7 / 14
7
しおりを挟む「ルーナさん今日は随分と服装の感じが違いますね」
「変装よへ、ん、そ、う!」
「どうしてまた…」
「街へ行くとね、やれルーナさんが何買った。ルーナさんがどのお店に入った、握手して下さい、飲みに行きませんか……だの…ほんっとゆっくり買い物もしていられないのよ!」
「あら、ルーナさんは外面だけは最高に良いですもんね。その反面、内心どう思っているか知ったらきっと誰も寄り付かなくなりそうですけど笑」
その瞬間、ローレンスの身体は強い衝撃と共に空中に舞い上げられるとそのまま地面に打ち付けられた。
「ルーナさん…ヒドいじゃないですか……。戦時以外は人に対して攻撃魔法を使用してはならないってルール知らない訳じゃないですよね!!」
「なんのことかしら?私にはあなたが勝手に宙を舞ったと思えば落ちてきたようにしか見えなかったけれど。それとも、なにか確証があって私を悪者にしようというの?」
ルーナの鋭い視線が地面に這いつくばったローレンスを見下ろしていた。
ふと開いた窓から心地よい風が室内に流れ込むとルーナのふんわりしたロングスカートをめくり上げ、ローレンスの視線はそのスカートに隠されていた脚を下から上に辿るとハッキリとその黒い布地を目にした。
(Jesus!!!)
咄嗟にルーナはスカートを押さえると、赤面と共に目に涙を浮かべている。
「見た?」
「はい?」
「見たの?」
「いえ」
「見たの?」
「いいえ…」
「み、た、の?」
「まぁ……黒でした。」
「この変態!!」
容赦なくヒールの靴でローレンスの顔を踏みつけにした。
「理不尽だ…」
ローレンスはそう言い残し意識が途切れた。
「いつまで寝てるのよ!」
頬を叩く心配そうなルーナさんがおぼろげに見えた。
ここは…!!感触的にもこの目線の角度的にもルーナさんの膝の上だ。
「目が覚めたなら早くどいてくれる?」
ローレンスはゆっくりと首を振り、下向きになって顔中でルーナさんの感触を感じつつ匂いを堪能した。
普段ならここで追撃が入るタイミングなのだが今はその一撃がない。
不安になって顔をあげると、ルーナは心底邪魔だ。といった表情ではあったが…怒りの中になんというか恥じらいというかよそよそしさがあった。
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもないでしょ!!」
返答はいつものルーナさんだった。
「でも…あんな姿を見られてしまったからには責任を取ってくれるのよね…?」
「責任…?」
ルーナさんの話しを聞くと、どうやらあられもない姿を見られてしまったからにはもう汚れてしまったと(少なくとも本人だけは)思っているらしい。
こんな美人嫁ゲットのチャンスじゃんか!という声とそうやって純潔を守ってきたルーナさんを陥れていいのか?という声がローレンスの中でせめぎ合った。
ルーナさんと過ごしてきたこの3年で僕は成長させてもらったし、そもそもこれまでも谷間に埋もれることはセーフだったんだろうか…。ルーナさんの歪んだ認識が少し心配になった。
「ルーナさんが僕に責任を取ることを望んでくれるのなら喜んで応えましょう。しかし、世間では下着が見えてしまう不慮の事故は稀に起こるものです。ですからなんら汚れたなどと思う必要はないのですよ。」
「うそ。そうやって汚れものにして私を捨てる気ね?」
「違いますって!ちょっと誰か連れてくるので聞いてみて下さいよ。」
運よくちょうどエルミィがすぐに捕まった。
「頼む、ちょっと来てくれ!」
エルミィを連れて行くと事と次第を話した。
「そうですねぇ。そのくらいの事はまぁ…極々まれに、わりとありますね。。。私なんて注意散漫だってよく怒られるのですが、このメイド服は転んでしまうと後ろが必ずめくれ上がって丸出しになってしまうのですよ。それが汚れた事になるのでしたら、私はもう汚れきった存在です。ルーナさまは私のことを汚れきった存在だとお思いですか?」
「そうねぇ…。エルミィちゃんが汚れているとは思わないわ。でもこの気持ちはどうしたら良いのかしらね。だって、一方的にローレンスに変態の喜びを与えてしまったようなものでしょう?」
「そこは紳士として女性のお気持ちを埋めて差し上げるのがよろしいかと思います。ね?殿下!」
「あっ…うん。風の気まぐれとはいえルーナさんを恥ずかしく不快な気持ちにしてしまった事には変わりないのですからルーナさんの気がすむまでなんなりと尽くさせて頂きます。」
「さすが殿下。では私はこれでお仕事に戻りますね。お邪魔しました。」
エルミィはこの2人が未来のこの国を担う方々だと思うと一抹の不安を感じたが、仕えている身でそんな事を言えるはずもなく心の底にその思いをしまった。
「さて、ルーナさんは何をお望みですか?」
「うーん。望みって言われてもローレンスくんに望むようなことは特にないのだけれど」
「なんなんですか笑 エルミィまで引っ張り出して大立ち回りをしたのに特にないって!びっくりですよ!」
「強いて言うなら行くつもりだった買い物をお願いしたいくらいなものね。」
「任せて下さい!僕が行って来ましょう!」
「私が愚痴ったように人だかりに埋もれたりしないの?」
「えぇ…ビックリするほど我が国の民は僕に興味関心がありませんからね!気付かれることすら稀ですし、それどころか街を巡回している衛兵に身分確認をされる有り様ですよ。」
「うわー…やっぱり国民は賢いのね。変態王子なんかよりも私に注目しているのですから」
「あれあれ?ルーナさん?いつも愚民は◯◯なんて言ってませんでした!?」
「ローレンスくん?いつも余計な言動が多いって注意してるわよね?忘れちゃったのかな?それともローレンスくんの葬儀で国民の注目を集めたいって意味なのかな?」
「いやいやいや…買い物に行ってきます!」
ローレンスは逃げるように駆け出して行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
