Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十五話 愛を讃えよ(42)

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 大きく開いた腹の口は、その喉奥は赤く眩く光っていた。
 魔力が収束している。
 大出力の攻撃が来る。
 耐えられるのか? そんな言葉が浮かぶよりも早く、二人は動いた。
 手を添え、協力して巨大な一枚の防御魔法を展開。
 この盾をもってしても受け止められないであろうことはわかっていた。
 ならばなぜ展開したのか。
 それは声が届いたからだ。
 協力してくれ、という声が心に響いたからだ。
 だから二人は防御魔法を手から切り離し、離れて道を開けた。
 そして直後、感じ取った通り、声の主は二人の後ろから現れた。
 大剣を槍のように水平に構えて走る大男。
 二人の間に強引に割り込むように、防御魔法に真っすぐに突っ込んでくる。
 奇妙なことに大剣は二本あった。水平に重なっていた。
 さらに見れば大男は二人だった。背負うように、羽織るように覆いかぶさっていた。
 それは、大男の精霊を肩に背負ったデュランだった。
 そして次の瞬間、重なっている精霊の大剣に変化が起きた。
 液体のように変化し、布のようにデュランの大剣に巻き付いていく。
 その変化は一秒もかからず完了し、デュランは叫びながら大剣を防御魔法に突き刺した。

“「シャイニングシュラウド・スピアッ!」”

 叫び声も二人分だった。
 知らない男の声が、シャロンとキーラの心にはっきりと響いていた。
 太い刃をねじ込まれた防御魔法が歪み、回転して巨大な光の渦となる。
 その渦の動きに合わせるかのように、引っ張られて巻き込まれたかのように、巻き付いていた布も回転を開始。
 渦に守られるように、デュランの体が包まれる。
 しかしデュランの体に傷はつかない。布が守っている。魔力を吸ってデュランのほうに流れないようにしている。
 渦と共に一つの槍となり、突進する。
 そして次の瞬間、渦巻く槍の先端が赤色の波とぶつかり合った。
 ヘルハルトの腹の口から放たれた火炎放射。
 その赤色とぶつかり合った瞬間、渦は輝きを強く増した。
 シャロンとキーラが展開した防御魔法には多量の冷却魔法が含まれていたからだ。
 熱を奪い、代わりに光を放つ。
 周囲の全てを白く染め上げようとするかのように、激しくぶつかり合う。
 そのぶつかり合いは互角で終わった。
 炎の噴射と渦の回転が同時に止まる。
 そして二人は、デュランとヘルハルトは視線を交わらせた。
 最初に思考を走らせたのはヘルハルトだった。
 仲間だった戦士長が裏切り、デュランのほうについていることに対してだった。
 だが、ヘルハルトの心から怒りの念は響かなかった。
 むしろ逆であった。
(ああ、そうだろうな)と、納得していた。
 記憶を取り戻したのであれば戦士長はお前の方につくだろうな、と、理解していた。
 それが正しい。俺の下についていたことがおかしいことだったのだから。
 ヘルハルトもすべてを思い出していた。
 自分の中にまったく違う人生を歩んだもう一人の自分がいる。
 そのもう一人の自分が、大きく波打つ感情と共にデュランを見つめている。
 俺が持っていなかったものを全部持っていた男。
 俺が欲しくて欲しくて渇望していたものを最初から持っていた男。
 そのような、いつ激情に変化するかわからない感情を抑え込みながら見つめている。
 いまの自分がいるから抑え込めている。望むもの全てを手に入れたいまの自分だから抑え込めている。
 だから奇妙な感覚だった。
 目は一つなのに、二人で見ているような感覚。 
 その奇妙な感覚の答えを求めるかのように、二人のヘルハルトは同時に思いを響かせた。
 お前は今の俺を見てどう思う? と。
 しかし返ってきた言葉は、

「ヘルハルトぉッ!! お前の相手はこの俺だッ!!」

 死闘の申し込みであった。
 だが不思議なことに、それを受け入れることが奇妙な感覚を消すことに繋がるような気がした。
 ヘルハルトはその思いを響かせた。

“……そうだな。きっとそれが正しい。俺とお前は戦うべきなのだろう。俺の中にいるもう一人の俺はそれを強く望んでいる”

 だからヘルハルトもまたデュランと同じように叫んだ。

“ゆくぞ、デュラン! お前を倒して、もう一人の自分の心に決着をつけさせてもらう!”

   最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを に続く
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