クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第三話 V・A (9)

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 ヴィーさんはわたしに向かって銃を突き付けたまま言葉を続けた。

「先の場面では木の裏で相手の出方を待つという判断は間違いだ。もっと距離があれば別だが、先ほどのは近すぎる。安全な距離では無かった」

 ヴィーさんはさらに付け加えた。

「そして今回は魔法に頼ったが、木の裏にいるお前を手榴弾で直接攻撃するというやり方もあった。遮蔽物の裏に隠れている相手を攻撃する手段は少なくない。お前は足を止めずに走り続けるべきだった。照準を絞らせないように蛇行でな」

 わたしは動揺で心臓がバクバクだったから、返事をすることすらできなかった。
 そんなわたしに対し、ヴィーさんは表情を変えること無く銃をホルスターに戻し、再び口を開いた。 

「……お前を狙ってるやつはお前を手に入れようとしている。だから殺そうとはしないだろう。だが、銃で足を撃ち抜くくらいのことはやる可能性がある」

 わたしを殺そうとしているのでは無く、手に入れようとしている? どうしてそう思うんですか? そんな疑問が浮かんだが、それを尋ねる余裕はわたしには無かった。
 何も言えないわたしに対し、ヴィーさんはさらに言葉を続けた。

「剣で銃に立ち向かうのは達人で無ければ難しい。遮蔽物が多いなどの剣士にとって都合の良い条件も必要だ。だからよく覚えておけ。襲われたらまず逃げろ。相手が銃を持ってるかどうか確認しようとするな。まず走れ」

 この言葉でようやく、なぜこんな場所に呼び出されたのかをわたしは理解した。
 そしてヴィーさんは表情を変えた。それが感知できた。
 その表情を見せつけるように、ヴィーさんは深くかぶったカウボーイハットを指で上げた。
 帽子の下から現れたのは、真剣な眼差しだった。
 ヴィーさんはその目でわたしの心と体を釘付けにしながら口を開いた。
 
「この島を出たらお前はルイステクノロジーの保護を受ける。だがそれも完璧では無い。だからお前に一つ言葉を送ろう」

 眼差しが少しやわらかくなり、遠い目になった。そんな気がした。
 その遠い目でヴィーさんは言った。

「『地獄は突然やってくる』、それが俺の心構えであり、現実はいつもそうだった」

 遠い目のまま、ヴィーさんは再び口を開いた。

「だが、どんな心構えで日々を過ごしても、どうしようも無いことが起きる時もある」

 その言葉と共にヴィーさんの目から遠さが消えた。
 そしてヴィーさんはいつもの眼差しで口を開いた。

「そんな時は何も考えずに必死で抵抗しろ。最後まであがいてあがいてあがきぬけ。襲ってきたやつにお前の人間らしさと意地を見せつけてやれ」

 そう言って、ヴィーさんはニヤリと笑った。
 その笑みは、まるでそういう経験があるかのような顔だった。すべての努力を否定するような理不尽がこの世には存在する、しかし努力しなければならない、そんなやるせない気持ちと皮肉を表したかのような笑みだった。

   第四話 地獄は突然やってくる に続く
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