Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

文字の大きさ
429 / 545
最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(29)

しおりを挟む
 
   ◆◆◆

 銃兵達の一部が前に進み始めたのをルイスはすぐに感じ取った。
 止めようとは思わなかった。
 ただ迷っていた。
 しかしその迷いの天秤は大きく傾きつつあった。
 だからルイスは間も無く口を開いた。

「ナチャ、我らも前に出るぞ」

 これにナチャは即答できなかった。
 そしてナチャは静かに心中を明かした。

「正直言うと僕は怖いよ、ルイス」

 ナチャが抱いている恐怖の理由をルイスは察することができなかった。
 だからルイスは聞き返した。

「なぜだ? この戦いが始まる前に保険をかけ直しただろう。だから死んでも蘇れるはずだ。あの時のように、俺に再挑戦の機会を与えることも出来るだろう?」

 確かにその通りであったが、ナチャの心には払えぬ霧がかかっていた。
 ナチャはその霧の理由を探しながら思念を響かせた。

「ここで負けたら二度と立ち直れない気がする……いや、そうじゃないな、ええっと……」

 しかし最初に思いついた答えは間違いのような気がした。
 だからナチャは考え直し、言い直した。

「この戦いに負けたら取り返しのつかないことになる、そんな風に考えてしまうんだ」

 これが最も正解に近い、ナチャはそう思った。
 そしてルイスはその言葉に共感した。
 ナチャも同じ迷いを抱いているのだと気づいた。
 この軍は世界一の戦力を有していると言っても過言では無いはず。
 にもかかわらず負ければ――それは最悪な想像力をかきたてる。
 この戦いにおける敗北という結果は、人類の暗黒時代の引き金になりかねない。
 だから慎重になるのも無理は無い。
 しかし慎重であっても臆病であってはならない。
 そして今は強く反撃に転じるべきだという確信が芽生えている。
 このまま防御重視の後退を続けても少しずつ削られるだけだ。
 だからルイスは口を開いた。

「負けるのが怖いのか? だったら――」

 ルイスは一呼吸分の間を置き、言葉を選んでから口を開き直した。

「だったら、全力で俺を援護すればいい」

 難しいことは考えずに俺に任せてくれればいい、その言葉にはそんな思いが含まれていた。
 そしてルイスは頼れる自分を演じるために、いや、自らそう思い込ませるために強い表情で言った。

「行くぞ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

処理中です...