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第五話 わたし、島を出ます! (5)
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甲板に出たヴィーとブルーンヒルデは立ち並んで敵の到来を待っていた。
でかい大物は小型の精霊を生み出すだけで、近づいてくる気配が無かった。一定の距離を保っているように見えた。
その動きに対し、ヴィーは口を開いた。
「まずはザコの群れで様子見か。しかし相手はなかなかの戦力を投入してきたな。これはもしかしたら危ないかもな」
二人は耳栓をしていた。砲撃の音から耳を守るためだ。だから普通の声では聞こえない。
しかし二人は感知能力を使って心で聞いていた。
ゆえにブルーンヒルデは聞き漏らすことなく言葉を返した。
「そう思うなら、あなたも精霊を出したら?」
ヴィーは首を振った。
「悪いが、ここには情報収集用のやつしか持ってきていない。俺の『本体』は別の仕事で忙しいんだ」
『本体』がいま何をしているのか。ブルーンヒルデはそのことには興味が湧かなかった。
しかしヴィーのこの返事は予想できていたものであり、その理由までブルーンヒルデは声に出した。
「だと思った。アイリスのテストの準備を全部任された時からその答えは予想できてたわ」
じゃあ聞くなよ、とヴィーは思ったが、相手を怒らせることが確定なので声に出すことはしなかった。
そうして敵の到来を待っていると、新たな人影が甲板に姿を現した。
それは異様であった。
鎧を着た五人の兵士達、簡単に言い表せばそうなる。
しかしその鎧があまりに異様であったゆえに、
「なにあれ?」
ブルーンヒルデは思わず声に出した。
鎧であることはわかるが、それはあまりにも重量級すぎた。
その装甲はこれまでに見たどの鎧よりも分厚く、大きい。
そしてところどころ機械的だ。関節の隙間からそういうものがのぞき見える。背中は特に機械的だ。大きな何かを背負っているようにふくらんでおり、そのふくらみには大きな放熱板がついている。
その異様さに珍し気な視線をブルーンヒルデが向けると、ヴィーは口を開いた。
「お前は島暮らしが長いから知らないだろうが、あれはパワーアーマーと言ってな、最近の軍隊ではあれが流行り(はやり)なんだ。戦車では対処しずらい対精霊戦を想定して設計されている」
このヴィーの簡単な説明に対し、ブルーンヒルデは素直な感想と疑問を述べた。
「まるで鉄の塊ね。あれで満足に動けるの?」
雑な感想であったが、ヴィーは丁寧に説明を付け加えた。
「でなければ軍が採用などしない。もとは体が不自由な者のために作られた特殊なギプスだったが、重労働用に改造されたものが評価され、軍用に採用されたのさ。最初は単純に歩兵の重武装化を目的としていたが、それまで生身で戦場に出ていた精霊使いを強化するという目的に変わり、戦車などと並んで連携を取れるように規格化された結果、ああなったのさ」
これにブルーンヒルデは「ふうん」と、あまり興味無さそうな声を返したが、ヴィーの舌は止まらなかった。
「ちあみにあれは油圧式だが、動力源は魔力だ。着用者の魔力を使う以外に、あらかじめ魔導瓶にためておいた魔力でも駆動できる。背中のふくらんでいる部分がそれだ。精霊を蓄える精霊器もそこに入っている」
ブルーンヒルデが再び「ふうん」と返すと、鉄の塊の一つが声を響かせた。
「試作型MPA-043(Magicalic - Power - Armor)の起動に成功。今のところ問題無し。すべての数値が精霊によるシミュレーション通りに稼働しています」
それは内臓されている精霊を使った遠隔通信であった。
そして間も無く、ルイスからの返事が返ってきた。
「わかった。ただし本戦闘は試作機のテストが目的では無い。アイリスの安全を最優先とせよ」
隊長と思われる鉄の塊は即答した。
「了解しました。それでは戦闘モードに移行します」
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