10 / 48
第二話 夏だから気前よく大胆に(4)
しおりを挟む
◆◆◆
「ゴメン、待った?」
言ってからわたしは後悔した。
恋人同士で使うセリフのように思えたからだ。
でも実際に家の前で待たせたのだからしょうがないと、わたしは自分をなぐさめようとしたが、
「よく似合ってるよ」
彼は直後に恥ずかしいセリフで追い討ちをかけてきた。
そうだ。わたしはいま浴衣を着ている。これから二人で夏祭りに行くからだ。
そして彼の言葉は本心からのものだったのかもしれないが、やっぱり恥ずかしかった。実際うれしいけども!
だからわたしは、
「……」
失礼なことに、お礼の言葉も返せなかった。
しかし彼は、
「じゃあ行こうか」
そんなこと気にする様子も無く、楽しそうにそう言った。
そんなにわたしとお祭りに行くことが嬉しいのか、恥ずかしく無いのか、それを聞く勇気はわたしには無かった。
◆◆◆
お祭りといえば金魚すくいなどの娯楽屋台と食い歩き、俺は勝手にそう思っていた。
だから俺はこの祭りでもそうした。
祭りでしか楽しめない娯楽や食べ物に片っ端から手を出した。
代金は全部俺が払った。今回は親から小遣いをもらっているからと最初は断られたが、俺はそれを無視した。
なぜなら、相手のお財布の残高を気にしていては全力で楽しめないからだ。
それでもやはり彼女は最初は遠慮がちだった。奢られているという引け目があるからだろうと俺は思った。
だから俺は自分のペースに彼女を乗せることにした。
「あれ食べてみないか?」「あれやってみないか?」などと積極的に提案した。
「なに食べる?」という尋ね方が間違いであることはもう知っていた。具体的に一つを指して聞くのが彼女にはベターであると、この夏の経験から知っていた。
その経験則は今回も通用した。
屋台を歩いて回るうちに、彼女から遠慮が消えていった。
五軒を超えるころには、
「久しぶりにりんごあめ食べてみようかな」
恥ずかしげであったが、彼女は自発的に欲しいものを声に出すようになっていた。
彼女が食いしん坊であることも既に知っていた。
彼女がおいしそうに食べている姿を見るのが好きだった。
だが、俺はそれ以外の表情も見てみたいと思った。
「ゴメン、待った?」
言ってからわたしは後悔した。
恋人同士で使うセリフのように思えたからだ。
でも実際に家の前で待たせたのだからしょうがないと、わたしは自分をなぐさめようとしたが、
「よく似合ってるよ」
彼は直後に恥ずかしいセリフで追い討ちをかけてきた。
そうだ。わたしはいま浴衣を着ている。これから二人で夏祭りに行くからだ。
そして彼の言葉は本心からのものだったのかもしれないが、やっぱり恥ずかしかった。実際うれしいけども!
だからわたしは、
「……」
失礼なことに、お礼の言葉も返せなかった。
しかし彼は、
「じゃあ行こうか」
そんなこと気にする様子も無く、楽しそうにそう言った。
そんなにわたしとお祭りに行くことが嬉しいのか、恥ずかしく無いのか、それを聞く勇気はわたしには無かった。
◆◆◆
お祭りといえば金魚すくいなどの娯楽屋台と食い歩き、俺は勝手にそう思っていた。
だから俺はこの祭りでもそうした。
祭りでしか楽しめない娯楽や食べ物に片っ端から手を出した。
代金は全部俺が払った。今回は親から小遣いをもらっているからと最初は断られたが、俺はそれを無視した。
なぜなら、相手のお財布の残高を気にしていては全力で楽しめないからだ。
それでもやはり彼女は最初は遠慮がちだった。奢られているという引け目があるからだろうと俺は思った。
だから俺は自分のペースに彼女を乗せることにした。
「あれ食べてみないか?」「あれやってみないか?」などと積極的に提案した。
「なに食べる?」という尋ね方が間違いであることはもう知っていた。具体的に一つを指して聞くのが彼女にはベターであると、この夏の経験から知っていた。
その経験則は今回も通用した。
屋台を歩いて回るうちに、彼女から遠慮が消えていった。
五軒を超えるころには、
「久しぶりにりんごあめ食べてみようかな」
恥ずかしげであったが、彼女は自発的に欲しいものを声に出すようになっていた。
彼女が食いしん坊であることも既に知っていた。
彼女がおいしそうに食べている姿を見るのが好きだった。
だが、俺はそれ以外の表情も見てみたいと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる