異世界国家の建て直し!

らしん

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ルーナとローレンスが訓練場にしていた草原にエルミィが王城から走ってくるのが見えた。

「殿下!お手紙が届きました!魔法協会の封印がありま…」

言いかけたところでエルミィは派手に転んだ。

「ブラインド」

すかさずルーナは一時的に視界が奪われる魔法をローレンスにかけた。

「エルミィちゃん大丈夫?ほら、スカート戻して。ヒール」
エルミィを起こすとヒールで擦りむいた膝を治癒させた。

「ルーナさま、ありがとうございます。」
エルミィは丁寧にお辞儀をした。

「殿下、お手紙をどうぞ。」
エルミィは視界が遮られているとは知らずローレンスに手紙を差し出し、ローレンスは声の方向に手を伸ばしたが何やら小さな柔らかい膨らみに触れた。

「いやっ…ローレンス殿下、、、ルーナさまの前でお胸に触れるのは…ご勘弁ください。」

「はぁ?ローレンス!ってなに?って!こそこそ隠れてエルミィちゃんに変な事をしているの!?」

その刹那、空が暗くなり閃光が降り注ぐとローレンスの身体を貫く寸前にカウンターバリアが発動してギリギリのところで貫通を回避すると全てが消滅して空が明るくなった。

「あっぶな!今のは当たってたら完全に逝ってしまうやつでしたよね!?被弾して負傷してヒールして、はい、元通り!なんて出来ない一撃死するやつでしたよね!?ねぇ!ルーナさん!」

「罪人を処刑することに何か問題がありますかねぇ?」
心底下賤な奴を見るような目でエルミィを抱きかかえながらルーナは言った。

「ねぇ…エルミィさん、誤解を招くような言い方はやめよーよ!マジで僕死にかけたからね?!?!僕はエルミィにそんな事をしたことなんて一度もないよね?ね?」

「…ちょっと……分からないです」
エルミィは目を伏せて頭を傾げた。

「なんでだー!!」
ローレンスはファイアーアローを避けながら森の方へと全力で逃げていった。


「さてと、ようやく認定書が来たようね。」

「エルミィちゃん、フレデリックさまにお会い出来るようお願いしてもらえるかしら。」
「かしこまりました。明日にはお戻りになると思いますのでどこかでお時間を頂けるようお願いしておきますね。」
そう言うと来た道をエルミィは駆けて行った。


「ローレンス!隠れていないで戻ってきなさい。」
ルーナの一声で一目散にルーナの元へローレンスは戻って来た。

「おめでとう。特級魔法使いの認定書です。」

「ありがとうございます。……ところで…」

「もういいの。ここであなたを亡き者にしてしまっては神級魔法使いへの道が閉ざされてしまうと私も気付いたのよ。だから男性のそんな欲望の根源とされるモノを切り落とせば解決するでしょう?脱ぎなさい、ローレンス!」

「痛くしないからほら!ほらほら!」
なんだか楽しそうなルーナさんがホラーすぎる。サイコパスなのかも知れない。

「それだけは勘弁してくださいよぉ…!!僕もいつかお世継ぎを作らなければなりませんし!ルーナさんはこの国を滅ぼすのですか!?」

「………確かに!そうね。そうよね。」
ルーナはなんだか腑に落ちたようだった。

子供が出来なければ王位継承問題で国は混乱してしまうし、国が混乱してしまっては神級魔法使いなどと言っている場合ではなくなってしまう。
ルーナの頭でもなんとなくそのロジックが理解できたようだ。


「なんか、やる気も削がれたし私たちも帰りましょ。」
「そうですね。」
ローレンスは心底安堵して王宮への道を歩きだした。


「ところでルーナさん、ちょっと手を出して頂けますか?」

「えっ…いきなり何?」
ルーナは身構えた。

「…僕ってそんなに信用ないですか?」

「ない。」
ルーナはバッサリ切り捨てた。

「ルーナさんの中の僕って一体どうなってるんですか!!まるでケダモノみたいな扱いじゃないですか!」

「あれ?違うの?」

ローレンスはガックリうなだれた。

「違いますよ!!これをルーナさんに贈ろうと思いまして。」

小箱を開けると中にはプラチナのブレスレットがきらめいていた。所々に色の違う宝石が埋め込まれ、魔法の術式のような文様が所狭しと刻み込まれている。その細かな仕事にひと目で高価なアイテムであることが見て取れた。

「ローレンス?こういう物はね、手を出すように言って着けてあげるのがスマートな渡し方なのよ?そんな見せつけて感謝しろと言わんばかりに。」

「僕いいましたよね!!ねぇ!!」

そんなローレンスを無視してルーナはブレスレットをはめると空にかざして太陽の光できらめく様を見ては満足そうな表情を浮かべていた。


部屋に戻るとローレンスはバイシ国の地図を広げた。
バイシ国は広大な中洲のような位置にあり、南は海に、北はリベイル川が分岐するところからそのままリベイル川は南西に流れて西側の国境となり、分岐したパルイ川が東側の国境となっている。

「ギルドのレオさんにも確認してきたんですけど、まずは西側に位置するマンサル王国へと繋がる街道を行って西側国境の都市シアルを拠点に魔獣の異常発生の原因を探るというのが今回の正式な依頼です。」

「分かったわ。いよいよ私たちの力を示す時ね。旅の荷物はバッグに詰めてあるからいつでも出られるわよ。一応フレデリックさまにご挨拶してからと思ってエルミィちゃんにお会い出来るようお願いしてあるのだけれど」

「ありがとうございます。ではお父さまに出発の挨拶を済ませたら出発しましょう!」
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