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 うん。
 ろう。

 思い立った瞬間が吉。
 わたしは隣に立った旦那さまにずずいっと近づき、鉄製の骨で出来ている扇子で思いっきり旦那さまの頬を殴打した。

 ———パアァンッ!!

 なかなかに良い音が鳴って旦那さまが呆然としているけれど、残念ながらわたしの心はこんなものでは鎮まらない。
 だから、ずずいっと近づいていたことをいいことに、離れるためにターンをする拍子に細く尖ったピンヒールの踵で、旦那さまの足を思いっきり踏んづけてやった。

 うん。
 なかなかに良い感じに足の上にヒールの踵が沈んだわね。

「っ———!!」

 振り返った瞬間に見えた、般若のような表情で蹲って激痛に耐える旦那さまに、わたしは眉を下げて申し訳なさそうに微笑んだ。

 そう。ふんわりと微笑んでやった。

「あらまぁ、ごめん遊ばせ、旦那さま。お手々と足が滑ってしまったようですわ。先程のお言葉、少々耳が遠くなり聞こえませんでしたが、なんとおっしゃったのでしょうか」
「貴様っ、」

 微笑んだまま冷めたシトリンの瞳を旦那さまに向けたわたしは、旦那さまを無視して双殿下に手で進む方向を指しながら、2人に微笑みかけた。

「では、ご案内させていただきますね」

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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