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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(3)

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   ◆◆◆

 宣言通り、ナイアーラトテップ達はすぐに行動を開始していた。
 だが、その指揮を取るべきである隊長格のナイアラは、まだ本格的に仕事に取り掛かれてはいなかった。
 突然の来客があったからだ。
 ナイアラは森のある場所でその者と会うことになった。
 その者は約束通りの時間に寸分の狂いも無く場に現れた。
 その者の名をナイアラは響かせた。

「はじめまして――と言うべきかな? クトゥグア」

 言いながらナイアラは意外だと感じていた。
 クトゥグアが女性を模した形で登場したからだ。
 肉の器では無い、魂の集合体だが女性を表現していることがわかる。顔までちゃんと綺麗に作られている。髪型も凝っている。
 だから意外だと思った。
 こいつに性別の意識があるとは、そしてまさか女だとは思わなかったからだ。
 熱と炎を愛しているが、その心は真逆なほどに冷たい、ナイアラはそんな印象を持っていた。
 そしてナイアラが言う通り、初めましてというには疑問符がつく関係であった。
 ナイアラはクトゥグアの縄張りの中でコソコソとしていたからだ。
 クトゥグアもそれを知っている。
 だからクトゥグアは薄く笑いながら次のように返した。

「いまさらな感じだが、こうして面と向かって話すのは確かに初めてのことだ。だからその挨拶でいいと思うぞ、ナイアラよ」

 その笑みは美しかった。人間の美的感覚に照らし合わせれば、そうとしか言えない表情であった。
 しかしナイアラはその表情と造形に対して世辞を言うつもりは無かった。
 そんな言葉が通用する相手かどうかわからないからだ。
 だからナイアラはすぐに本題に入った。
 
「それで、本日はどういう用件でここに?」

 クトゥグアは薄い笑みをそのままに答えた。

「知れたこと。手を組みに来たのだ」

 それはナイアラが予想していた通りの答えだった。
 が、ナイアラは「やはりな」などとつまらない言葉を返しはしなかった。
 ナイアラは何も言わず、続けてクトゥグアが語り始めた理由に対して耳を傾けた。

「私は失敗してしまった。ゆえにアザトースに地上の侵攻を成功されては困るのだ。力の差が開きすぎてしまうからな。だから連中の足を引っ張りにきたのだ」

 そう言ったあと、クトゥグアは顔から笑みを消し、再び口を開いた。

「そしてそれはお前も同じだろう? だからお前はこの森に残っている」

 ナイアラは否定しなかった。嘘をついても旨味が無いと思った。

「……」

 しかし言葉も返さなかった。
 ナイアラは肯定の意味として沈黙を返した後、口を開いた。

「手を組むと言っても、具体的にはどうする? 連絡を密にし、敵の情報を共有するとかか?」

 クトゥグアは首を振らずに全く違うことを言った。

「使い捨てにできる強力な炎の使い手の体が欲しい。高い熱量を出せるやつだ。それがあれば火の精霊を存分に使える」
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