異世界国家の建て直し!

らしん

文字の大きさ
2 / 14

2

しおりを挟む


お子様扱いの毎日に辟易していたローレンスは5歳にして文語や専門用語などは除いて一般的な会話や読み書きは出来るようになっていた。

(まぁ…一度人間やってるんで当たり前っちゃ当たり前なんですけどね。)

そんなローレンスを神の子だと言い出したフレデリックはバイシ国唯一の大学の教授たちを呼び寄せてはローレンスの家庭教師を務めさせた。

言語から始まり、歴史に経済と会計学、当然格闘術と剣術に魔法学もひと通りこなすと10歳を迎える頃には大学卒業レベル、しかも全ての学部を最も優秀な学生と同レベルの成績を取れるほどの資質を身につけていた。


「ローレンス、お前って奴は…。魔法学のフェルナンド教授を1週間も監禁したって本当なのか?」

「えぇ…お父さま。それは語弊がありますよ。フェルナンド先生の著書で有名なバイシ国魔法大全は魔法学を学ぶ全ての者が読むバイブルと言ったものですが、その中で解説されている魔法の術式の構成の中で350箇所ほど無駄な箇所があったので改訂しようと提案したのですよ。無駄な部分を省けばそれだけで詠唱も短くなり術者の負担軽減にも繋がります。それに重複部分を削れば更に効率化できるのです。しかしフェルナンド教授は頑なに伝統の術式は崩せないと強情なものですから…議論をしているうちに1週間も経っていたというのが正しいのです。」

「そうだったのか…魔法学は得意とは言い難い分野だから俺には何とも言えないが、フェルナンドが教授を辞めたいと俺の所に辞表を持ってきてだな…」

「フェルナンド先生がそんな事を!?お父さま、絶対に受理してはいけませんよ。むしろフェルナンド先生は学長にすべきとてもこの国にとっても大切なお方です。現在のランブル学長は目が曇ってしまったのか不正な支出や良からぬ者たちとの付き合いがあるようですから。」

「なんだと…?なぜお前がそんな事を知っているのだ。」
フレデリックは心底驚いた。眉唾の噂話レベルではあったが、ランブル学長の黒い噂は確かに報告が上がっていた。

「会計学を習ったので、実際に大学運営の会計をチェックしてみたのです。職員の方も協力して下さって資料はわりと簡単に入手出来ましたのでチェックしていくうちに問題点を発見して追いかけていくうちに学長に行き着いた次第です。」

「誰が見ても証拠となるものがあるのだな?」

「もちろんですとも。推測だけで他者を悪者にすることなど出来ませんから。」

「よし、その証拠をあとで私の方に届けさせるよう手配をしておけ。フェルナンドとランブルの事は精査した後に判断しよう。」


その後のフレデリックの動きは早かった。
公にランブルを裁く事はせずに退任させるとランブルに取り入った奴らを一網打尽にしたのだ。
フレデリックはランブルが不正に加担した大元の理由は息子の経営している商会が大きな損失を出してしまった事に端を発していたことまで調べていたから温情をかけての判断だった。


「お父さま、お呼びでしょうか。」
「ローレンスさま!私を学長に推すとはどういうことですか!!」
フレデリックの執務室に入るやいなやフェルナンドが食って掛かってきた。

「えっと…理由…ですか?」
ローレンスはフェルナンドの問いに答えた。

フェルナンドは魔法学に留まらず他の分野への知見も深く、人望もあって何よりもバイシ国唯一の神級魔法使いである点を挙げた。

5段階ある一般魔法、その上に3段階の特級魔法、ここまではどこの国でもほぼ同じようにレベルに応じて学ぶ事が出来るが、神級魔法というものはそれぞれの国がそれぞれに長い年月を掛けて研究した門外不出の最上位魔法でありその存在すら国王と神級魔法使いのみぞ知るものである。

「…ですから、この国で一番学問を極めた方が学長になることに何の不思議があるのでしょうか。」

「ローレンスの言う通りだ。逆にフェルナンドはなぜ固辞するのだ?」

「…それは……私が長年掛けて研究してきた魔法学をローレンスさまは数年で理解したどころか改善点まで示されました…。私の自信は脆くも崩れさったのです。」

「ハハハ。フェルナンド、その気持ちは痛いほど分かる。だがローレンスは次にこの国を担う者だ。王になる者である。頼もしいとは思わぬか?」

フェルナンドはハッとした。
ローレンスは子供だと思っていたから子供に打ち負かされて悔しいと目先の感情に囚われてしまっていたのだ。
自分たちの国を守る王がこれほどにも才能に溢れ、民を率いてくれたのならどれだけ心強いか。
国民としてどれだけ幸せな事であるかということに気付いた。


「申し訳ございませんでした。私が未熟で意固地になっておりました。学長の件、ありがたくお受け致します。そして、バイシ国のさらなる繁栄に全力を注ぐ事をお約束させて頂きます。」

その言葉にフレデリックはフェルナンドに手を差し出し、かたく握手を交わした。


「えぇと、すみません。フェルナンド先生に1つお願いがあるのです。」

「なんだい?」

「先生が学長になってしまうとお忙しいと思いますので、ぜひこの国No.2と呼ばれるルーナさんに教えてもらえたらと思うのです。」

ルーナはフェルナンドの娘で15歳にしてこの国No.2と言われる程の特級魔法使いだ。

「いいでしょう。ルーナには私から伝えておきます。」

(やったぜ!俺の思惑通り。)

なにせルーナは可愛すぎる魔法使いとして街では人気の存在で、どこに行っても人だかりが出来てしまうため最近は専ら街を離れてフェルナンドの背中を追って神級魔法使いを目指すべく勉強と修業に明け暮れているという。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...