Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章

第五十八話 おとぎ話の結末(14)

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 迎撃の刃を右手で叩き払い、そのまま心臓に向かって繰り出す。
 しかし届かない。むしろ離れている。
 叩き払われる直前にアランが後方に地を蹴ったからだ。
 地面の上を滑るように後退し始めたその影に向かってオレグも地を蹴る。
 そして刃を切り返される前に左拳を叩き込もうとしたが、

「!」

 瞬間、オレグは奇妙な感覚を覚えた。
 まるで突然相手が増えたような感覚。
 それは直後に音となって響いた。

「「「蛇ッ!」」」

 アランが放ったその気勢はオレグには三人の声に聞こえた。
 それは正解だった。
 アランの中にいるリックと偉大なる大魔道士、二人の思いも重なっていた。
 そして型は言葉通りの口を開いた蛇のような左開手。
 伸ばせば手首を掴まれえぐられる、それを察したオレグが左拳を止めると、同時に蛇も止まった。
 見合う蛇と熊。
 しかしその意識の交錯は一瞬であった。

「疾ッ!」

 気勢と共に返ってきた刃を一歩退いてかわす。
 避けられることを予想していたアランは刃を振り切らず、途中で止めて突進突きに移行。
 だがアランの右腕が伸びきる前に、オレグはその軌道から身をそらした。
 そしてオレグはその前に出た右肘が胸元に戻るよりも速く、アランの右真横を通り抜けるかのように踏み込んだ。
 同時にしゃがむように姿勢を低くする。
 中段が目の高さになり、がら空きのアランの腹が瞳に映り込む。

「破ッ!」

 オレグはその的に向かって右手を繰り出し、

「「「蛇ッ!」」」

 アランは再び三人で迎え撃った。
 されど、今度のぶつかり合いは先と同じでは無かった。
 オレグも同じ形。蛇。
 互いの輝く牙がぶつかり合う。
 が、やはりオレグのほうが力は上。
 アランの蛇が押し返される。
 しかしアランはそれを逆に利用した。
 あえて押されて、相手に道を譲るようにすれ違おうとする。
 だがオレグはそれを、ただすれ違うなどという展開を許さなかった。

「!」

 直後、アランの足首に衝撃が走った。
 足首をひっかけるような足払い。
 だが、オレグのそれは「ひっかける」などという優しいものでは無かった。
 リックの受け技が無ければ骨が砕けていた威力。
 しかしそれをもってしても、膝のバネだけで殺せる衝撃では無かった。
 威力が上半身にまで伝わり、アランの視界が前に傾く。
 突進の勢いがまだ消えていなかったゆえに、そのまま前のめりに。
 即座に足裏を地面に叩きつけて踏ん張る。
 姿勢を崩したアランと、足を払ったオレグがすれ違う。
 直後、

「むんっ!」

 オレグは振り返りながら、その無防備なアランの背中に足裏をねじ込むように右足を繰り出した。
 相手には振り返って受ける暇も、回避する間も無い、これは入る、オレグはそう思ったのだが、

(何?!)

 瞬間、足裏に伝わった予想外の感触に、オレグは目を見開いた。
 耳に響いたのは金属音。散ったのは火花。
 金属の棒に蹴りを止められた、そう見えた。
 そして次の瞬間にその「棒」という情報は正しく改められた。
 それは鞘だった。鞘の底と自分の足裏がぶつかりあっていた。
 アランは腰の左に差していた鞘を真後ろに突き出したのだ。

「!?」

 しかし直後、アランもまたオレグと同じ表情を浮かべた。
 やはり衝撃を殺せなかったからだ。
 踏ん張っていた足が一瞬浮いたほどの一撃。
 足裏を再び叩きつけて踏ん張り直す。
 だが即座に止まれない。地の上を滑る。
 ならばもう一撃、と、背を向けたまま地面の上を滑るアランを追いかけるようにオレグが地を蹴る。
 直後、

「!」

 オレグの目に光が差し込んだ。
 鞘が輝いている。
 そして同時に耳に届いたのは振動音。
 カチカチと、鞘の中で刃が暴れる音。
 アランは鞘の底を蹴られた反動を利用して納刀したのだ。
 そしてオレグは感じ取った。
 相手が突然二人になったような感覚。
 それはつい先ほど倒した男のようであった。
 さらにその構えから何が放たれるのかも予想がついた。
 彼が得意としていた型の一つ、居合い。
 だから思った。
 力勝負? 望むところ! と。
 ゆえに、

「「「でぇやっ!」」」

 直後、『三人』の気勢が重なった。
 振り返りながら放たれたアランとクラウスの刃が水平に奔り、迎え撃つオレグがの突き上げ右掌底打ちが十字を描くようにぶつかり合う。

「「「!」」」

 そして生じた金属音と共に、『三人』は同じ驚きの色を浮かべた。
 これだけの速さと魔力を乗せてようやく五分なのか、と、アランとクラウスの思いが重なって響く。
 それから刹那遅れてオレグの思いが響いた。
 精神汚染のせいで全力を出せないとはいえ、この我の腕を痺れさせた。
 ゆえに、

(見事!)

 オレグの驚きは賞賛に変わった。
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