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07.男前の想い人
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「そういえば、ユズの好きな人って、大学生とか社会人だったりする?」
「ええ? 突然、なんで?」
「いやぁ、年上だと敵わない部分もあるから、攻め方が変わるなーって」
「……同じ高校生だよ」
攻め方ってなんだ。攻め方って。でも、突っ込んだら、なんか負けな気がするので口にしない。
「そっか、安心した」
同じ高校生どころか同じクラスだとか、丹田くんの友達だとか、死んでも言えないよね、これ。
「ちなみに、……ちなみになんだけどね? もし中学生って言ったら、どうする気だったの? あ、ちょっとした好奇心だから。答えなくてもいいから!」
「んー? そっちは考えてなかったなぁ。まぁ、さすがに小学生相手って言われたら、引いたかもしんないけどさ」
「さすがにそれは私も引くよ」
ドン引きだね。ランドセル背負ってる相手にそんな気持ちにはなれない。いや、年齢で言えば6歳差ぐらいだから許容範囲かもしれないけど、大人の6年と子供の6年は違うよね。
なんとなくこの話題も落ち着いてしまって、気まずい沈黙が来るかと思いきや、さすがクラスのムードメーカーな丹田くん。私と梓ちゃんが見ている同じドラマを見ていたようで、先週の俳優さんの演技の物まねとか披露してくれたりと、笑わせてくれた。
……うん。深刻な雰囲気にならないで助かったんだけど、やっぱりこういう人は、同じムードメーカーな目立つ人同士で付き合うのがいいと思うんだけどさ。
告白があったことなんて忘れてしまったように集積所からの帰り道を辿っていたけれど、視聴覚室へと戻る丹田くんは、別れるときにきっちりと念を押して行ってくれた。ありがたくない。
「それじゃ、一週間後に答え聞かせてね」
はっきり言おう。私は免疫がない。
恋なんて、七ツ役くんに対するものが初めてだし、今までだってバレンタインデーに友チョコしかあげたことはなかった。
それがだよ?
告白されて、高揚しないわけがない! いや、七ツ役くんがいるし、断るつもりではあるけれども!
「あ、おかえりー。待ってたよ。一緒に部活行こう?」
「うん」
「……ユズ、なんかほっぺ赤くみえるけど、大丈夫? 風邪?」
「嘘!」
慌てて両手で頬を押さえる。熱い。いや、理由は分かってる。風邪じゃない! むしろ風邪の方が良かった!
「ちょ、ちょっと後で! 早く部室に行こう?」
心配してくれてる梓ちゃんには悪いけど、ここでもたもたしてると、視聴覚室掃除の班の人も戻って来ちゃう! さっきの今で丹田くんと顔を合わせたくない!
「うん? 本当にどうしたの?」
「だから後でってば!」
首を傾げる梓ちゃんの手をぐいぐい引っ張って、私は美術室へと急いだ。
・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・
美術室は、ありがたいことに無人だった。
そういえば、今日は三年生は午前中で授業も終わりだとか言ってたっけ。だから先輩方は来ないんだ。ありがたい。
梓ちゃんと二人で机を寄せてこぢんまりとしたスペースを作ると、そこにアグリッパの胸像を配置する。うん、今日も彫りの深いイケメンだ。
「えーと、梓ちゃんを見込んで、相談したいことがあるんだけど」
「うん? いいけど、どんな? アグリッパ描きながらでも大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫! あ、でも、口外無用でお願いしますです」
「オーケーオーケー。じゃ、どうぞ」
梓ちゃんはいつも通り、いや、いつも以上のクールさで受け答えしているけれど、これが私の口を動かしやすくする気遣いなのだと知っている。だから、私も安心して相談を持ち掛けられるんだ。持つべきものは気の置けない友だよね。
「実は、その、ね、告白されてしまって」
「へー。その相手って、アグリッパより男前?」
あれ、梓ちゃん。本当に私の相談に興味ないとかじゃないよね? なんか受け答えが淡々としてい過ぎるような……?
「えぇと、どうしてアグリッパが基準になるの?」
「目の前にいるから」
「さすがにアグリッパさんに悪いよ梓ちゃん」
だって、アグリッパさんはたぶん何十年もモデルを続けてるプロだよ? もう何人の人が何枚アグリッパさんを描いたかもわからない人気のトップモデルだよ? 男前じゃないわけないじゃん!
と言っても、この間、美術の先生がガッタメラータ胸像を買おうかどうしようか悩んでるのを見ちゃったんだよね。あっちは渋いオジサマ路線だから、アグリッパさんとは違うタイプのイケメンなんだけど、このアグリッパさんも古いし汚れも目立つから、そろそろ我が部のトップモデルから陥落してしまうかもしれないんだ。
「あ、先生によると、ガッタメラータは諦めたらしいよ? ちょっと高いんだって。その代わりに青年マルス首像か聖ジョルジョ首像のどっちかにするって言ってた」
「え、じゃぁ、オジサマ来ないんだ」
「そう、残念?」
「いや別に、私は渋好みじゃないし……って違―う!」
違うよ、梓ちゃん! 私は別にイケメン首像とかイケメン胸像とかの話をしたいんじゃないんだよ!
「分かってる分かってる。ただあまりにユズが可愛く狼狽えてるから、ついからかいたくなって」
アグリッパさんを熱心にスケッチしながら、淡々とそんなことを言う梓ちゃん……。うん、そのクールさ。嫌いじゃない。嫌いじゃないんだよ。
「ええ? 突然、なんで?」
「いやぁ、年上だと敵わない部分もあるから、攻め方が変わるなーって」
「……同じ高校生だよ」
攻め方ってなんだ。攻め方って。でも、突っ込んだら、なんか負けな気がするので口にしない。
「そっか、安心した」
同じ高校生どころか同じクラスだとか、丹田くんの友達だとか、死んでも言えないよね、これ。
「ちなみに、……ちなみになんだけどね? もし中学生って言ったら、どうする気だったの? あ、ちょっとした好奇心だから。答えなくてもいいから!」
「んー? そっちは考えてなかったなぁ。まぁ、さすがに小学生相手って言われたら、引いたかもしんないけどさ」
「さすがにそれは私も引くよ」
ドン引きだね。ランドセル背負ってる相手にそんな気持ちにはなれない。いや、年齢で言えば6歳差ぐらいだから許容範囲かもしれないけど、大人の6年と子供の6年は違うよね。
なんとなくこの話題も落ち着いてしまって、気まずい沈黙が来るかと思いきや、さすがクラスのムードメーカーな丹田くん。私と梓ちゃんが見ている同じドラマを見ていたようで、先週の俳優さんの演技の物まねとか披露してくれたりと、笑わせてくれた。
……うん。深刻な雰囲気にならないで助かったんだけど、やっぱりこういう人は、同じムードメーカーな目立つ人同士で付き合うのがいいと思うんだけどさ。
告白があったことなんて忘れてしまったように集積所からの帰り道を辿っていたけれど、視聴覚室へと戻る丹田くんは、別れるときにきっちりと念を押して行ってくれた。ありがたくない。
「それじゃ、一週間後に答え聞かせてね」
はっきり言おう。私は免疫がない。
恋なんて、七ツ役くんに対するものが初めてだし、今までだってバレンタインデーに友チョコしかあげたことはなかった。
それがだよ?
告白されて、高揚しないわけがない! いや、七ツ役くんがいるし、断るつもりではあるけれども!
「あ、おかえりー。待ってたよ。一緒に部活行こう?」
「うん」
「……ユズ、なんかほっぺ赤くみえるけど、大丈夫? 風邪?」
「嘘!」
慌てて両手で頬を押さえる。熱い。いや、理由は分かってる。風邪じゃない! むしろ風邪の方が良かった!
「ちょ、ちょっと後で! 早く部室に行こう?」
心配してくれてる梓ちゃんには悪いけど、ここでもたもたしてると、視聴覚室掃除の班の人も戻って来ちゃう! さっきの今で丹田くんと顔を合わせたくない!
「うん? 本当にどうしたの?」
「だから後でってば!」
首を傾げる梓ちゃんの手をぐいぐい引っ張って、私は美術室へと急いだ。
・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・
美術室は、ありがたいことに無人だった。
そういえば、今日は三年生は午前中で授業も終わりだとか言ってたっけ。だから先輩方は来ないんだ。ありがたい。
梓ちゃんと二人で机を寄せてこぢんまりとしたスペースを作ると、そこにアグリッパの胸像を配置する。うん、今日も彫りの深いイケメンだ。
「えーと、梓ちゃんを見込んで、相談したいことがあるんだけど」
「うん? いいけど、どんな? アグリッパ描きながらでも大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫! あ、でも、口外無用でお願いしますです」
「オーケーオーケー。じゃ、どうぞ」
梓ちゃんはいつも通り、いや、いつも以上のクールさで受け答えしているけれど、これが私の口を動かしやすくする気遣いなのだと知っている。だから、私も安心して相談を持ち掛けられるんだ。持つべきものは気の置けない友だよね。
「実は、その、ね、告白されてしまって」
「へー。その相手って、アグリッパより男前?」
あれ、梓ちゃん。本当に私の相談に興味ないとかじゃないよね? なんか受け答えが淡々としてい過ぎるような……?
「えぇと、どうしてアグリッパが基準になるの?」
「目の前にいるから」
「さすがにアグリッパさんに悪いよ梓ちゃん」
だって、アグリッパさんはたぶん何十年もモデルを続けてるプロだよ? もう何人の人が何枚アグリッパさんを描いたかもわからない人気のトップモデルだよ? 男前じゃないわけないじゃん!
と言っても、この間、美術の先生がガッタメラータ胸像を買おうかどうしようか悩んでるのを見ちゃったんだよね。あっちは渋いオジサマ路線だから、アグリッパさんとは違うタイプのイケメンなんだけど、このアグリッパさんも古いし汚れも目立つから、そろそろ我が部のトップモデルから陥落してしまうかもしれないんだ。
「あ、先生によると、ガッタメラータは諦めたらしいよ? ちょっと高いんだって。その代わりに青年マルス首像か聖ジョルジョ首像のどっちかにするって言ってた」
「え、じゃぁ、オジサマ来ないんだ」
「そう、残念?」
「いや別に、私は渋好みじゃないし……って違―う!」
違うよ、梓ちゃん! 私は別にイケメン首像とかイケメン胸像とかの話をしたいんじゃないんだよ!
「分かってる分かってる。ただあまりにユズが可愛く狼狽えてるから、ついからかいたくなって」
アグリッパさんを熱心にスケッチしながら、淡々とそんなことを言う梓ちゃん……。うん、そのクールさ。嫌いじゃない。嫌いじゃないんだよ。
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