ってる店が多いけど、アクセサリーとかを売ってる店もある。
 そしてその品ぞろえの中に、わたしが大好きな定番のものがある。
 わたしはそれをすぐに声に出した。

「わたしフランクフルトが食べたい!」

 またそれ? と言いたげな表情をお姉ちゃんが見せたが、わたしはまったく気にならなかった。

「わたしも! あ、クレープもほしい!」

 わたしの声に友達が続き、友達は露店へと走っていった。
 その背を追いかけるようにわたしも思わず走り出した。
 
   ◆◆◆

 ――タタンタタン、タタンタタン

(ん~、このクレープもおいしい~♪)

 列車のやわらかな座席の上で心地よい振動をお尻に感じながら、露店で買ったクレープをわたしは満喫した。
 フランクフルトは無い。乗る前に食べちゃった。
 すでにわたしは幸せの中にいたが、さらなる幸せの訪れを告げる声が響いた。

「アイちゃん! 見てアレ! スゴイ!」

 窓の外を指差す友達が示す方へ視線を向けると、そこには本当にスゴイものがあった。
 クラゲが空を飛んでいる。
 わたしの家よりも大きい。
 そして全身が七色にキラキラと光っている。キレイすぎる! スゴすぎる!
 だけど、お母さんとお姉ちゃんはもう見慣れているらしく、特に興奮することも無くお母さんが口を開いた。

「宣伝用の大型精霊ね」

 宣伝? 何の宣伝?

「そっかあ、もうすぐだったね」

 続けてお姉ちゃんがそう言ったけど、わたしとお友達の頭の上には「?」が浮かんでる。なにがもうすぐなの?
 その「?」を感じ取ったお母さんが口を開いた。

「あれはキレイなだけじゃなくて、感知能力がある人に向けて宣伝を流してるのよ」

 その言葉に、わたし達の頭の上に浮かんでいる「?」はますます大きくなった。
 そんな宣伝なんてぜんぜん聞こえないからだ。
 だから今度はお姉ちゃんが口を開いた。

「二人はまだ子供だからしょうがないよ。私達の頭の中には特定の波を受信できる器官があるんだけど――ああ、ごめんね。こんな難しい言い方じゃわかんないよね。ええと、つまり……娯楽小説に出てくるエスパーの才能がみんなにあるってこと!」

 この説明に、お友達はちょっとくやしそうに声を響かせた。 

「みんなに才能があるの? んー? でもわたしはあのクラゲさんがなにを言ってるのかぜんぜんわかんないんだけど……」

 その言葉に、お姉ちゃんは、

「体の発育と共に成長する機能だからね。だから二人も大きくなったらきっと聞こえるようになるから! それまではガマン!」

 お姉ちゃんはそう言ったけど、わたしはまだチャレンジを続けていた。
 まだよくわかってないけど、耳をすましても意味は無いってことはわかった。
 だからわたしは頭の中にもう一つの耳を作るような感覚で、意識を集中させてみた。
 すると、言葉が脳裏に浮かんだ。
 わたしは自然と、その言葉を口ずさんでいた。

「んー……夏祭り? 来週?」

 それは正解だったらしく、お姉ちゃんは「ぱあっ」と笑みを浮かべながらわたしを抱き締め、頭をナデナデしながら声を上げた。

「そう! その通りよ! さすが私のアイリス!」 

 ほめてくれるのは嬉しいけど、さすがに友達の前でこれはちょっと。
 だから、

「お姉ちゃん、はずかしいよお……」

 わたしは抵抗しようとしたが、それは弱々しく、はずかしいという気持ちを伝えるだけに終わった。
 そんなむずがゆいはずかしめを受けるわたしを見て友達は、 

「いいなあ……アイちゃんずるい」

 クラゲさんの声が聞こえたことに対してなのか、お姉ちゃんからはずかしめを受けていることに対してなのか、どちらかわからない言葉を漏らした。
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