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しおりを挟むローレンスは朝から落ち着きが無かった。
(いよいよあのルーナさんにお会い出来る。)
トントントン
「ローレンスさま、間もなくルーナ様が到着なさいます。お出迎えの準備をお願いいたします。」
「分かった!」
言うやいなやローレンスは部屋を駆け出してエントランスに一目散に向い外に出ると、ルーナの馬車がちょうど着いたところだった。
「本日はわざわざ起こし下さってありがとうございます。」
ローレンスは深々と頭を下げた。
「ローレンス殿下こそ直々にお出迎えありがとうございます。」
ルーナの姿を見るとローレンスはルーナに目を奪われた。
「殿下?どうなさいました?」
直立不動で固まっているローレンスの姿に不思議そうに問いかける。
「あっ、えっと…僕と結婚して下さい!」
「……ふぁっ!?」
ルーナはよほど驚いたのか悲鳴のような変な声をあげる。
そんな光景を目の当たりにした周りにいた従者たちはまたか…と言ったように頭を抱えた。
「殿下は違うと思ってお父さまに言われた通り魔法をお教えする役目を受けたのに、やはり殿下も他の人たちと同じく人の見た目でどうこう判断する方だったのですね!」
「いやいや、違うんです。ルーナさんが美しく見惚れてしまった挙げ句にわけも分からず求婚してしまったのは事実ですが、僕は特級魔法使いになりたいのです。ゆくゆくは神級になれたら…とも真剣に思うのです。」
「そうですか!特級魔法使いはこの国には100名ほどおりますからその方々に教えを乞うて下さい!父から聞いていた話しと随分と違うお方のようですからね!」
「そんなぁ…。お願いです!一般魔法だけで僕と勝負して僕が負けたらルーナさんに従います。もし、僕が勝ったらこのまま僕の師として教えて下さいませんか?」
「随分と自信がおありのようですけども、特級と一般のレベル差だけで同じ魔法を使ってもそこにレベル差がハッキリと出てしまうのです。ですからやる迄もなく結果は目に見えているのですよ。」
「確かに一般的にはそうですね。ではルーナさんの欲しいものや叶えたい事ってなにかありませんか?」
「そうですね…周辺諸国でより深い魔法の知識を得たり修業の旅に出る為の資金を貯める事がいまの一番の目標ですね。このお役目を受けたのもその資金の足しにするためという意味もありましたから。」
「では金貨100枚を賭けて僕と勝負して下さい。この条件ならばルーナさんも文句がないのでは?」
「地位やお金で人をどうこうさせようとするなど心底軽蔑しますが金貨100枚は私にとって夢を叶えるためにまたとないお申出、ぜひお受けしましょう。」
「ありがとうございます。では早速ですが場所を移しましょう。」
ルーナとローレンスは王城から離れた草原地帯にやって来ていた。
「ルールは通常の模擬戦と同じく戦闘不能、もしくは負けを認めるまで続行する形で構いませんか?」
「ええ、構わないわ。」
「それではこのコインが地面に落ちたら開始です。」
コインが地面に落ちるやいなや、ルーナは一撃で仕留めにドラゴンフレイムを最大火力でローレンスに向けて撃ち込んだ。
微塵の手加減もなく強者の力を見せつけるかのように激しい炎が一面に広がり一瞬で全てを焼き尽くし大きな爆発を起こした。
「この速さで撃ち込まれてはローレンスが父の言葉通りどんな才覚があったとしてもまず逃れる事は出来まい。」
次の瞬間、ルーナの身体が縛り付けられたように身動きが取れなくなった。
ルーナは自分に何が起こっているのか理解が追い付いた時にはローレンスが目の前で満面の笑みを浮かべていた。
「どうして?どうしてあのドラゴンフレイムから逃れる事が出来たのです?」
ローレンスはツタで手首を縛られ吊るされた状態で屈辱的な格好をしているルーナに答えた。
「そうですね…ルーナさんは一撃で僕に分からせに来ると踏んでいたんです。となると、1級魔法のドラゴンフレイムあたりが来るであろう事は推測が出来ました。その詠唱時間は比較的長めになりますのでその間に回避最優先して、その先のプランも考えていたのですがルーナさんはお優しいので追撃やトラップもなく見守って下さってバインドで捕まえる事が出来ました。」
「くっ…悔しい!私は負けを認めませんからね!」
「ルーナさんってやっぱりお父さまに似て強情なのですね。」
ローレンスはやれやれといった感じでFine(フィーネ)と呟くと、ルーナの意識が遠のいた。
「あれ…?ここは?」
ルーナがようやく目を覚ました。
「ルーナさんおはようございます。ここはルーナさんに使って頂くお部屋です。お加減はいかがですか?」
「んー!よく寝て元気いっぱいよ。少しお腹が減ったかも。」
「良かった。夕食も間もなく準備が整いますので参りましょう。」
「あ、ところで…私は負けて無いからね?」
「まだ言いますか笑 では…僕の師として教えて下さいますか?」
「んー…。分かったわ。資金を貯める為にもお役目を果たさなければなりませんからね。」
「契約成立です。なにとぞよろしくお願いしますね。ルーナ先生」
ルーナは無邪気に喜ぶローレンスの姿に心のなかにあった壁のような物は全て消え去った。
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