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最終章
第五十四話 魔王上陸(18)
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間違い無く、鎖の扱いどころか光弾の投擲にすら影響を及ぼすであろう痛み。
だからバージルは声を上げた。
「俺から離れるな、カイル!」
これにカイルは頷きを返さず、ただ黙って背中を預けた。
背後を庇い合い、全方位を警戒する二人。
そんな二人をキーラはあざ笑いながら、
「仕掛けよ!」
追い詰めろと、場の仲間に指示を出した。
余裕のある影達が集まり、二人の周りで円を描くように走り始める。
狼牙の陣の構え。
しかし放たれ始めたのは爪では無く光弾。
理由はバージルが持つ巨大な盾と刃を警戒しているだけでは無かった。
影達は待っていた。キーラの炎、または電撃による援護を。
これに対し、キーラは少し悩んでいた。
炎は無難な手だ。ただの電撃の網は三日月によって切り裂かれるか散弾によって止められる可能性が高い。
だからキーラは、「ならばこれはどうだ」と思った。
だからキーラは薄い笑みを浮かべたままそれを手から産み出した。
「「!」」
そしてそれを見た二人は同時に目を見開いた。
糸で編まれた豹、そうとしか見えなかった。
これがキーラが魔王との訓練で得た最大の成果。
魔王が使うそれと同じ、糸と魂で作られた人形。
上からは駄目なのであれば下からはどうだ、そんな思いと共にキーラは、
「行け!」
その重さの無い獣を走らせた。
即座にカイルが迎撃の散弾を放つ。
これを獣は器用に真横に跳んで避けて見せた。
魔王の人形のように受けながら前進することは出来ないからだ。この獣は瞬間的な自己修復能力を有していない。
しかしこの人形には魔王のものには無い機能を有していた。
獣は直後に鋭く踏み込み、それを見せた。
「「!」」
膨らんだ、そう見えた次の瞬間、獣は小さな破裂音と共に弾けた。
獣を形作っていた糸が四方に撒き散らされる。
その獣は自走爆弾であった。
そして回避不能と言える範囲と密度で展開された網に対し、バージルは両手を使った球状の全方位防御を展開。
カイルごと包んだ光の膜が網をやり過ごし、直後に襲い掛かってきた影達の光弾を弾く。
その隙の無い鉄壁の防御を見たキーラは、
「その防御はやはり厄介ねぇ……」
と呟いた後、「じゃあ、これならどう?」という言葉と共に輝く両手の平を前へ突き出した。
「「!?」」
そして現れたのは二匹の獣。
しかしカイルとバージルが驚いたのはその数に対してでは無かった。
右手と繋がっている獣は先と同じに見える。
しかし左のほうは違う。明らかに「赤みがかって」いる。
その色が示す意味を感知に頼るまでも無く察したバージルは叫んだ。
「爆発するぞ!」
だから止めてくれ、という願いを込めて。
その叫びが合図となったかのように二匹の獣が走り出す。
同時にカイルが迎撃の鎖と散弾を発射。
乱反射して壁のようになった鎖が赤い獣の体に食い込み、糸を引き裂く。
直後、
「「っ!」」
その赤い獣は二人が予想した通りの爆発を起こした。
耳に痛い轟音と共に火の粉が散る。
その衝撃にバージルの全方位防御が軋む。
そこへ網が覆いかぶさり、大量の光弾が着弾。
そして軋みは悲鳴に変わったが、それでもバージルの壁は破れなかった。
だが、バージルはその軋みがまだ耳に残る中で叫んだ。
「次が来るぞ!」
答えるまでも無く、感知していたカイルは既に構えていた。
次は赤が二体。既に走り出している。
迎え撃たせるは同じく乱反射。
左右に広がるように弧を描きながら走り迫るそれらに対し、鎖を持つ両手を突き出そうとする。
が、
「っ!」
カイルの右肩は痛みと共にその動きを否定した。
右腕が上がらない。
砕けた骨が間接の動きを妨げている。
しかしそれでもカイルは熟練の技で目標を狙って魅せた。
地面に向かってしか投げれないのであれば逆に利用すればいいと。地面の上を跳ねさせればいいと。
しかしその思考を読んだキーラは、カイルが鎖を投げると同時に自走爆弾を高く跳躍させた。
地面の上を跳ねるのであれば中空はがら空きになるからだ。
だが、今度はそれを読んだバージルが動いた。
放たれた三日月が飛び上がった豹を切り裂き、弾ける。
刹那遅れて鎖に絡め取られたもう一匹の豹が爆散する。
「「……!」」
上手く凌いだ、そんな言葉が一瞬浮かび上がったが、二人の心は晴れなかった。
状況はまったく変わっていない。防戦しているだけではいつかは追い詰められるからだ。
だが、二人は何の当てもなく凌いでいるわけでは無かった。
二人はある変化を待っていた。
それはもうすぐそこに迫っていた。
海岸線を守っていたしんがり部隊の到着だ。
彼らと合流すれば数でこの状況を変えられる。
だが、彼らのすぐ後ろには上陸した魔王軍の部隊が迫っていた。
だからバージルは声を上げた。
「俺から離れるな、カイル!」
これにカイルは頷きを返さず、ただ黙って背中を預けた。
背後を庇い合い、全方位を警戒する二人。
そんな二人をキーラはあざ笑いながら、
「仕掛けよ!」
追い詰めろと、場の仲間に指示を出した。
余裕のある影達が集まり、二人の周りで円を描くように走り始める。
狼牙の陣の構え。
しかし放たれ始めたのは爪では無く光弾。
理由はバージルが持つ巨大な盾と刃を警戒しているだけでは無かった。
影達は待っていた。キーラの炎、または電撃による援護を。
これに対し、キーラは少し悩んでいた。
炎は無難な手だ。ただの電撃の網は三日月によって切り裂かれるか散弾によって止められる可能性が高い。
だからキーラは、「ならばこれはどうだ」と思った。
だからキーラは薄い笑みを浮かべたままそれを手から産み出した。
「「!」」
そしてそれを見た二人は同時に目を見開いた。
糸で編まれた豹、そうとしか見えなかった。
これがキーラが魔王との訓練で得た最大の成果。
魔王が使うそれと同じ、糸と魂で作られた人形。
上からは駄目なのであれば下からはどうだ、そんな思いと共にキーラは、
「行け!」
その重さの無い獣を走らせた。
即座にカイルが迎撃の散弾を放つ。
これを獣は器用に真横に跳んで避けて見せた。
魔王の人形のように受けながら前進することは出来ないからだ。この獣は瞬間的な自己修復能力を有していない。
しかしこの人形には魔王のものには無い機能を有していた。
獣は直後に鋭く踏み込み、それを見せた。
「「!」」
膨らんだ、そう見えた次の瞬間、獣は小さな破裂音と共に弾けた。
獣を形作っていた糸が四方に撒き散らされる。
その獣は自走爆弾であった。
そして回避不能と言える範囲と密度で展開された網に対し、バージルは両手を使った球状の全方位防御を展開。
カイルごと包んだ光の膜が網をやり過ごし、直後に襲い掛かってきた影達の光弾を弾く。
その隙の無い鉄壁の防御を見たキーラは、
「その防御はやはり厄介ねぇ……」
と呟いた後、「じゃあ、これならどう?」という言葉と共に輝く両手の平を前へ突き出した。
「「!?」」
そして現れたのは二匹の獣。
しかしカイルとバージルが驚いたのはその数に対してでは無かった。
右手と繋がっている獣は先と同じに見える。
しかし左のほうは違う。明らかに「赤みがかって」いる。
その色が示す意味を感知に頼るまでも無く察したバージルは叫んだ。
「爆発するぞ!」
だから止めてくれ、という願いを込めて。
その叫びが合図となったかのように二匹の獣が走り出す。
同時にカイルが迎撃の鎖と散弾を発射。
乱反射して壁のようになった鎖が赤い獣の体に食い込み、糸を引き裂く。
直後、
「「っ!」」
その赤い獣は二人が予想した通りの爆発を起こした。
耳に痛い轟音と共に火の粉が散る。
その衝撃にバージルの全方位防御が軋む。
そこへ網が覆いかぶさり、大量の光弾が着弾。
そして軋みは悲鳴に変わったが、それでもバージルの壁は破れなかった。
だが、バージルはその軋みがまだ耳に残る中で叫んだ。
「次が来るぞ!」
答えるまでも無く、感知していたカイルは既に構えていた。
次は赤が二体。既に走り出している。
迎え撃たせるは同じく乱反射。
左右に広がるように弧を描きながら走り迫るそれらに対し、鎖を持つ両手を突き出そうとする。
が、
「っ!」
カイルの右肩は痛みと共にその動きを否定した。
右腕が上がらない。
砕けた骨が間接の動きを妨げている。
しかしそれでもカイルは熟練の技で目標を狙って魅せた。
地面に向かってしか投げれないのであれば逆に利用すればいいと。地面の上を跳ねさせればいいと。
しかしその思考を読んだキーラは、カイルが鎖を投げると同時に自走爆弾を高く跳躍させた。
地面の上を跳ねるのであれば中空はがら空きになるからだ。
だが、今度はそれを読んだバージルが動いた。
放たれた三日月が飛び上がった豹を切り裂き、弾ける。
刹那遅れて鎖に絡め取られたもう一匹の豹が爆散する。
「「……!」」
上手く凌いだ、そんな言葉が一瞬浮かび上がったが、二人の心は晴れなかった。
状況はまったく変わっていない。防戦しているだけではいつかは追い詰められるからだ。
だが、二人は何の当てもなく凌いでいるわけでは無かった。
二人はある変化を待っていた。
それはもうすぐそこに迫っていた。
海岸線を守っていたしんがり部隊の到着だ。
彼らと合流すれば数でこの状況を変えられる。
だが、彼らのすぐ後ろには上陸した魔王軍の部隊が迫っていた。
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*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
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*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
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