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最終章
第五十五話 逢魔の調べ(8)
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入り乱れる場の中に突如生まれたその秩序ある集団に向かってキーラが駆ける。
「はぁっ!」
その足を止めんと、正面から押し迫った騎兵がランスを繰り出す。
これに対しキーラが選んだ道は「下」。
両足を前に出しながら寝そべるように体勢を後ろに倒し、馬体の下を滑り抜ける。
馬の足運びまで計算出来ているキーラにとっては曲芸でも何でも無い。これが一番楽そうだったから、ただそれだけのこと。
すれ違い様の電撃魔法というお返しも当然忘れない。
馬体が倒れる音が背後から響き渡り、キーラの瞳に正面と斜め前の左右から迫る三騎の姿が映る。
キーラはその到達順を即座に計算し、
(まずは右――)
初手の振り上げを横移動で回避し、
(続いて左――)
次手のなぎ払いを屈んでやり過ごし、
(最後に正面)
三手目の突きを輝く手で受け流しながら、横転でその衝撃をいなした。
即座に体勢を立て直して地を蹴り直す。
「せぇいっ!」「雄ォッ!」「でぇやッ!」
休む間も無く騎兵達が濁流のようにキーラに襲い掛かる。
しかし当たらない。
蝶のごとく、ひらりひらりと避けられる。
その掴みどころの無い動きに対し、騎兵の一人が心の声を上げた。
一人ずつでは駄目だ、と。
これに別の誰かが呼応し、声を上げた。
もっと密度のある大きな攻撃で無くてはこいつには通じない、と。
その声に多くの者が頷きを返し、直後に形となった。
まるで磁石が引き合うかの如く、四、五人の集団がキーラの周辺で次々と形成され始める。
そしてその集団群はそれぞれ密着した横一列の形を作り、
「「「ハイラッ!」」」
押しつぶさんと、キーラに迫った。
これに対し、キーラは迂回などの回避行動を取らなかった。
対処法はもう決まっていた。
ゆえに、キーラは進路を塞ぐ集団に向かって自ら突撃し、
「「「!」」」
完成した赤い弾をその集団の足元に向かって投げた。
急停止が間に合わぬゆえに、集団の選択は同時跳躍。
弾けて生じた衝撃波に押し上げられるかのように馬体が浮き上がる。
その下にキーラはするりと潜り込んだ。
爆発の衝撃を出来るだけやりすごすための四つんばいの低姿勢で。
まるで本物の豹のように。
そして電撃の網を馬の足にからませながら通り抜けたキーラは即座に立ち上がった。
集団が転倒する音が耳に入ると同時に、後方に炎を放射しながら走り出す。
キーラの瞳にははっきりと映っていた。
包囲の外周をなぞるように回りながら指示を出しているレオンの姿が。
しかし間に合うか、そんな言葉がキーラの心に浮かんでいた。
ゆえの、時間稼ぎのための炎。
士気の高いこの連中はこの程度では完全には止まらない。火達磨になりながらでも突撃してくるだろう。
だがそれでも数秒稼げればいい、キーラはそう願っていたのだが、
「っ!」
その願いは叶いそうに無かった。
キーラは感じ取った。
同じ攻撃で、いや、より強烈な赤色でこちらの炎を押し返しながら迫ってくる騎兵の存在を。
その者はその身には不釣合いな長剣を同じ色で染めた直後、
「鋭ぃっや!」
カルロの娘の名に恥じぬ赤い大蛇を、キーラの背に向けて放った。
「はぁっ!」
その足を止めんと、正面から押し迫った騎兵がランスを繰り出す。
これに対しキーラが選んだ道は「下」。
両足を前に出しながら寝そべるように体勢を後ろに倒し、馬体の下を滑り抜ける。
馬の足運びまで計算出来ているキーラにとっては曲芸でも何でも無い。これが一番楽そうだったから、ただそれだけのこと。
すれ違い様の電撃魔法というお返しも当然忘れない。
馬体が倒れる音が背後から響き渡り、キーラの瞳に正面と斜め前の左右から迫る三騎の姿が映る。
キーラはその到達順を即座に計算し、
(まずは右――)
初手の振り上げを横移動で回避し、
(続いて左――)
次手のなぎ払いを屈んでやり過ごし、
(最後に正面)
三手目の突きを輝く手で受け流しながら、横転でその衝撃をいなした。
即座に体勢を立て直して地を蹴り直す。
「せぇいっ!」「雄ォッ!」「でぇやッ!」
休む間も無く騎兵達が濁流のようにキーラに襲い掛かる。
しかし当たらない。
蝶のごとく、ひらりひらりと避けられる。
その掴みどころの無い動きに対し、騎兵の一人が心の声を上げた。
一人ずつでは駄目だ、と。
これに別の誰かが呼応し、声を上げた。
もっと密度のある大きな攻撃で無くてはこいつには通じない、と。
その声に多くの者が頷きを返し、直後に形となった。
まるで磁石が引き合うかの如く、四、五人の集団がキーラの周辺で次々と形成され始める。
そしてその集団群はそれぞれ密着した横一列の形を作り、
「「「ハイラッ!」」」
押しつぶさんと、キーラに迫った。
これに対し、キーラは迂回などの回避行動を取らなかった。
対処法はもう決まっていた。
ゆえに、キーラは進路を塞ぐ集団に向かって自ら突撃し、
「「「!」」」
完成した赤い弾をその集団の足元に向かって投げた。
急停止が間に合わぬゆえに、集団の選択は同時跳躍。
弾けて生じた衝撃波に押し上げられるかのように馬体が浮き上がる。
その下にキーラはするりと潜り込んだ。
爆発の衝撃を出来るだけやりすごすための四つんばいの低姿勢で。
まるで本物の豹のように。
そして電撃の網を馬の足にからませながら通り抜けたキーラは即座に立ち上がった。
集団が転倒する音が耳に入ると同時に、後方に炎を放射しながら走り出す。
キーラの瞳にははっきりと映っていた。
包囲の外周をなぞるように回りながら指示を出しているレオンの姿が。
しかし間に合うか、そんな言葉がキーラの心に浮かんでいた。
ゆえの、時間稼ぎのための炎。
士気の高いこの連中はこの程度では完全には止まらない。火達磨になりながらでも突撃してくるだろう。
だがそれでも数秒稼げればいい、キーラはそう願っていたのだが、
「っ!」
その願いは叶いそうに無かった。
キーラは感じ取った。
同じ攻撃で、いや、より強烈な赤色でこちらの炎を押し返しながら迫ってくる騎兵の存在を。
その者はその身には不釣合いな長剣を同じ色で染めた直後、
「鋭ぃっや!」
カルロの娘の名に恥じぬ赤い大蛇を、キーラの背に向けて放った。
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