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第四章 神秘はさらに輝きを増し、呪いとなってアランを戦いの場に連れ戻す
第三十三話 盾(1)
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◆◆◆
盾
◆◆◆
「……」
とどめを刺せという命令を受けたカイルであったが、その身は固まっていた。
左手を前に突き出した攻撃態勢は取っている。いつでも光弾を撃てる姿勢だ。
しかしその左手から光が生まれる気配は無かった。
カイルは迷っていた。
迷う理由は分かっていた。こんな終わり方は最も望んでいなかったからだ。
この決闘は汚された。このまま女を倒したところで、自分が望んでいるものは何も手に入らないだろう。
いっそのこと、命令を無視してこの場から去るというのはどうだろう?
……いや、その行為に大した意味は無さそうだ。自分がこの場で反抗を示したところで、ヨハンは兵士達に代わりの命令を下すだけだろう。
それならば、自分の手で――
(! 動いた?)
その時、カイルの思考は中断された。
地に伏しているクレアの体が「ぴくり」と動いたからだ。
そして、クレアはよろよろと立ち上がった。
「!」
カイルの顔に驚きの色が浮かぶ。
クレアが構えたのだ。
ふらふらしている。しかし、れっきとした戦闘態勢だ。
(なんということだ。この女はまだやる気なのか!)
しかしそれはカイルにとって望むところであった。
せめて武人らしい決着を、と思っていたからだ。
(……いいだろう、来い! あの人外の動きをもう一度見せてみろ!)
あの突進を受ける手段は思いついていない。それはつまり死ぬ可能性が高いということ。
しかし、今のカイルにはどうでもいいことであった。
自棄的になっているわけでは無い。そのようなものとは一線を画した大きな感情がカイルの心を支配していた。
「……」
カイルは待った。
しかし、いつまで待ってもクレアが仕掛けてくる気配は無かった。
カイルの顔に焦りの色が浮かぶ。
(どうした!? 何故仕掛けて来ない?! この何もしない状況はいつまでも維持出来るものでは無いぞ!)
それはクレアの身に起きているある異常が原因であった。
その異常とは、
(……奥義が使えない!)
ことであった。
体を流れている魔力量が激減している。あまりにも少なすぎるせいで逆に制御出来ない。
体は鉛のように重い。魔力を生み出している内臓はほとんど活動していない。
負荷に耐えられず、機能不全に陥ってしまったのか? クレアは一瞬そう思ったが、どうやらそうでは無いようであった。
そう思った根拠は、自分の今の状態があるものと酷似していたからだ。
(これはまるで――眠っているようだ)
体のほとんどの機能が休止状態になる睡眠。人間が最も無防備になるその状態に酷似しているのだ。
睡眠中は体内を流れる魔力量が激減する。他人の魔力を感知出来るゆえに、そのことをよく知っているのだ。魔力を生み出す内臓が休止状態になるからだろう。
自分の今の状態はそれに似ている。意識はあるが体は眠っているという感じだ。
これはきっと最終奥義を使った反動なのだろう。
奥義はしばらく使えない。
(ならば……どうする? 今の私に何が出来る?)
意識を内側に向けたまま、自身の状態を確認する。
すると、すぐにある絶望的事実に気がついてしまった。
(奥義どころか、光弾すら練れない! 魔力を放出することが出来ない!)
それだけでは無かった。
(……体を動かすことすら困難になっている!)
それは夢の中の感覚に似ていた。夢の中で走ろうとしても速く走れない、上手く体を動かせないあの感覚に。
そして肩を貫かれた右腕にいたっては、全く動かない。
盾
◆◆◆
「……」
とどめを刺せという命令を受けたカイルであったが、その身は固まっていた。
左手を前に突き出した攻撃態勢は取っている。いつでも光弾を撃てる姿勢だ。
しかしその左手から光が生まれる気配は無かった。
カイルは迷っていた。
迷う理由は分かっていた。こんな終わり方は最も望んでいなかったからだ。
この決闘は汚された。このまま女を倒したところで、自分が望んでいるものは何も手に入らないだろう。
いっそのこと、命令を無視してこの場から去るというのはどうだろう?
……いや、その行為に大した意味は無さそうだ。自分がこの場で反抗を示したところで、ヨハンは兵士達に代わりの命令を下すだけだろう。
それならば、自分の手で――
(! 動いた?)
その時、カイルの思考は中断された。
地に伏しているクレアの体が「ぴくり」と動いたからだ。
そして、クレアはよろよろと立ち上がった。
「!」
カイルの顔に驚きの色が浮かぶ。
クレアが構えたのだ。
ふらふらしている。しかし、れっきとした戦闘態勢だ。
(なんということだ。この女はまだやる気なのか!)
しかしそれはカイルにとって望むところであった。
せめて武人らしい決着を、と思っていたからだ。
(……いいだろう、来い! あの人外の動きをもう一度見せてみろ!)
あの突進を受ける手段は思いついていない。それはつまり死ぬ可能性が高いということ。
しかし、今のカイルにはどうでもいいことであった。
自棄的になっているわけでは無い。そのようなものとは一線を画した大きな感情がカイルの心を支配していた。
「……」
カイルは待った。
しかし、いつまで待ってもクレアが仕掛けてくる気配は無かった。
カイルの顔に焦りの色が浮かぶ。
(どうした!? 何故仕掛けて来ない?! この何もしない状況はいつまでも維持出来るものでは無いぞ!)
それはクレアの身に起きているある異常が原因であった。
その異常とは、
(……奥義が使えない!)
ことであった。
体を流れている魔力量が激減している。あまりにも少なすぎるせいで逆に制御出来ない。
体は鉛のように重い。魔力を生み出している内臓はほとんど活動していない。
負荷に耐えられず、機能不全に陥ってしまったのか? クレアは一瞬そう思ったが、どうやらそうでは無いようであった。
そう思った根拠は、自分の今の状態があるものと酷似していたからだ。
(これはまるで――眠っているようだ)
体のほとんどの機能が休止状態になる睡眠。人間が最も無防備になるその状態に酷似しているのだ。
睡眠中は体内を流れる魔力量が激減する。他人の魔力を感知出来るゆえに、そのことをよく知っているのだ。魔力を生み出す内臓が休止状態になるからだろう。
自分の今の状態はそれに似ている。意識はあるが体は眠っているという感じだ。
これはきっと最終奥義を使った反動なのだろう。
奥義はしばらく使えない。
(ならば……どうする? 今の私に何が出来る?)
意識を内側に向けたまま、自身の状態を確認する。
すると、すぐにある絶望的事実に気がついてしまった。
(奥義どころか、光弾すら練れない! 魔力を放出することが出来ない!)
それだけでは無かった。
(……体を動かすことすら困難になっている!)
それは夢の中の感覚に似ていた。夢の中で走ろうとしても速く走れない、上手く体を動かせないあの感覚に。
そして肩を貫かれた右腕にいたっては、全く動かない。
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