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しおりを挟むルーナは教えるのがとても上手かった。
フェルナンドはどうしても学者特有の理論ありきの教え方で実戦とは中々結びつかずにイメージし辛いことも多かったのだが、ルーナは理論よりも実戦の感覚で教えてくれるので魔力の込め方、威力の調整など感覚的な部分の理解が一気に深まった。
そして美しい。
その谷間、腰から入ったスリットから伸びる脚など神の造りし至高の造形美だ。
そんな容姿とは相反して性格は豪快で、相手が王子であろうが容赦は一切ない。
だからこそローレンスも気兼ねなくいることが出来た。
「なんか外が騒がしくない?」
「そう…ですね。ちょっと確認してみましょうか。」
ローレンスは部屋を出るとちょうどメイドのエルミィが通りがかった。
「なぁエルミィ、騒がしいけど何かあったのか?」
「はい、最近西の森に住み着いていたオークの群れがオークジェネラルを伴って合流した複数の群れがこちらに向かっているとか…」
「なんですって?オークジェネラルですって?」
ルーナも飛び出してきた。
「ローレンス、実技実習よ。馬を用意なさい。」
「エルミィ、だそうだ。馬を頼む。」
「承知しました。」
エルミィが駆けていくと、ローレンスたちも仕度を始めた。
「いい?オークはそれほどではないけれど、オークジェネラルだけは別格の存在よ。肝に銘じて。」
馬を走らせながら、ルーナは戦術をローレンスに伝えた。
現場は惨状と化していた。
先遣隊で派遣されたギルドからの冒険者たちは重症を負い、あたりにバタバタと倒れたまま救助も出来ていない。
「想像以上…ね。」
「ローレンス、私がジェネラルを引き付けている間に動ける兵士たちと協力してまずは負傷者の避難を指揮して!」
「分かりました!」
2人は離れるとルーナはオークジェネラルに近づきウィンドショットで一撃を入れると離れた場所に引いて行った。
「今だ!兵士は負傷者の救助を!あの大木の元に集めて!」
ローレンスの号令に兵士は一斉に動き出した。
ある程度負傷者が集められるとローレンスは救助から離れて大木の元に駆け寄った。
「グレートヒール」
負傷者の一人ひとりに一般魔法では最上位のグレートヒールをかけていくが、重症者には応急処置程度の効果しか無かった。
「クソっ…僕がせめてもっと効果の高いヒールを使えたら…」
この現状でいくら後悔したところでどうにもならないと頭では理解して次々にヒールを掛けていくが、自分の力の無さを責められずには居られなかった。
その瞬間、あたりが暗闇に包まれると強い閃光が空から降り注いだ。
「あれは…サンダーランス」
無数の雷の槍が空から降り注ぐ特級魔法だ。
ルーナさんがオークジェネラルにトドメを差したのだとローレンスは瞬時に理解した。
「僕のヒールで回復した方々はまだ魔物がいるかも知れないのでより後方に避難していて下さい。兵士の方々は引き続き負傷者の収容と重症者を一箇所に集めて下さい!」
ローレンスは素早く指示を出すとひと通りヒールを掛けて重症者を移動させているとルーナが戻った。
「お、ちゃんとやるべきことが出来てるじゃない。後は任せて。」
ルーナが重症者の集められた所に歩み寄ると、エリアヒールを唱えた。
ローレンスのヒールで回復しきれなかった重症者もルーナのエリアヒールにより一定範囲に居る負傷者はみるみる回復した。
「これで全員かな?」
オークジェネラルを1人でいとも簡単に倒し、重症者をも一瞬で回復させてしまってもなお涼しげに言うルーナの姿にローレンスはただただ尊敬の念をさらに募らせた。
「よし、任務完了だね。誰かにオークジェネラルの後処理を頼んでおいてくれる?苦手なんだよねぇ…あの魔物の死体を切ったりするの。」
「分かりました。」
そうこうしているうちに城からの援軍と救護用の馬車が到着したが、回復した負傷者だけ馬車に乗り込みUターンさせると最後尾にローレンスとルーナが続いた。
城門をくぐると話しを聞きつけた者たちが既に集まって歓声を上げていた。
「こういうのも苦手なんだよねぇ…」
ルーナは方々に笑顔を振りまきながらその表情とは180度違う愚痴をこぼした。
「僕は表情と心のなかが正反対のルーナさんが怖いです。」
ローレンスの言葉に危うくローレンスにもサンダーランスを降らせそうになったが、なんとか踏み止まった。
「はぁ~。ようやく帰ってこられたよー!謎の凱旋みたいに城下を何周したのよ。」
「いいじゃないですか。死亡者は0で皆がこうやって喜べるというのは平和の証なのですから。」
「いうよねぇ。あんたは王様かよって。」
「はい、きっと次の王様は僕になると思います。」
「そうでしたー。あなたはおーじさまでしたー。」
「なんですかそれ笑」
「ところで重症者を集めたのはローレンスの考え?」
「え?あぁ…はい。サンダーランスが見えたのでルーナさんがすぐに戻ってくるのは分かりましたし、あの負傷者の数を回復させるにはエリアヒールで回復させるのが一番効率良いのでルーナさんもその選択をすると思い一箇所に集まっていれば戻り次第すぐに詠唱に入って貰えると考えたんです。」
「さすがね。」
そう言うとルーナはローレンスを抱きしめた。
(ルーナさんの谷間に埋もれてる!!ルーナさんの匂いたまんねぇなこれ。人生最良の日です!神様ありがとうこれからもたくさんいい事するように頑張ります!)
ルーナは抱きしめる手を解いたがローレンスはそのまま胸の谷間に埋もれたまま意識を失っていた。
「まったく…。」
緊張の糸が切れたローレンスは極度の緊張とMPの大量消費で消耗しきっていた。
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