Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(28)

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 殺意の正体は大量の小型精霊であった。
 魚群のようであったが違った。よく見れば一つ一つの形はバラバラであった。
 小鳥や虫、そしてよくわからない何かが群れを成してぶつかってきていた。
 すべてが光っている。体内の魔力を体ごとぶつけてきている。
 五芒星の盾の魔力とぶつかり合い、白く細い雷と銀色の火花を散らす。
 群れは長く、五芒星の盾が軋みを上げ始める。
 しかしデュランの足が向きを変えることも、その走りが緩むことも無かった。
 大丈夫だ、走り続けろ、という戦士達の声が響いたからだ。
 その声の直後に天使達がデュランの真横から襲い掛かる。
 だが、これにもデュランは反応を示さなかった。
 これを含めての大丈夫、ということが心に響いていたからだ。
 戦士達が壁を作り、天使達から五芒星とデュランを守る。
 その攻防の音を置き去りにするように走る。
 間も無く群れの衝突も終わり、そしてデュランは感じ取った。
 銀色の視界の中に大きな目が浮かび上がっているのを。
 見上げるように高い位置にあるその目と、デュランは視線を交錯させた。
 駆け抜け、切り抜け、ついにたどり着いたのだ。ヘルハルトの目の前に。
 この技を繰り出すために体を大量に削ったのか、ヘルハルトの巨体は明らかに小さくなっている。
 だがそれでもその目はまだ見上げなければならないほどに高い。
 そして次の瞬間、デュランはさらに感じ取った。
 その目から殺気が放たれたのを。
 直後、デュランは真横に跳び、五芒星の盾の守りを捨てた。
 次の瞬間には盾は無くなっていた。ヘルハルトが伸ばした触腕によって叩き潰されていた。
 太い。しかし炸裂の瞬間まで軌道がほとんど見えなかった。太いのに恐ろしく速い。
 が、それでもデュランの感知能力はその一撃の詳細をとらえていた。
 太いヒモの先端に巨大な刃をつけたものをムチの要領で振るって叩きつけたのだ。
 並の防御で受ければ即死。
 これからはこの規模の攻撃が数えきれないほどに襲い掛かってくるはず。
 だからデュランは、 

(本当のぶつかり合いはここから!)

 と、己に活を入れ直し、

「いくぞみんな!」

 みなの力を貸してくれと叫んだ。
 その声が気にいらなかったのか、次の殺気は直後に放たれた。
 丸太よりも二回りは太い触腕が、刃を持って振り下ろされる。
 大の人間を打ち潰せる威力。それが目にもとまらぬ速度で。
 しかも一本では無い。何本も同時に。
 だが、デュランはそれでも大きく避けない。
 すべて紙一重。
 小さな傷が増えるのは無視し、最小の動きで避けつつただ前へ。
 時に盾で受け流し、時に前へ転がってくぐり抜ける。
 だが、地面を削りながら来るなぎ払いは高く飛ばざるを得ない。
 空中では大きな動きはできない。
 当然のように触腕と天使達が襲い掛かってくる。まさに跳ばせて落とす形。
 だがデュランには通じない。
 この攻撃はすでに経験済み。
 盾と剣で受け流し、時に足場にする。
 そしてある触腕を足場にして跳び直した直後、真後ろで炸裂音が響いた。
 跳び直さなければ着地点であったであろう場所に、触腕が叩きつけられていた。
 デュランはその着地狩りも読んでいた。だから跳び直したのだ。
 天使達の突撃は戦士達が食い止める。
 この死地にあって盤石、デュラン達の動きはそう見えた。
 が、次の瞬間、デュランに死が迫った。そう見えた。
 後頭部を狙うような回り込んだ触腕の一撃、それに対してデュランは防御する素振りを見せなかった。反応できていないように見えた。
 否。デュランは反応していた。
 にもかかわらず動かないのは、自身で対処する必要が無いからであった。後方から十人の戦士達が寄り添ってきていた。
 その十人はデュランの真後ろで溶け合うように合体し、大剣を持つ一人の大男になった。
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