らぶこめ! わたしのツンが消える時

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第二話 夏だから気前よく大胆に(4)

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   ◆◆◆

「ゴメン、待った?」

 言ってからわたしは後悔した。
 恋人同士で使うセリフのように思えたからだ。
 でも実際に家の前で待たせたのだからしょうがないと、わたしは自分をなぐさめようとしたが、

「よく似合ってるよ」

 彼は直後に恥ずかしいセリフで追い討ちをかけてきた。
 そうだ。わたしはいま浴衣を着ている。これから二人で夏祭りに行くからだ。
 そして彼の言葉は本心からのものだったのかもしれないが、やっぱり恥ずかしかった。実際うれしいけども!
 だからわたしは、

「……」

 失礼なことに、お礼の言葉も返せなかった。
 しかし彼は、

「じゃあ行こうか」

 そんなこと気にする様子も無く、楽しそうにそう言った。
 そんなにわたしとお祭りに行くことが嬉しいのか、恥ずかしく無いのか、それを聞く勇気はわたしには無かった。

   ◆◆◆

 お祭りといえば金魚すくいなどの娯楽屋台と食い歩き、俺は勝手にそう思っていた。
 だから俺はこの祭りでもそうした。
 祭りでしか楽しめない娯楽や食べ物に片っ端から手を出した。
 代金は全部俺が払った。今回は親から小遣いをもらっているからと最初は断られたが、俺はそれを無視した。
 なぜなら、相手のお財布の残高を気にしていては全力で楽しめないからだ。
 それでもやはり彼女は最初は遠慮がちだった。奢られているという引け目があるからだろうと俺は思った。
 だから俺は自分のペースに彼女を乗せることにした。
「あれ食べてみないか?」「あれやってみないか?」などと積極的に提案した。
「なに食べる?」という尋ね方が間違いであることはもう知っていた。具体的に一つを指して聞くのが彼女にはベターであると、この夏の経験から知っていた。
 その経験則は今回も通用した。
 屋台を歩いて回るうちに、彼女から遠慮が消えていった。
 五軒を超えるころには、

「久しぶりにりんごあめ食べてみようかな」

 恥ずかしげであったが、彼女は自発的に欲しいものを声に出すようになっていた。
 彼女が食いしん坊であることも既に知っていた。
 彼女がおいしそうに食べている姿を見るのが好きだった。
 だが、俺はそれ以外の表情も見てみたいと思った。
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