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1章 幸せの花園
46 ノアのプレゼント (1)
しおりを挟むノアの言葉に頷いたリュシエンヌは大変不服そうに自らの誕生日を述べる。今日からちょうど1週間後だった。
「じゃあ、僕の方がほんの少しだけお兄さんだ」
自信満々に微笑んだノアは、少し魔法の練習をしてくると口にし、辛いときや悲しいとき、何かから逃げ出したい時に向かう“あの花畑”に向かう。
幸せの咲き誇る花園には、今日も悠々とした月花草が美しく咲き誇っている。誰よりも高貴で、高潔で、それでいて純朴。多くの人が魅せられてきたように、ノアもまたこの花の美しさに魅せられる。
視界が潤み、歪み、ノアは深緑の瞳に大粒の涙を溜め込んだ。
脳裏に映るのは、女遊びに耽り周囲を一切顧みない父王の姿と、お菓子を頬張り宝石を眺めながら心底どうでも良さそうな顔をする母妃の姿。
小さい頃のノアも、愛に飢えていた。
誰かに褒めて欲しくて、可愛がって欲しくて、王太子ノアール・フォン・アイゼンとしてではなく、ただのノアールとして愛してくれる人を探していた。
王子だからという理由で構ってくれるのが嫌なわけではない。
ただ、ただただ理想の王子さまとしてノアールを見るのではなく、ノアールという人間を見てくれる人がほしかったのだ。王子だからダメと頭ごなしに否定されるのではなく、ノアールにどんな良くないことが起こるからダメだと叱ってくれる人が欲しかった。
誕生日も、上べっつらだけの言葉と、どれほどまでに素晴らしくて高いものが贈れるかという競争によって贈られるものではなく、心の言葉と安価でノアールのことを思って選んでくれたプレゼントが欲しかった。
否、最終的に考えると正直そんなものもいらない。
ノアはただ、両親に祝って欲しかったのだ。
心がこもっていなくとも、たとえ上っ面だけのものだったとしても、“両親に”祝って欲しかったのだ。
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