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46.俺、貪欲さを知る
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「風属性? 不人気なんだねぃ」
俺が賭ける属性と金額を聞いて、シャラウィは首を傾げた。どうしてその不人気属性を選ぶのか理解できない、といったところだろう。
「別に真剣に考えたとかじゃなくて、そうだったらいいな、ぐらいのものだからいいんだよ」
「ふぅん?」
相槌を打ってはいるが、納得できないようで、シャラウィは彼の知る限りで風属性を持つ研究員を指折り数え、何やら考え込んでしまった。こういうところを見ると、やっぱりシャラウィも研究員なんだなと思ってしまう。ついさっきまで、ジンジャーシロップの炭酸水割りを飲んで子供みたいにはしゃいでいたとは思えない。
なお、シロップと炭酸水の配合を変えて試飲したが、シャラウィの舌はまったく参考にならなかった。かろうじて、濃い薄いは判断できていたが、どれが美味しいかと尋ねても、全部美味しいで終わるのだ。料理を作る者としてはありがたいが、同時に張り合いがなくて困る。
「これ、また出してくれるのかねぃ?」
「うーん、どちらかというと女性向けと思って数量を減らそうと思ってたんだが、男性陣にも受けると思うか?」
「もちろんなんだねぃ。すっきりしてピリリと辛くて、食事のお供にしても全然問題ないんだねぃ。むしろ、女性向きなのが不思議なんだねぃ」
あぁ、成程。味だけを考えたらそうなるのか。それはちょっと抜けてたな。俺にこれを教えてくれた人は、全然別の観点で女性陣を惹き付けてたから。
「ジンジャーは冷え性予防なんだとさ。冷え性は女性に多いらしくて、頭痛肩こり肌荒れ便秘足のむくみ……まぁ、症状は様々らしいんだけど、それを緩和させる働きがあるのが、このジンジャーなんだそうだ」
「へぇ。それは確かに女性陣が食いつきそうな話なんだねぃ」
「考えてみれば、人間にとってはそう、ってだけで、魔族にも同じようなことが起きるかわからないんだよな。だとしたら、味だけで考えて――」
突然、バン、と厨房の扉が開け放たれ、俺とシャラウィは同時に首をすくめた。
「話は聞かせてもらったわ!」
勢いよく叫んだのはマルチアだ。その後ろに何故かシンシアもいる。あの二人って、仲良かったのか?
「えーと、マルチア? 何か用か?」
「肌荒れに足のむくみに効くというのはどれなの!?」
「あとー、便秘って言ってたよねー?」
何か緊急事態でも発生したのかと身構えていた俺は、がっくりと脱力した。
一応、あくまで人間向けの話だと前置いて、ジンジャーシロップの炭酸水割りを二人に渡す。すると、飲んだ二人は目をぱちくりさせた。
「何これ!」
「おいしい!」
褒めてくれるのはありがたかったのだが、その先がいけなかった。詳しく語るのも疲れるので省略するが、結局、ジンジャーシロップからもう一度作り直しする羽目になった。
女性陣は甘いものが絡むととんでもなく貪欲になると知ってはいたが、美容関連も同様だと心に深く刻み込む結果となってしまった、まる。
ちなみに、他にも美容関係に効く食材やメニューはないのかと散々詰問され、たじたじになったのは言うまでもない。シンシアに至っては、後日そういう効果のある薬草やハーブについての本を取り寄せ、俺に投げつけるように押しつけてきた。聞いたことのない香辛料やハーブばかりが並ぶその本を、俺は目を滑らせそうになりながら何とか読破し、新メニューの考案に苦しむことになる。
本当に女性陣の貪欲さを甘く見ていたよ……。とほほ。
俺が賭ける属性と金額を聞いて、シャラウィは首を傾げた。どうしてその不人気属性を選ぶのか理解できない、といったところだろう。
「別に真剣に考えたとかじゃなくて、そうだったらいいな、ぐらいのものだからいいんだよ」
「ふぅん?」
相槌を打ってはいるが、納得できないようで、シャラウィは彼の知る限りで風属性を持つ研究員を指折り数え、何やら考え込んでしまった。こういうところを見ると、やっぱりシャラウィも研究員なんだなと思ってしまう。ついさっきまで、ジンジャーシロップの炭酸水割りを飲んで子供みたいにはしゃいでいたとは思えない。
なお、シロップと炭酸水の配合を変えて試飲したが、シャラウィの舌はまったく参考にならなかった。かろうじて、濃い薄いは判断できていたが、どれが美味しいかと尋ねても、全部美味しいで終わるのだ。料理を作る者としてはありがたいが、同時に張り合いがなくて困る。
「これ、また出してくれるのかねぃ?」
「うーん、どちらかというと女性向けと思って数量を減らそうと思ってたんだが、男性陣にも受けると思うか?」
「もちろんなんだねぃ。すっきりしてピリリと辛くて、食事のお供にしても全然問題ないんだねぃ。むしろ、女性向きなのが不思議なんだねぃ」
あぁ、成程。味だけを考えたらそうなるのか。それはちょっと抜けてたな。俺にこれを教えてくれた人は、全然別の観点で女性陣を惹き付けてたから。
「ジンジャーは冷え性予防なんだとさ。冷え性は女性に多いらしくて、頭痛肩こり肌荒れ便秘足のむくみ……まぁ、症状は様々らしいんだけど、それを緩和させる働きがあるのが、このジンジャーなんだそうだ」
「へぇ。それは確かに女性陣が食いつきそうな話なんだねぃ」
「考えてみれば、人間にとってはそう、ってだけで、魔族にも同じようなことが起きるかわからないんだよな。だとしたら、味だけで考えて――」
突然、バン、と厨房の扉が開け放たれ、俺とシャラウィは同時に首をすくめた。
「話は聞かせてもらったわ!」
勢いよく叫んだのはマルチアだ。その後ろに何故かシンシアもいる。あの二人って、仲良かったのか?
「えーと、マルチア? 何か用か?」
「肌荒れに足のむくみに効くというのはどれなの!?」
「あとー、便秘って言ってたよねー?」
何か緊急事態でも発生したのかと身構えていた俺は、がっくりと脱力した。
一応、あくまで人間向けの話だと前置いて、ジンジャーシロップの炭酸水割りを二人に渡す。すると、飲んだ二人は目をぱちくりさせた。
「何これ!」
「おいしい!」
褒めてくれるのはありがたかったのだが、その先がいけなかった。詳しく語るのも疲れるので省略するが、結局、ジンジャーシロップからもう一度作り直しする羽目になった。
女性陣は甘いものが絡むととんでもなく貪欲になると知ってはいたが、美容関連も同様だと心に深く刻み込む結果となってしまった、まる。
ちなみに、他にも美容関係に効く食材やメニューはないのかと散々詰問され、たじたじになったのは言うまでもない。シンシアに至っては、後日そういう効果のある薬草やハーブについての本を取り寄せ、俺に投げつけるように押しつけてきた。聞いたことのない香辛料やハーブばかりが並ぶその本を、俺は目を滑らせそうになりながら何とか読破し、新メニューの考案に苦しむことになる。
本当に女性陣の貪欲さを甘く見ていたよ……。とほほ。
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