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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十七話 地獄の最後尾(6)
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◆◆◆
一方、ルイス率いる本隊はフレディの予想通りに南へと進軍していた。
「……」
アルフレッドはできるだけ平静を装って行軍していた。
キーラに細工をしたことはいつかは確実にバレてしまう。時間の問題だ。
その時にルイスがどんな反応を示すか、アルフレッドは思いつく限りのパターンを予想しながら対処法を練っていた。
対し、アリスは「心配しすぎよ」と楽観的であった。
どうしてそう思うのかとアルフレッドが聞き返すと、アリスはこう答えた。
「ルイスはかつての神の復活なんて絶対に許さない。それは魔王の存在うんぬんよりもはるかに重大な問題だから」と。
その点についてアリスはルイスを信頼しているようであった。
しかしアルフレッドにはルイスを信じるための根拠が無い。思い出を共有していない。
そしてルイスが自分を親衛隊の一人として指名したことも少し不気味であった。
ゆえに今もルイスの隣を歩かされている。
だからアルフレッドは一匹の虫を使ってルイスの心を探ろうとした。
が、直後、
「心配しすぎだぞ、アルフレッド」
ルイスはそう言いながらアルフレッドのほうに顔を向けた。
その手には放った虫が捕らえられていた。
ルイスは薄い笑みを浮かべながらその虫をアルフレッドのほうに投げ返した。
すると、
「お前がキーラに細工をしたことは最初から気付いている。だから心配するな」
その虫から衝撃的な内容のメッセージが伝わってきた。
伝言は続いた。
「むしろ感心したぞ。私はキーラを南への誘導だけで使い捨てるつもりでいたが、お前は戦力になるように仕向けた。敵の戦力がはっきりしていない以上、お前のやり方は間違ってはいない。むしろ私が間違っていたかもしれない」
最初から見透かされていた、その事実にアルフレッドは背筋が寒くなったが、直後にアリスがいつもの調子で声を上げた。
「なあんだ。最初からバレてたのね。頑張って細工して損したわ」
これにもルイスは笑みを浮かべ、心の声を響かせた。
「いや、君の細工はよく出来ていたよ。最初から疑ってなければ気付かなかったかもしれない」
「褒めてくれてるんだろうけど、わたしはあなたを完璧にだますつもりだった。だからちょっと悔しいわ」
そのやり取りに、アルフレッドは焦っている自分がバカバカしく思えてきた。
この二人にとっては遊びのようなものだったのだ。
そして直後、ルイスはアルフレッドにとどめの言葉を浴びせた。
「しかしアルフレッドよ、我らの宿敵であったキーラに対して優しすぎるというのは、あまり感心できないな。だが問題は無い。私が細工し直しておいたからな」
これにアリスが声を上げた。
「それは聞き捨てならないわね。わたしの仕事ぶりはそんなにお気に召さなかったかしら?」
ルイスは首を振るイメージと共に心の声を返した。
「いや、そうじゃない。君の仕事ぶりは素晴らしかったよ。これは何を完璧とするか、その考え方や方向性が違うというだけだ。私は自分の理想に沿うように念を押した、私がやったことはそれだけさ」
アリスはその内容についても聞こうとしたが、ルイスはそこで話を打ち切るために別の人間に違う話題を振ることにした。
「ところでベアトリス、ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいかな?」
アルフレッドの隣にいるベアトリスが「なんでしょう?」と心で応えると、ルイスは尋ねた。
「大神官のことを知りたい。どんな人間だ?」
一方、ルイス率いる本隊はフレディの予想通りに南へと進軍していた。
「……」
アルフレッドはできるだけ平静を装って行軍していた。
キーラに細工をしたことはいつかは確実にバレてしまう。時間の問題だ。
その時にルイスがどんな反応を示すか、アルフレッドは思いつく限りのパターンを予想しながら対処法を練っていた。
対し、アリスは「心配しすぎよ」と楽観的であった。
どうしてそう思うのかとアルフレッドが聞き返すと、アリスはこう答えた。
「ルイスはかつての神の復活なんて絶対に許さない。それは魔王の存在うんぬんよりもはるかに重大な問題だから」と。
その点についてアリスはルイスを信頼しているようであった。
しかしアルフレッドにはルイスを信じるための根拠が無い。思い出を共有していない。
そしてルイスが自分を親衛隊の一人として指名したことも少し不気味であった。
ゆえに今もルイスの隣を歩かされている。
だからアルフレッドは一匹の虫を使ってルイスの心を探ろうとした。
が、直後、
「心配しすぎだぞ、アルフレッド」
ルイスはそう言いながらアルフレッドのほうに顔を向けた。
その手には放った虫が捕らえられていた。
ルイスは薄い笑みを浮かべながらその虫をアルフレッドのほうに投げ返した。
すると、
「お前がキーラに細工をしたことは最初から気付いている。だから心配するな」
その虫から衝撃的な内容のメッセージが伝わってきた。
伝言は続いた。
「むしろ感心したぞ。私はキーラを南への誘導だけで使い捨てるつもりでいたが、お前は戦力になるように仕向けた。敵の戦力がはっきりしていない以上、お前のやり方は間違ってはいない。むしろ私が間違っていたかもしれない」
最初から見透かされていた、その事実にアルフレッドは背筋が寒くなったが、直後にアリスがいつもの調子で声を上げた。
「なあんだ。最初からバレてたのね。頑張って細工して損したわ」
これにもルイスは笑みを浮かべ、心の声を響かせた。
「いや、君の細工はよく出来ていたよ。最初から疑ってなければ気付かなかったかもしれない」
「褒めてくれてるんだろうけど、わたしはあなたを完璧にだますつもりだった。だからちょっと悔しいわ」
そのやり取りに、アルフレッドは焦っている自分がバカバカしく思えてきた。
この二人にとっては遊びのようなものだったのだ。
そして直後、ルイスはアルフレッドにとどめの言葉を浴びせた。
「しかしアルフレッドよ、我らの宿敵であったキーラに対して優しすぎるというのは、あまり感心できないな。だが問題は無い。私が細工し直しておいたからな」
これにアリスが声を上げた。
「それは聞き捨てならないわね。わたしの仕事ぶりはそんなにお気に召さなかったかしら?」
ルイスは首を振るイメージと共に心の声を返した。
「いや、そうじゃない。君の仕事ぶりは素晴らしかったよ。これは何を完璧とするか、その考え方や方向性が違うというだけだ。私は自分の理想に沿うように念を押した、私がやったことはそれだけさ」
アリスはその内容についても聞こうとしたが、ルイスはそこで話を打ち切るために別の人間に違う話題を振ることにした。
「ところでベアトリス、ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいかな?」
アルフレッドの隣にいるベアトリスが「なんでしょう?」と心で応えると、ルイスは尋ねた。
「大神官のことを知りたい。どんな人間だ?」
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