Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(26)

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 そのすべての思いがこもった叫びと共に、アルフレッドの脳内は白く塗りつぶされていった。
 すでに半分が純白。残りの部分も霧がかかったように白けている。
 このまま一気に最後まで! そんな思いをベアトリスが響かせた直後、

「!?」

 突如、アルフレッドの右手が動き、ベアトリスの左腕をつかんだ。
 あいつの気配はもう消えてるのに!? 気配を消して反撃の機をうかがっていた?!
 その恐怖の感覚がベアトリスの背中を昇った瞬間、

「待ってくれ! 全部は消さないでくれ!」

 アルフレッドは『アルフレッドの声で』そう叫んだ。

「アルフレッド?!」

 驚いたベアトリスが思わず声を上げる。
 アルフレッドの人格の再構築はまだ完了していないのだから当然の反応。
 アルフレッドの体は反撃の機をずっとうかがっていたのだ。
 ナイアラの支配は強力であり、アルフレッドの体でも抵抗できないものであった。
 が、アルフレッドの中にいる小さな住人達は屈服したフリをしていただけなのだ。
 ベアトリス達が追いかけてきていることを知った住人達は、いつか訪れる好機に備えて準備をしていたのだ。
 そしてベアトリスがもたらした結果は想像以上のものであった。
 奪い返すだけでは無い、逆に奪えるほどの好機であった。
 だからアルフレッドは消さないでほしい理由を直後に叫んだ。

「やつが持っていた情報や技術は絶対に役立つ! 消さずに奪うべきだ!」

 その声に、ベアトリスは「はっ」となって技を中断した。
 アルフレッドに肩を貸し、立ち上がらせる。
 ベアトリスはまだ少し怖がっていた。
 本当にアルフレッドなのだろうか? と。
 それを感じ取ったアルフレッドは立ち上がると同時に口を開いた。

「ありがとうベアトリス。君が助けてくれなかったら、俺は死ぬまで奴の奴隷にされていた」

 その言葉で、ベアトリスの心が和らいだのをアルフレッドは感じ取った。
 だからアルフレッドは続けてやるべきことを声に出した。

「すぐにバークさんを連れてここから離れよう。敵が近づいてきてる」

 今の状態で銃兵に囲まれたらどうしようもなくなる、そんな心の声をアルフレッドは同時に響かせた。
 その両方の言葉に対してベアトリスは頷きを返した。
 バークのもとに駆け寄り、二人で肩を貸す。
 すると直後、上空から思念が響いた。

“ここは僕が食い止めるから、走って!”

 それはあえて考えないようにしていたことであった。
 誰かがこの場に残ってドラゴンや敵の追撃を食い止めなければならなかった。
 その役目をナチャは自ら引き受けてくれたのだ。
 だからベアトリスは、

「ありがとうナチャさん! でも無茶はしないで!」

 感謝の言葉を返すと同時に、走り出した。
 その言葉にナチャは「僕のことは気にせず行って! あとで合流しよう!」と返した。

 しかしその約束は守られなかった。
 ナチャの分身は最後の最後まで役目を遂行し、その機能を停止した。
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