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「もう出るのかね」
宿を出るとベルサが出てきた。
「これを持っておいき」
ぶっきらぼうに何やら書き込まれた書状を手渡してきた。
『推薦状』と書き出しにあるその書状は、ベルサがローレンスとルーナの身元を保証し、その者らの活動に最大限配慮を求めると書かれていた。
「これでも街道の宿場を守る私はこの街道沿いじゃそれなりに知られているからね。困ったらこれを出せば大抵の事はなんとかなる。気をつけておいき。」
「ありがとうございます」
ローレンスはお礼を言うと出発した。
それからシアルへの道のりでベルサの書状は大いに役立った。
魔獣の活動が活発になったせいで街道では随所に検問があり、行商人や荷馬車以外の一般人は冒険者であれ移動目的など詳細に調べが入り通り抜けるのにかなりの時間を要する状況になっていたが、書状を見せるとほぼフリーパスだった。
(ルーナさんの倒した魔獣をひたすら回収するだけのお仕事は相変わらずだったが…)
シアルに近い森の中にあるソヤークの村に着くと特産である薬草とそれを加工したポーション類の店が建ち並び、所狭しと色んな色のポーションが並んでいた。
「うおおおおおおおおお!」
ローレンスはテンションMAXだった。
「やっぱり製作系のスキルは男のロマンなんですよ!これまで収拾してきた薬草たちがようやく日の目を見る時が来ました!」
「あー…道草食ってると思ったら本当に草取ってたのね…。」
ルーナは冷ややかな目でローレンスを見ると興味なさげに店の商品を見て回った。
どの店でもポーションは初級・中級・上級・最上級の4つのグレードがあったが、鑑定スキルでチェックしていくと最低限のクオリティはどの店もクリアーしているものの、『くすりのくすりや』というややふざけた看板を掲げた店のポーションは何故かずば抜けてクオリティが高かった。
「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」
「はーい!」
出てきたのはエルフのような女の子が白衣姿で裏からカウンターに出てきた。
「えっと…あの、結婚して下さい!!」
「はぁ……?冷やかしですか?」
「あ、あぁ…違うんですあまりにおキレイなので思わず心の声が漏れてしまいまして」
「ウフフ、おかしな方ですね。ところでなにかご用ですか?」
「はい、このポーションはあなたが作っているのですか?」
「いいえ、私は店番兼製作のお手伝いをしているレミルと申します。製作はおばあちゃんなんです。」
「なるほど。出来ればお会いしたいのですが。」
「分かりました。お待ち下さいね。」
「お待たせしました。おばあちゃんです。」
ローレンスは顔を見た瞬間、腰が抜けそうになった。
「って!!おい、クソババア!なんでこんなとこに居るんだよ!」
「うるさいね。クソガキが。アンタこそなんでこんなとこに居るんだい。」
お互いに口汚い言葉を吐き出すとローレンスはカウンターを乗り越えてレミルのおばあちゃんを抱きしめた。
「レンダルばあちゃん…ずっと会いたかった。理由も告げずに急に居なくなったから…」
「よしよし、ローレンス。アンタは変わらないねぇ。家の事情だったから急に居なくなって悪かったよ。」
突然目の前で始まった光景にレミルは何がなんだか分からずただ立ち尽くしていた。
レンダルはレミルに早めの店じまいをさせるとルーナも合流してローレンスを家に招いた。
「あの時は悪かったねぇ。王都の大学で薬学を教えつつローレンスの家庭教師をしていたのよ。だけどレミルの両親が天気の悪い中で急ぎの納品だからって馬車で出掛けたら事故に遭ってしまってね。親を失ったレミルの面倒を見るために何もかもそのままで急ぎここへ戻って来たの。」
「そうだったんですか…僕はあれからポーション作りからは離れいたんですけどソヤークに来たらやっぱり思い出してしまって。それでやたら品質の高いポーションがあると思って聞いてみたらまさかレンダル先生にお会い出来るとはまるで夢のようです。出来たらレシピを僕に教えてくれませんか?」
「昔も口酸っぱく言ったけれどレシピは基本レシピを使いなさいな。基本も出来ずに先へ進むことなど出来ないことは充分に理解しているでしょう?特級魔法使いになる道のりを歩んできたのだから。」
「そういえばそうでした。あの頃のレンダル先生の言葉が蘇ってきました。」
「ところで、あなた達に頼みがあるのよ。シアルの方から流れてきたと思うのだけれどソヤークの森にブラッディウルフの群れとオーガが住み着いてしまったの。今はまだ在庫で賄ってはいるけれどいずれ材料の枯渇は目に見えているから安全に薬草が摘めるようにどうか退治してくれないかい?」
「もちろん任せて下さい!」
「助かるよ。森の案内はレミルに行かせるからよろしく頼むよ。レミル、いいかい?」
「分かりました。」
「あとそちらのお嬢さんにはもう充分キレイだから不要かもしれんが私の特製美容ポーションを準備しておくさね。」
「そんなポーションが!?任せて下さい!ついでに私も弟子にして下さい!!!」
「ところであなたはロペスさんの縁者の方かしらね。」
「そうです!フェルナンドの娘、ルーナです。もしかしたら大学で父がお世話になっていたかもしれません。」
「やっぱり。その美しい銀髪は美しきロペス家の伝統の1つだものね。フェルナンドも元気かしら。」
募る話しでいつしか陽も暮れかかっていた。
「あらあら、気付けばあっという間に日が暮れる時間ね。夕食にしましょうか。」
宿を出るとベルサが出てきた。
「これを持っておいき」
ぶっきらぼうに何やら書き込まれた書状を手渡してきた。
『推薦状』と書き出しにあるその書状は、ベルサがローレンスとルーナの身元を保証し、その者らの活動に最大限配慮を求めると書かれていた。
「これでも街道の宿場を守る私はこの街道沿いじゃそれなりに知られているからね。困ったらこれを出せば大抵の事はなんとかなる。気をつけておいき。」
「ありがとうございます」
ローレンスはお礼を言うと出発した。
それからシアルへの道のりでベルサの書状は大いに役立った。
魔獣の活動が活発になったせいで街道では随所に検問があり、行商人や荷馬車以外の一般人は冒険者であれ移動目的など詳細に調べが入り通り抜けるのにかなりの時間を要する状況になっていたが、書状を見せるとほぼフリーパスだった。
(ルーナさんの倒した魔獣をひたすら回収するだけのお仕事は相変わらずだったが…)
シアルに近い森の中にあるソヤークの村に着くと特産である薬草とそれを加工したポーション類の店が建ち並び、所狭しと色んな色のポーションが並んでいた。
「うおおおおおおおおお!」
ローレンスはテンションMAXだった。
「やっぱり製作系のスキルは男のロマンなんですよ!これまで収拾してきた薬草たちがようやく日の目を見る時が来ました!」
「あー…道草食ってると思ったら本当に草取ってたのね…。」
ルーナは冷ややかな目でローレンスを見ると興味なさげに店の商品を見て回った。
どの店でもポーションは初級・中級・上級・最上級の4つのグレードがあったが、鑑定スキルでチェックしていくと最低限のクオリティはどの店もクリアーしているものの、『くすりのくすりや』というややふざけた看板を掲げた店のポーションは何故かずば抜けてクオリティが高かった。
「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」
「はーい!」
出てきたのはエルフのような女の子が白衣姿で裏からカウンターに出てきた。
「えっと…あの、結婚して下さい!!」
「はぁ……?冷やかしですか?」
「あ、あぁ…違うんですあまりにおキレイなので思わず心の声が漏れてしまいまして」
「ウフフ、おかしな方ですね。ところでなにかご用ですか?」
「はい、このポーションはあなたが作っているのですか?」
「いいえ、私は店番兼製作のお手伝いをしているレミルと申します。製作はおばあちゃんなんです。」
「なるほど。出来ればお会いしたいのですが。」
「分かりました。お待ち下さいね。」
「お待たせしました。おばあちゃんです。」
ローレンスは顔を見た瞬間、腰が抜けそうになった。
「って!!おい、クソババア!なんでこんなとこに居るんだよ!」
「うるさいね。クソガキが。アンタこそなんでこんなとこに居るんだい。」
お互いに口汚い言葉を吐き出すとローレンスはカウンターを乗り越えてレミルのおばあちゃんを抱きしめた。
「レンダルばあちゃん…ずっと会いたかった。理由も告げずに急に居なくなったから…」
「よしよし、ローレンス。アンタは変わらないねぇ。家の事情だったから急に居なくなって悪かったよ。」
突然目の前で始まった光景にレミルは何がなんだか分からずただ立ち尽くしていた。
レンダルはレミルに早めの店じまいをさせるとルーナも合流してローレンスを家に招いた。
「あの時は悪かったねぇ。王都の大学で薬学を教えつつローレンスの家庭教師をしていたのよ。だけどレミルの両親が天気の悪い中で急ぎの納品だからって馬車で出掛けたら事故に遭ってしまってね。親を失ったレミルの面倒を見るために何もかもそのままで急ぎここへ戻って来たの。」
「そうだったんですか…僕はあれからポーション作りからは離れいたんですけどソヤークに来たらやっぱり思い出してしまって。それでやたら品質の高いポーションがあると思って聞いてみたらまさかレンダル先生にお会い出来るとはまるで夢のようです。出来たらレシピを僕に教えてくれませんか?」
「昔も口酸っぱく言ったけれどレシピは基本レシピを使いなさいな。基本も出来ずに先へ進むことなど出来ないことは充分に理解しているでしょう?特級魔法使いになる道のりを歩んできたのだから。」
「そういえばそうでした。あの頃のレンダル先生の言葉が蘇ってきました。」
「ところで、あなた達に頼みがあるのよ。シアルの方から流れてきたと思うのだけれどソヤークの森にブラッディウルフの群れとオーガが住み着いてしまったの。今はまだ在庫で賄ってはいるけれどいずれ材料の枯渇は目に見えているから安全に薬草が摘めるようにどうか退治してくれないかい?」
「もちろん任せて下さい!」
「助かるよ。森の案内はレミルに行かせるからよろしく頼むよ。レミル、いいかい?」
「分かりました。」
「あとそちらのお嬢さんにはもう充分キレイだから不要かもしれんが私の特製美容ポーションを準備しておくさね。」
「そんなポーションが!?任せて下さい!ついでに私も弟子にして下さい!!!」
「ところであなたはロペスさんの縁者の方かしらね。」
「そうです!フェルナンドの娘、ルーナです。もしかしたら大学で父がお世話になっていたかもしれません。」
「やっぱり。その美しい銀髪は美しきロペス家の伝統の1つだものね。フェルナンドも元気かしら。」
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