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 数十秒、否、多分数秒たった。
 でも、わたしの低くもなく高くもないお鼻には一切のダメージがやってこない。

「?」
「………音楽の終了のタイミングであったことを感謝するんだな」

 わたしの身体は肌触りの良い布に包まれていた。

「………今日の帰宅後に考えていた悪戯は次回への持ち越しにして差し上げますわ」
「はぁー、お前はまともに礼すら言えんのか?」

 その憎まれ口にカチンときながらも、わたしは助けてもらったことが事実である手前強気に出ることもできず、顔を横に向けながらぼそぼそと口を開く。

「………あ、」
「あ?」
「………ありがと」

 なんだか癪に障る。

「そ、そういえば、あなた今震えていませんのね」
「………?」
「手、見てみなさい」
「!!」

 わたしの言葉に従い自らの手を見た彼は、僅かに目を見開いた。

「まさか、………お前、女じゃなかっつぅぁあ!!」

 もちろんこんな不誠実なことを言い切る輩には鉄槌を与える。

「足の青痣がまた増えてしまったようで。ご愁傷様です」
「………誰のせいだと?」
「さあ?胸に手を当ててしっかりと考えてみることですわね」

 舞踏会も中盤から終盤に差し掛かってきた。そろそろ社交をせねばならない時間帯だろう。

「それにしても、社交に一切の興味がないお前が御三家の事情に詳しいとは思ってもみなかった」

 旦那さまにエスコートされながら、わたしはイラッとした顔でぎゅっと手に力を入れた。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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