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 ———こんこんこん、

「? ………どうぞ」

 誰が呼んでいるのかも、何故呼ばれたのかも分からないまま、わたしはとりあえず声を出した。昨日のドレスのままだから、わたしは一応人前にたっても破廉恥ではない格好だ。
 けれど、この顔は流石にまずいのではないかと一瞬考えたがそれはもう後の祭り。
 だってもう、入室の許可を出してしまったのだから。

「失礼致します」

 けれど、その声はわたしが一瞬想像していた者の声とは異なっていた。
 わたしの部屋に入ってきたのはわたしよりもずっと年上の初老の美しい女性だった。

 お仕着せであろう濃紺のドレスにピシッと真っ白なエプロンを身につけている姿がとてもかっこいい。わたしも、あんな綺麗で頼りになりそうな、バリバリ働く女になりたかった。

 金髪と白髪の混じる髪をきっちりと結い上げている女性は、若葉みたいに優しいペリドットの瞳にふんわりした暖かな色を宿して、優雅な仕草で頭を下げた。

「はじめまして、オードリーさま。わたくしこのお屋敷で侍女長をしております、マーサと申します。本日より奥さまのお世話をさせていただくこととなりました。よろしくお願い申し上げます」

 ふっくらとした頬をくしゃっとさせて笑ったマーサさんはとても愛らしい人だった。


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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