クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第五話 わたし、島を出ます! (3)

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   ◆◆◆

 目覚めたわたしは勢い良くがばっと飛び起きた。
 だけど、まだ夢の中にいるような感じがした。
 原因はすぐにわかった。
 お姉ちゃんの気配を感じるからだ。夢の中で聞いた、あの遠くからの叫び声を感じるからだ。
 だからわたしは窓から外を見た。
 やっぱりそうだ。声が遠い海の中から聞こえる。
 そしてわたしがその声に耳を感知をとぎすましていると、後ろからブルーンヒルデさんの声が響いた。

「か細いけど、あなたを呼んでいるわね」

 振り返ると、ブルーンヒルデさんは既に起きていて着替えまで終わっていた。
 直後、ノックの音が響き、ブルーンヒルデさんが返事をする前にドアが開いた。
 女性の部屋に対してそんな失礼な行為ができるのはやっぱりヴィーさんだった。
 ヴィーさんはドアを開けたのとほぼ同時にブルーンヒルデさんに向かって口を開いた。

「予想通り来たぞ。準備はできているな?」

 ブルーンヒルデさんは頷きながら答えた。

「もちろん。今から精霊を展開するわ」

 言うと同時にそれは始まった。

「!?」

 その感覚にわたしは思わず下を向いた。
 何か大きなものが海の底から上がってくる感覚。
 夢のせいで海に対して警戒心を抱いていたわたしは驚いたけど、その気配が知っているものだとすぐに気付いた。
 そして海中から現れたのは、大量の光る花びらだった。
 花びらは船を包み込み、そして形を変えていった。
 バラやユリなど、様々な花が船体を覆いつくすように咲き広がる。
 花は虹色に輝いており、まるで宝石のようだった。
 その美しさは力強く、頼もしかったのだけど、

「……!!」

 直後に感じた気配はその頼もしさがかすむほどの規模だった。
 海の向こう。声がする方向からそれは近づいてきていた。
 とんでもなく大きい。クジラですら小さく見えるほどに。
 まるで津波のような気配。
 その巨大な気配の出現から間も無く、艦内に声が響いた。

「総員、第一種戦闘配置!」

 伝声管から響いたと思われる少しくぐもった声。
 その声を合図に、艦内は騒がしくなった。
 軍人さん達が走る音がうるさいほどに響き始める。
 その足音に負けぬほどの声量で、ヴィーさんはブルーンヒルデさんに向かって声を上げた。

「ヒルデ、行くぞ!」

 これに、ブルーンヒルデさんは同じくらいの声で応えた。

「ええ! 参りましょう!」

 そしてブルーンヒルデさんは続けてわたしに向かって声を上げた。

「あなたはここにいて! これはテストじゃないわ! だから絶対にこの部屋から出てはダメよ!」

 わたしが頷きを返すと、二人は部屋から走り出ていった。 
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