Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第五章 アランの力は留まる事を知らず、全てを巻き込み、魅了していく

第三十七話 炎の槍(13)

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「!」

 痛みに悶絶するリーザの目に次の光弾が映りこむ。
 進行方向から迫る光弾。
 左手の防御魔法でこれを受け止める。

「っぅあ!?」

 が、次の瞬間、今度は左肩に激痛が走った。
 真左からも同時に攻撃されている。
 しかしいま左方に防御魔法を向けることは出来ない。既に次の跳弾が目の前に迫っている。
 次弾がリーザの防御魔法に炸裂。場に再び閃光と衝撃音が広がる。
 それは一度では終わらなかった。
 間断無く、立て続けに何度も着弾。
 凄まじい跳弾の連打だ。
 止まっていたリーザの足が後ろに押し戻される。
 踏ん張らないと、と思った直後に再び左方から被弾。

「……っっ!」

 連続する激痛にもう声も出ない。
 視界が激しく揺れ、足元がふらつく。
 踏ん張らないと――というリーザの思いに反し、足が地の上を滑る。
 リーザの体勢が大きく傾く。それを見たカイルは、

(倒れるな)

 と考え、光弾の照準を下方に修正。
 地に伏せたところへの追撃を狙う。上手くいけば再び立ち上がらせることなく終わるだろう。
 カイルはそう思った。
 が、その直後、

「!」

 カイルの顔に驚きの色がにじんだ。
 リーザが左手を、展開している防御魔法を地面に叩きつけたからだ。
 その反動で倒れかけていた姿勢が元に戻り、足が再び走り始める。
 まずい、逃げられる。その言葉がカイルの脳裏に浮かび上がりかけた瞬間、

「ぁっぐ!」

 リーザが悲鳴を上げながらのけぞった。
 保険として放たれていた最後の跳弾に当たったのだ。
 その様子にカイルは安堵の色をにじませながら、

(……運が悪かったな)

 哀れみとともに光弾を放った。
 真っ直ぐに飛来する単発。これに対し、リーザはただの棒立ち。
 先の直撃のせいで反応出来ていない、そうカイルが思った直後、

(!?)

 カイルの意識は硬直した。
 なぜなら、光弾が外れた上に、一発撃ち返してきたからだ。
 しかしカイルが驚きの色を浮かべることは無かった。意識の硬直も一瞬。
 カイルは冷静に、飛んで来たリーザの「弱弱しい」反撃を、魔力を纏わせた左手で叩き払った。
 拍子抜けするほどに貧弱な反撃。
 そして先の回避行動も避けた、というよりもただ倒れかけただけに思える。
 以上のことからカイルは、

(逃げを諦めたにしては反撃が弱弱しい。……もしや、逃げられないのか?)

 と予想。
 この疑問の答えをリーザは心の中で叫んでいた。

(まずい、まずい、まずい!)

 最悪だ。足が動かない。それに爆発魔法の練成に失敗した。もう一度最初から練り直さなければならない。
 しかし次の爆発魔法を練る魔力が残っているかどうかも怪しい。とりあえず反撃してみたが、あのありさまだ。防御魔法は展開することすら困難だろう。
 絶望的、といっていい状態に追い込まれたリーザ。
 それを察したカイルは詰めに入った。
 両手で光弾を連射開始。
 散弾と単発を織り交ぜた高速弾幕がリーザに襲い掛かる。

「っっっ!」

 防御魔法を展開出来ない今のリーザには成す術が無い。
 回避不能の散弾で姿勢を崩されたところに高威力の単発が次々と襲い掛かる。
 まるで光る暴風雨。
 単発の直撃だけは避けようと光る雨の中を懸命にもがく。
 その動きはまるで糸の切れた人形のよう。避けているというより、弾幕にもてあそばれているように見える。
 それでもリーザはこの戦いの中で最も高い回避率を見せた。
 しかしそれは所詮まぐれに過ぎない。リーザは射線を全て見切っているわけでは無い。
 当たるのは、直撃は時間の問題。
 そしてその時はすぐに訪れた。

「!」

 顔面に来ると気付いたが最後、リーザの視界は白く染まり、そして暗黒に沈んだ。
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