クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第四話 地獄は突然やってくる (1)

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   ◆◆◆

  地獄は突然やってくる

   ◆◆◆

 その夜、わたしは不思議な夢を見た。
 場面はあの船の上だった。
 黒い染みが前方から這ってきているのが見える。
 そしてわたしは甲板に追い詰められた状態。海に飛び込むしか逃げ道は無い。
 しかし不思議と恐怖は無かった。
 間も無く、染みから黒い触手が伸び、わたしの目の前にまで迫る。
 だけどわたしは動こうとしない。回避行動を取らない。
 なぜなら、よける必要が無いことが感じ取れていたから。
 その感覚は次の瞬間に形となって現れた。
 突如出現した光の剣が宙を舞い、迫ってくる触手を切り刻む。
 使い手の姿は見えない。白いもやのようなものが剣を振り回しているようにしか見えない。
 しかしそれも時間の問題だとわかっていた。
 白いもやは凝縮するように形を変え、そして人の形を成した。
 その顔は知っているものだった。あの隊長さんだ。
 霧のような隊長さんは黒い染みの群れに向かって切り込み、なぎ払うような勢いで染みを駆逐していった。
 そして眼前の染みをすべて倒したあと、隊長さんはわたしに向かって言った。

「危なくなったら、いつでも私を呼ぶといい」

 そう言われても、わたしはあなたの名前を知らない。
 それを尋ねようとしても声は出なかった。
 だけど問題無かった。声にせずとも伝わっていた。
 だから隊長さんは答えてくれた。

「私の名前は、ビハ――」

 え? ビハ、なに?
 途中で急に音量が小さくなり、ちゃんと聞こえなかった。
 そしてまぶしい。いつの間にか太陽が昇っている。日の光を隊長さんは後光のように背負っている。
 光の中で隊長さんがもう一度口を開く。
 しかし今度は何も聞こえなかった。
 まるで光に声が吸い取られたかのように。
 気付けば、場のすべてが白く塗りつぶされていた。
 隊長さんの姿も光に包まれて見えなくなっていく。
 そうして、この夢は終わった。
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