完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。

水鳥楓椛

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13 わたくし流される

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「た、助けて………!」
「ん?今なんて言った?」
「ひぃっ!」

 悪寒が背中と言わず全身に走って、わたくしはカチカチと噛み合わない歯で音を鳴らしながら震えた。

「………んなのよっ、………………なんなのよ!!あの阿婆擦れは!!はあ?悪役令嬢の分際でハルトさまにくっつくとかありえないんだけどっ!というか、助けてって何?あれは黙って受け入れるのが女ってものでしょうが!!キモっていうか、腹立つっ!」

 ピンク色のレースとリボンが愛らしいドレスとミルクティーブラウンにふわふわした可愛らしい髪を振り乱すアイーシャは、ガシガシとリボンたっぷりに編み込んでいた髪をかき乱し、充血して血走った瞳をわたくしの方にギロっと向けた。

 うん。普通に怖いね。
 というか、悪役令嬢であるわたくしよりも迫力がある気がするな………。

「死ねええええええぇぇぇぇぇぇ!!」
(………3流の悪役?)

 聖なる魔力で作り出した短剣を、レオンさまにお姫様抱っこされているわたくしに向けて全力疾走してきた彼女に、わたくしは溜め息をつきながら魔法を展開する。

「は!?ちょっ!!」

 わたくしが展開したに弾かれて、アイーシャはダンスホールの中央から端にある壁に叩きつけられるほど勢いよく後方に飛んでいく。

「エリー」

 怒りに満ちたレオンさまの声に、わたくしはすっと彼から絶対に見えない場所に視線を逸らした。
 周囲からはざわざわとした驚きと騒めきが生まれ、全ての視線がアイーシャとわたくしに注がれて、現状のよくなさが際立つ。

「ごめんなさい………」
「………はぁー、問題ないよ。あれは教会に押し付ける。そしてあれが偽物であると気付かれる前に、婚姻を結ぶ。分かったね?」
「はい?」
「うん。いい返事」

 頭を撫でられますが、わたくしのさっきの言葉は間違いなく疑問系でしたわよね?

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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