クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第一話 The Black Ones (1)

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   ◆◆◆

  The Black Ones

   ◆◆◆

 フカフカなベッドの上で、窓から差し込む夏の日差しを感じながら寝返りをうつ。
 わたしの朝の流れはいつも同じ。手順が決まった作業のように、いつも決まった時間に流れ始める。
 そろそろその時間がくる。日差しの暖かさと眩しさからそれがわかる。
 わたしのこの体感の時計はあまり外れたことが無い。
 ……どうやら、わたしの感は今日も正しく機能してるみたいだ。お母さんが階段を上がってくる音が聞こえる。
 間も無くドアが開き、いつもの声が部屋に響いた。

「朝よアイリス、起きて」

 言われたとおりに体を起こし、軽く背伸びをする。
 次のセリフも決まってる。
 お母さんはそのいつものセリフをいつもの笑顔で響かせた。
 
「お湯湧いてるわよ。シャワー浴びてらっしゃい」

 そしてわたしはベッドから降り、部屋から出ていつもの階段をいつもの速度で降りる。
 お風呂場に入ったあとのテンポも同じだ。ポイポイと、投げ捨てるようにパジャマを脱いでカゴに入れる。
 
「~♪」

 好きな曲を鼻歌で響かせながら目覚めのシャワーを満喫する。
 お風呂場から出たあともいつも通りに――……あー……これはいつも通りじゃないほうがいいんだけど、今日もわたしは楽なほうを選んでしまった。だってめんどくさいんだもん。すぐに着替えるし。
 だから今日もいつも通りに、

「こーらアイリス、ちゃんと服を着なさいっていつも言ってるでしょ?」

 お姉ちゃんに怒られた。
 でもそのお叱りの言葉にトゲトゲしさはまったく無い。言っても無駄だと思われてる気がする。 
 だからわたしは「はーい」と、真剣さのかけらも無い返事をしながら、二階の部屋に戻った。
 クローゼットを開け、お気に入りの私服を取り出す。
 ささっと着替えて机に座り、濡れた髪をドライヤーで乾かしながらいつものイベントを待つ。
 次のイベントはわたしのドライヤーの音が条件になっている。だからそれの訪れは間も無く耳に届いた。
 階段がきしむ音が響き、ドアが開く。
 そして部屋に入ってきたのはお姉ちゃん。
 座ってるわたしのうしろに立ち、ヘアブラシでわたしの髪をとかし始める。
 髪がとけたらいつもの髪形に結んでいく。
 髪形はいつもツインテール。正しくはツーサイドアップっていうらしいけど、その辺の細かいところはよく知らない。
 お姉ちゃんの手つきは目の前にある鏡で何度も見た。だからもうひとりでできると思うんだけど、お姉ちゃんはそれを許してくれない。
 しばらくして髪のセットは終わり、お姉ちゃんはわたしの肩に手を置きながらいつものセリフを言った。

「はいできた。今日もカンペキにカワイイ!」

 他人に聞かれたらちょっと恥ずかしくなりそうなセリフだけど、わたしはキライじゃない。自信がついて元気が出る魔法の言葉だから!
 お姉ちゃんから元気をもらったわたしは一階に駆け下り、朝食のテーブルにつく。
 早起きのおばあちゃんはもう座ってる。わたしに続いてお姉ちゃんが、最後にお母さんが座る。
 いつも通りに軽く祈りを捧げ、みんなで食べ始める。
 お父さんは仕事でいない。家にいることのほうが珍しいくらい、お父さんは忙しい毎日を送ってる。
 お父さんもとってもやさしい。だから少しさびしく感じることもある。
 だけどへっちゃら。お母さんもお姉ちゃんもおばあちゃんもとってもやさしいから!
 今日は特にへっちゃら! だって今日の朝食はわたしの大好きなソーセージ!
 はしたないと言われてもおかしくない速度で口に運び、リスのようにほおばる!
 だってしょうがない。好きなんだもん。
 おかわりもする! だって好きなんだもん!
 そうして至福の朝食を終えたら出かける準備を始める。
 今日は友達と遊びに行く約束をしているからだ。
 どこへ? もちろん決まってる! 海! 夏なんだから!
 ただの夏じゃない! 小等部で最後の夏休み!
 宿題はもう終わってる! あとは遊びまくるだけ! 重ねて言うと、わたしはこの小等部最後の夏を後悔しないように全力で遊び倒すつもりである!
 そんな気持ちがわたしの手をはやらせる。だから出発の準備はあっという間に終わった。水着は下に着こんでる。朝食の皿洗いもささっと終わらせた!
 待ち合わせの時間は決まってる。時間には余裕がある。だから急いでも意味は無い。そうわかってるんだけど、わくわくする気持ちがおさえられない。
 お母さんとお姉ちゃんはわたしとは対照的に、待ち合わせの時間に合わせてゆっくりと準備していた。海へには二人が保護者としてついてくることになってる。
 わたしは二人の準備をやきもきしながら待つことになった。
 でもイヤじゃ無かった。その待ち時間すら楽しく、すべてが良い思い出になることが約束されてる感じだった。
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