Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十一話 そして聖域は地獄に変わる(12)

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 しかし五分では無い。
 鎌を振り上げた隙を突いた形。
 されどその有利はわずか。
 間も無く、クラリスは体内で星を爆発させる準備が整う。
 その星の力によって生じるは、己が体を破壊するほどの人外加速。体を使い捨てにできる操り死人ならではの技。
 バークはそれを感じ取っていた。
 だから思った。
 ならば問題は無いと。
 なぜなら、バークも同じ準備を、体内で星を爆発させる用意をしていたからだ。
 バークは既に完了している。あとは発動するだけ。バークのほうが一手速い。
 既に同じ加速技は見せている。クラリスはそれを感知している。
 しかしこれは、最後の一手の準備は隠されていた。光魔法の波を遮断する膜を使ってだ。
 ここまではわざと感知させていた。クラリスを騙すために。加速の準備ができていないと思わせるために。
 バークはその隠していた一手の加速を、

「雄ォッ!」

 最後の一息の気勢と共に見せた。
 地面を砕くような勢いで地を蹴ってさらに加速。人外の速度の低姿勢突進に。
 されど強引な体当たりでは無い。
 身体制御は完璧。流れるような体重移動による、クラリスの真横をすり抜けるような滑らかな動き。
 その滑らかな低姿勢突進と共に、手刀を一閃。
 地の上を撫で滑る手刀が、クラリスの足首を払う。

「……っ!」

 前のめりに倒れ始めるクラリス。
 直後にクラリスの加速の準備が完了。
 しかしもう遅い。
 クラリスの目にはそれが映っていた。
 それは、通り抜ける時に置いていかれた爆発魔法。
 その青い球は直後に膨らみ、

「っ!」

 炸裂してクラリスの視界を青く染めた。
 倒れ始めたクラリスの真下で発生した衝撃波が、クラリスの体をわずかに浮かせながら後方に押し飛ばす。
 そして直後、後方に流れ始めたクラリスの視界にそれはまたしても映った。 
 まったく同じ爆発魔法。
 それも爆発し、クラリスの体は再び押し飛ばされた。
 直後にまた同じ爆発。
 息をつく間も無くさらに続けて四発目。
 足を地面につけることもできない。爆発の連続でクラリスの体は浮き続け、吹き飛び続ける。
 その連続爆破で飛ばされるクラリスから逃げるようにバークは走り続けている。
 爆発による衝撃波に背中を押されながら、爆発魔法を後方にばらまき続けている。
 そして双方の距離は縮まり始めている。連続爆発によってクラリスは少しずつ加速している。
 だが互いの背中がぶつかることはもはや無い。クラリスは連続で浮かされたことで、高度が上がっている。
 ぎりぎりでバークの真上を通り抜ける高さ。
 その高さになるのをバークは待っていた。計算していた。
 ゆえにバークは直後に減速しながら振り返り、

「破ァッ!」
 
 光る両手を真上に突き出した。
 計算通り、両手は真上を通り抜けるクラリスの背中に直撃。
 直撃の瞬間に防御魔法を展開。クラリスの体を真上に浮かせ直す。
 バークは即座に防御魔法を解除し、クラリスの背を見上げながら両手の輝きを青色に変えた。
 両手の平から同じ色の炎が放たれる。
 まるで火柱のように立ち昇り、クラリスの体を青く包み込む。
 目を凝らすと、その青い奔流の中に同じ色の球が流れているのが見えた。
 これまでのものよりも大きな球。
 その球は炎と共に舞い上がり、クラリスに触れると同時に炸裂した。
 轟音と共に火柱が膨らみ、間も無く弾けて青い花火となる。
 美しい青い火花の華。
 終わった。花火と共にバークはそれを確信していた。
 しばらくして青い炎に包まれたクラリスの体がバークの眼前に落ちる。
 クラリスはぴくりとも動かない。
 なぜなら、心臓と頭部が砕かれているからだ。
 すべての爆発魔法は部位を狙ったものだったのだ。 
 連続爆発によって胸部を壊し、最後の一撃で頭を破壊。
 その有様は無残。ゆえにバークはクラリスを炎で青く包んだのだ。
 そして見回すと、場の戦いは決着しかけていた。
 ナチャはドラゴン三体を相手に圧倒し、既に勝利していた。
 まだ狂人達が残っているが、バークが連れてきた戦士達が善戦している。決着は時間の問題。
 だからバークはベアトリスに向かって叫んだ。

「行け! アルフレッドを追うんだろう?!」

 いつの間に心を読まれていたのか? わからなかったゆえにベアトリスは驚いた。
 その驚きに対し、バークは再び叫んだ。

「急げ! この場の後始末は我々でやっておく!」

 我々の心配なぞ無用、二人を弔う仕事が残っている、そんな二つの思いがその叫びに含まれていた。
 それを感じ取ったベアトリスは、

「……ご助力、感謝します! バークさん!」

 礼と共に背を向け、走り出した。
 その背を見送りながら、バークは一つの心の声を添えた。
 ここが終わったら私もすぐに追いかける、と。
 その言葉を受け取ったベアトリスはナチャに尋ねた。

「ナチャさん! アルフレッドの位置は追えてる?!」

 これに、ナチャは頼もしい言葉を返した。

「余裕だよ。距離は開いたけど、このくらいなら問題無い」

 その理由をナチャは聞かれる前に答えた。
 
「僕らを足止めするためにあいつらをけしかけたみたいだけど、愚策だったね。連中もアルフレッドを追いかけてくれてるから、かなり目立つようになった。見なくてもついていけるくらいだよ」

 ナチャは「それに、」と言葉を繋げた。

「あいつの行き先は察しがついてる。裏切りがバレたやつがどうするかなんて、大体相場が決まってるからね。間違い無く高跳びだろう。あいつは港を目指してるはずだ」

 その頼もしさに、ベアトリスは希望の間隔を抱いた。
 だがこの時、ナチャは心を少し隠していた。
 その港には確実にでかいやつが待ち受けていることだ。
 半分にわかれた今の自分にどうにかできる相手だろうか、その不安をナチャは隠していた。
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