22 / 27
22.地雷を踏む想い人
しおりを挟む
分からない。私に対する話なのに、どうして梓ちゃんの名前が出てくるのか。
「あの鹿宮さんと仲良くできる別役さんだから、きっと僕にはない新しい視点を持ってると思うし、何より心も広いと思ったんだ。実際、全体を見渡して動いてるのも見たし」
大きな勘違いをしている目の前の男子を、さてどうしてくれようか。
全体を見渡して、というのはまず間違いだ。そんなすごい人間じゃない。単にうちの家族は兄と父が猪突猛進型だから、自然と母と二人でそれをフォローすることが多くなってしまって、後方支援が習い性になってるだけ。まぁ、そういう視点が欲しいと言われればそれまでだけど。
問題は前者だよね。どうして梓ちゃんが関係あるのかってことだ。
宇那木さんといい、丹田くんといい、梓ちゃんと同じ中学の人は、絶対に梓ちゃんを誤解してるんだと思う。梓ちゃんはクールでかっこよくて、美人さんな普通の女子なんだよ。
「梓ちゃんが――――」
「別役さんも聞いたことあるでしょ? 鹿宮さんがどんな人かって」
梓ちゃんが、何の関係があるの。
梓ちゃんが、何を悪いことしたっていうの。
ちょっとムカムカしてきた。いや、ちょっとじゃない。かなり、だ。
ついさっき、会話のテンポが合わないって話をしたばっかりだよね? 少しは考えてくれるかな?って期待したけど、やっぱり駄目だったよ。明らかに私の言葉を遮って、自分の言いたいことを優先させたよね? こういうとこだぞ!
「……ね、丹田くん」
「なに? もしかして知らない?」
丹田くんは明るい表情で私を見ている。たぶん、さっきの遣り取りで私が二重に不快を感じたのを、ちっとも分かってないんだろう。その表情が、余計に私の感情を逆撫でにした。
「ううん、丹田くんが言おうとしてることは多分わかる」
「やっぱり知ってるんだ」
えぇ、えぇ、そうですとも。実を言うとね。梓ちゃんのことについて言ってきたのは、丹田くんが最初じゃないんだよ? ついでに言うと宇那木さんも違う。
1年のときに同じ美術部になって、梓ちゃんとつるむようになった私に、梓ちゃんと付き合わない方がいいよ、なんて忠告してきたクラスメイトがいたんだ。たぶん、その子が最初。名前も忘れた。私にとって、その忠告でどうでもよい存在に格下げされたから。
「でもね、梓ちゃんは私の友達なんだよ? 傲慢な言い方かもしれないけど、丹田くんは私を振り向かせたいんだよね? それなのに、私の友達を貶すような真似して、それでどうにかなると思ってるの?」
「いや、僕は――――」
「もう話し掛けて来ないで。あと、梓ちゃんの悪口も言わないで」
行儀悪いかもしれないけど、私はゴミ袋を軽く丹田くんに押し付けて足を止めさせると、逃げるようにゴミ集積所へ駆けだした。
廊下を走るな? そんなん知るか。
あーもう、腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ!
丹田くんに告白されてからこっち、腹立たしいことばっかり増えてるんだけど! もう疫病神認定だね! もう次からは無視でいいや! 知るかもう!
集積所にゴミ袋をぶん投げて、足早に教室へ向かう。
待ってくれてる梓ちゃんに、とにかく早く会いたかった。もちろん、さっきの丹田くんとの会話なんて絶対に話さない。いや、でも、ぶちまけちゃうかも。だって、本当に腹が立つんだもん!
「梓ちゃ~ん!」
「やだ、ユズ。どうしたの、甘えん坊さんね」
私は教室で待っていてくれた梓ちゃんに、勢いよく抱きついた。向こうもちゃんとハグし返してくれるので、遠慮なく腕を回す。
「やった、梓ちゃんが優しい。ついでにいい匂いするから嗅いじゃえ」
「ユズ、変態くさいからやめなさい」
「変態の匂いじゃないよ。いい香りだよ?」
「あたしの話じゃないから」
ぽすん、と頭をはたくように撫でられて、私はついつい笑ってしまった。うん、梓ちゃんと話してるだけで、さっきの丹田くんとの会話で溜まったストレスが昇華されてく。本当に梓ちゃんサマサマだよ。
「なに? なんかあったの?」
「……また話し掛けてきたんだよ」
「それはそれは、ご愁傷さま、って言った方がいいの?」
「もう次から無視でいいかな」
「いいんじゃない? ユズをここまで怒らせるって、逆にすごいと思うし」
「えー? 私、そんなに心広くないよ?」
「心は広くないかもしれないけど、許容量が大きいと思う」
「許容量? つまり、どういうこと?」
「ユズはそのままでいいってこと」
「分かんないよ、梓ちゃん!」
反駁する私の頭が、また撫でられた。こんなことで絆されると思ったら大間違いだよ梓ちゃん! でも、気持ちいいから、ちょっと反論は保留。
「じゃぁ、帰る?」
「うん、帰ろう」
私のトゲトゲした気持ちを緩和してくれる梓ちゃん、サイコー。
「あの鹿宮さんと仲良くできる別役さんだから、きっと僕にはない新しい視点を持ってると思うし、何より心も広いと思ったんだ。実際、全体を見渡して動いてるのも見たし」
大きな勘違いをしている目の前の男子を、さてどうしてくれようか。
全体を見渡して、というのはまず間違いだ。そんなすごい人間じゃない。単にうちの家族は兄と父が猪突猛進型だから、自然と母と二人でそれをフォローすることが多くなってしまって、後方支援が習い性になってるだけ。まぁ、そういう視点が欲しいと言われればそれまでだけど。
問題は前者だよね。どうして梓ちゃんが関係あるのかってことだ。
宇那木さんといい、丹田くんといい、梓ちゃんと同じ中学の人は、絶対に梓ちゃんを誤解してるんだと思う。梓ちゃんはクールでかっこよくて、美人さんな普通の女子なんだよ。
「梓ちゃんが――――」
「別役さんも聞いたことあるでしょ? 鹿宮さんがどんな人かって」
梓ちゃんが、何の関係があるの。
梓ちゃんが、何を悪いことしたっていうの。
ちょっとムカムカしてきた。いや、ちょっとじゃない。かなり、だ。
ついさっき、会話のテンポが合わないって話をしたばっかりだよね? 少しは考えてくれるかな?って期待したけど、やっぱり駄目だったよ。明らかに私の言葉を遮って、自分の言いたいことを優先させたよね? こういうとこだぞ!
「……ね、丹田くん」
「なに? もしかして知らない?」
丹田くんは明るい表情で私を見ている。たぶん、さっきの遣り取りで私が二重に不快を感じたのを、ちっとも分かってないんだろう。その表情が、余計に私の感情を逆撫でにした。
「ううん、丹田くんが言おうとしてることは多分わかる」
「やっぱり知ってるんだ」
えぇ、えぇ、そうですとも。実を言うとね。梓ちゃんのことについて言ってきたのは、丹田くんが最初じゃないんだよ? ついでに言うと宇那木さんも違う。
1年のときに同じ美術部になって、梓ちゃんとつるむようになった私に、梓ちゃんと付き合わない方がいいよ、なんて忠告してきたクラスメイトがいたんだ。たぶん、その子が最初。名前も忘れた。私にとって、その忠告でどうでもよい存在に格下げされたから。
「でもね、梓ちゃんは私の友達なんだよ? 傲慢な言い方かもしれないけど、丹田くんは私を振り向かせたいんだよね? それなのに、私の友達を貶すような真似して、それでどうにかなると思ってるの?」
「いや、僕は――――」
「もう話し掛けて来ないで。あと、梓ちゃんの悪口も言わないで」
行儀悪いかもしれないけど、私はゴミ袋を軽く丹田くんに押し付けて足を止めさせると、逃げるようにゴミ集積所へ駆けだした。
廊下を走るな? そんなん知るか。
あーもう、腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ!
丹田くんに告白されてからこっち、腹立たしいことばっかり増えてるんだけど! もう疫病神認定だね! もう次からは無視でいいや! 知るかもう!
集積所にゴミ袋をぶん投げて、足早に教室へ向かう。
待ってくれてる梓ちゃんに、とにかく早く会いたかった。もちろん、さっきの丹田くんとの会話なんて絶対に話さない。いや、でも、ぶちまけちゃうかも。だって、本当に腹が立つんだもん!
「梓ちゃ~ん!」
「やだ、ユズ。どうしたの、甘えん坊さんね」
私は教室で待っていてくれた梓ちゃんに、勢いよく抱きついた。向こうもちゃんとハグし返してくれるので、遠慮なく腕を回す。
「やった、梓ちゃんが優しい。ついでにいい匂いするから嗅いじゃえ」
「ユズ、変態くさいからやめなさい」
「変態の匂いじゃないよ。いい香りだよ?」
「あたしの話じゃないから」
ぽすん、と頭をはたくように撫でられて、私はついつい笑ってしまった。うん、梓ちゃんと話してるだけで、さっきの丹田くんとの会話で溜まったストレスが昇華されてく。本当に梓ちゃんサマサマだよ。
「なに? なんかあったの?」
「……また話し掛けてきたんだよ」
「それはそれは、ご愁傷さま、って言った方がいいの?」
「もう次から無視でいいかな」
「いいんじゃない? ユズをここまで怒らせるって、逆にすごいと思うし」
「えー? 私、そんなに心広くないよ?」
「心は広くないかもしれないけど、許容量が大きいと思う」
「許容量? つまり、どういうこと?」
「ユズはそのままでいいってこと」
「分かんないよ、梓ちゃん!」
反駁する私の頭が、また撫でられた。こんなことで絆されると思ったら大間違いだよ梓ちゃん! でも、気持ちいいから、ちょっと反論は保留。
「じゃぁ、帰る?」
「うん、帰ろう」
私のトゲトゲした気持ちを緩和してくれる梓ちゃん、サイコー。
0
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【短編】記憶を失っていても
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。
そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。
これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。
※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)
【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!ー新たなる王室編ー
愚者 (フール)
恋愛
無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!
幼女編、こちらの続編となります。
家族の罪により王から臣下に下った代わりに、他国に暮らしていた母の違う兄がに入れ替わり玉座に座る。
新たな王族たちが、この国エテルネルにやって来た。
その後に、もと王族と荒れ地へ行った家族はどうなるのか?
離れて暮らすプリムローズとは、どんな関係になるのかー。
そんな彼女の成長過程を、ゆっくりお楽しみ下さい。
☆この小説だけでも、十分に理解できる様にしております。
全75話
全容を知りたい方は、先に書かれた小説をお読み下さると有り難いです。
前編は幼女編、全91話になります。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる