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1章 幸せの花園
46 ノアのプレゼント (2)
しおりを挟む瞳を閉じれば、今もありありと思い出す。
あれは確か、4歳のお誕生日———、
『国王陛下、今日は僕の』
『誕生日であろう?そのくらい知っておる。だからなんだと言うのだ。今日の勉強はどこまで進んだのだ?というか、今遅れがひどくなっていると教育係がぼやいていたぞ。俺の息子なのだ、しっかりしなさい』
周囲の子供達のお祝いの光景に憧れていたノアは、父王の言葉にしょぼくれたのをはっきりと覚えている。
でも、父王はまだマシな分類の人間だったのだ。
母妃は———、
『王妃殿下、今日、僕のお誕生日なんです』
『へー、そうなの。すっかり忘れていたわ。まあでも、知ったところで何もする必要なんてないし、だから何?って言う感じなのだけれど。それで?お前、何の用?たったこれだけのことを言いにきたわけないわよね?ほら、さっさと言って出ていってくれる?今日こそは陛下に振り向いてもらうために、身体を磨き上げなくてはいけないのだから』
母妃は、ノアの誕生日さえも覚えていなかった。
母妃の中で、ノアはどうでもいい関心のない存在だった。憎悪をぶつけられるのも辛いが、無関心はもっと辛い。
ノアは、この時この瞬間、《愛》の反対は《無関心》であると悟った。
ノアは誕生日が苦手だ。
誰にも祝ってもらったことないから。
魔女はノアの誕生日には必ずさりげなく新しい本や魔道具を与えてくれていた。
それが心地よくて、妙に安堵できて、ノアは好きだった。
魔女はノアのことを本当によく理解している。
まるでノアの心を覗き込んでいるかのように、ノアの欲しいものだけを与え続けてくれる。一部、受け入れ難いこともされるが、そこを除けば完璧すぎるほどに完璧な師匠だ。
———今日で、僕が生まれてから8年、か………。
それはつまり、ここで暮らし始めてから2年つ近くの月日が流れているということになる。
白銀のチリチリ髪に怪しげな黄金の瞳を持つ魔女に、ノアは幾度となく救われた。
ノアにとってそれは人生で得てきた何よりも大切で、大事で、無くしてはいけない最高のプレゼントなのだ。
だからこそ、
———僕は、欲張ってはいけない………。
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