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ローレンスが倒れてから1週間が過ぎていた。
「まーだ寝てるわよあの子」
「マナを完全に失うと、大地からごく僅かに放出されるマナを身体が自然と吸収して身体に最低限のマナを貯めないと人体というものは活動休止状態になってしまいますからね。仕方がないです」
「それじゃ今日も師匠の業を盗みに行きましょっか」
「ルーナさんはずっとそれですね笑」
「美容ポーションなんて王都でさえ見たことがないもの。売り出したらきっと貴族のご婦人方が殺到間違いなしよ」
こんな時でもルーナのガメつさは健在だ。
「ところでレミルちゃんはずっとおばあちゃんと過ごしていくの?」
「そう…ですね。私はここでの暮らししか知りませんし、お店もあってここ以外での暮らしは考えられないです。おばあちゃんも1人では心配ですから」
「それもそっかぁ。私は神級魔法使いを目指してるんだけどね、レミルちゃんたちの暮らしも良いかなって思えて来ちゃったんだ」
「そうですか?私たちは大地の恵によって生かされているようなものですから王都のように何でも揃っている生活のほうが魅力的に感じてしまいます。ところでルーナさんはどうして神級魔法使いを目指そうと思ったんですか?確かこの国にはルーナさんのお父さましか神級魔法使いはいないですよね」
「となりの芝生は青い的にないものねだりなのかな。うーん…私はね、お母さんを小さい頃に亡くしているの。大体は魔法使いってね、その家系というか血で能力が大体決まるものらしいのよ。それでうちは一人娘でお母さんも居ないから他に兄弟が出来るようなこともないでしょ?それで父と2人で暮らしてきて、そんな父1人で育ててくれた父に恩返し出来るのが父と同じ神級魔法使いになることだと思ってって言うのが一番の理由かな」
「とっても素敵です!私はおばあちゃんのように高い品質のポーションを生み出すことは出来なくて、才能がないんですかね。だからこそしっかりと定められた道を守っていこうと頑張るルーナさんを私も心から応援させて欲しいです」
「ありがとう。でもレミルちゃんだってポーションは作れなくても剣技に精霊魔法に私もビックリするほど出来ることもあるじゃない。ローレンスみたいなポンコツは血迷って森を破壊しだすし、レミルちゃんと旅が出来たらどんなに私の気苦労も減るかと思うと…」
「またまた、ローレンスさまはそもそも王子さまじゃないですか。その将来は私たちの国を背負って頂くのですからそんな言い方はあんまりですよ」
「いいのいいの、事実なんだから。ローレンスが即位したらいつまで国が残るかも分からないし、移住先を見つけておいたほうがいいかもしれないわ。おまけに変態だから襲われないようにレミルちゃんも気を付けてね?」
「アハハ、ルーナさんとローレンスさまは本当に仲が良いんですね。羨ましいです。この村の若者はみんな王都に行ってしまってお二人のように親しい人が身近に居てくれるのは本当に羨ましいですから」
2人が談笑していると、緊急事態を知らせる鐘が打ち鳴らされた。
「どうしたの?」
「緊急事態を知らせる鐘です。ちょっと出てみましょう」
村の中心にある広場に駆けていくと大きな傷を負った兵士が倒れていた。
その光景を見たルーナはすぐさま駆け寄るとヒールをかけた。
「何があったの?私は特級魔法使いのルーナよ。状況を説明して。」
「ありがとうございます。私はシエルの街を守る衛兵です。突如多くの魔獣がリベイル川を越えてシエルの街に押し寄せて来ました。私はこの事態を伝えるべく王都に向かっていたのですが途中で不意に魔獣に襲われ傷を負ってしまったのです。私の知る限り、マンサル王国の方角からも煙が上がっていたので被害が出ていると思われます。」
「分かったわ。あなたはこのまま馬で王都に向かって報告をお願いするわね。まずは私が先行してシエルの救出に向かうわ」
「承知しました。」
「ところで魔獣は何が居たか分かる?」
「見たこともない数のジャイアントアントが地面を埋め尽くし、金色の光を放つ巨大な蟻のような魔獣も見えましたので、もしかするとクイーンアントだったのかもしれません。」
「ありがとう。これは厄介ね…ひとまずあなたは急ぎ向かってちょうだい」
「レミルちゃん、一緒に来てもらっても良いかしら」
「もちろんです。ローレンスさまはどうしましょう。」
「あれはとりあえず馬にくくりつけて向かいましょうか。さすがにそろそろ目を覚ます頃合いでしょ?」
「そう…ですね。ポーションもおばあちゃんに用意してもらってきます。」
「じゃあ私は準備をしているから。」
ルーナはローレンスの眠っているベッドに近寄ると、力いっぱい頬を叩いた。
「起きなさい!ローレンス!シエルの街が大変なの」
「…。」
「ローレンス!あなたはこの国を守るのが仕事でしょう?起きなさい!」
「…。」
「おら、このポンコツ!起きろ!!」
「…。」
「ローレンス?ほら、あなたが大好きなおっぱいよ?」
「おっぱい!?!?」
「マジでコロス。こいつ絶対コロス…」
「えっ?あれ…?ルーナさん……?」
ルーナは激しく後悔していた。
ローレンスを頼ろうと思った自分に。
「ローレンスさまは目を覚ましたのですか?」
「そうみたいね…ビックリするくらい下衆な言葉にはしっかり反応して起きたわよ」
「???」
レミルは意味が分からなかったが、ルーナの最上級に怒りを堪えている様子と、ようやく目を覚ましたローレンスが馬にくくりつけられている様子を見ると何も聞けなかった。
「レミルちゃん、準備はいい?」
「はい、ポーションはお店にあるだけ全てもらってきました」
するとルーナは馬を全力で走らせシエルを目指した。
森を抜けると草原に出て視界が開けると遠くにシエルの街が見えた。
「ルーナさん、この辺りにもジャイアントアントが来ています」
「まずはシエルの街にたどり着くことが最優先で行くわよ。」
「はい!」
「分かりました」
「私は進路を切り開く為に前方を優先して殲滅するわ」
「では僕は左右を叩きますので、レミルさんは撃ち漏らした敵をお願いします」
「分かりました」
ルーナとローレンスは範囲魔法でひたすら湧き出るジャイアントアントを叩き、シエルの街に近付くと国境の重要都市として外壁がしっかりと巡らせてあるお陰でなんとか耐えている様だった。
「ローレンス、あそこ!」
ルーナに言われた先を見ると南門が破られている。
必死に応戦しているようだが、なにせ敵の数が多すぎる。
「ルーナさん、南門の方に周りましょう!」
ルーナは進路を南門方向に取ると、全速力で敵の中を突っ込んだ。
「もうちょっとです!」
ローレンスはルーナに言うともはや積み重なるように蠢くジャイアントアントにメテオを撃ち込んだ。
天から降りしその隕石は、雨の様に地面に降り注ぐと轟音をたてて無数のジャイアントアントを巻き込んで爆ぜた。
「ひぃ…ルーナさん…あちこちにクレーターできちゃってますよ!」
「うるさい!それどころじゃないでしょ!それよりあんたは早く自分のやることをやって!」
「アイアンウォール」
ローレンスが詠唱すると、破られた門を塞ぐように鉄壁が現れた。
「やった!」と、思ったのも束の間、街に向かっていたジャイアントアントは一斉にローレンスたちにその矛先を向けた。
「レミルさん、ここからなら外壁を登れそうですか?」
「なんとか…ギリギリ行けると思います。」
「分かりました!外壁までルートを作るので街の負傷者のケアをお願いします」
「アイスウォール」
氷の壁が道のように外壁の上まで続いてジャイアントアントを跳ね除けるとレミルはウインドウォーカーで瞬く間に街にたどり着いた。
「さて…このジャイアントアントはいくら倒しても数が減りません。やっぱりクイーンアントがどこかに居るはずなので、それを叩かないと終わりません。」
「そうね。じゃあ二手に別れるわよ。見つけたら合図をちょうだい!」
「はい!ルートさん、気を付けて下さいね」
「もちろんよ。ローレンスとは違うから」
二手に別れると、ローレンスは西側の川の方へ、ルーナは街を東側から回り込んで北側へ馬を走らせた。
ローレンスは川に近づくほどにジャイアントアントの数が増えるのを感じた。
「この先に…居る。」
3重詠唱の範囲魔法でもそのおびただしい数に歩みが遅くなってくるとジャイアントアントの出す蟻酸の攻撃が直接当たらずも馬を蝕んだ。
「ヒール」
なんとかヒールでしのぎつつもオーバーバッファフローのように押し寄せるジャイアントアントに押されつつあった。
ひとまず少し距離を取って前進よりも確実に仕留めていく事にシフトチェンジして片付くのを待った。
しかし、一向に向かってくるジャイアントアントが途切れることはなくローレンスが片付けているのと同程度が延々と生み出されていることになる。
ローレンスはそれで確信して空に向かってライトニングを打ち上げると空で眩い光を放った。
「ルーナさん…気付いてくれ…!」
この数にひたすら撃ち続けるしかない状況にレミルさんにもらったマナポーションも少なくなってきた。
「ローレンス!どきなさい!」
するとローレンスの間近にメテオが降り注ぐ。
「ルーナさん!殺す気ですか!」
「だからどきなさいって言ったでしょ?この前のトラウマなのかしょっぼい魔法で押されちゃって情けない。」
「最上位魔法を使うなって言ったんじゃないのよ。時と場合で何を使うかちゃんと考えて撃ちなさいって言ってんの!お分かり?」
「は、はい!」
「あそこの窪みを見て。あそこから湧き出してるみたい!一気に叩くわよ」
2人は同時に最大の魔力を込めて、最大火力の範囲魔法であるメテオを3重詠唱で唱えるとジャイアントアントの出現域めがけて撃ち込んだ。
轟音と土煙でしばらく視界が閉ざされていたが、しばらくするとその出現域であった中心には金色に輝くジャイアントアントの十倍程度はありそうな大きさの羽蟻が鎮座していた。
「あれは…クイーンアントよ。」
「あれだけの攻撃を食らってもあまりダメージを負っていない感じです」
「クイーンアントはね、金属のように硬い表皮に覆われているの。だから攻撃がすこぶる通じにくいのよ」
「金属ですか…厄介ですね。とりあえず少し近付いてみましょう」
近付くと余計にその大きさのにおののいた。
「やはり…ダメージはほとんどなさそうです。」
「でもこれをなんとかしないと無限にジャイアントアントを生み出して収拾がつかなくなるわよ」
「そうなんですよね…んー……そうだ。ジャイアントアントのドロップから蟻酸を集めて下さい!」
「蟻酸?そんなのどうするのよ」
「いいから!時間が無いので急いで!」
メテオのおかげでガラス化した砂を集めて魔法で高温にすると即席の巨大な器を作ると蟻酸を投入して濃縮した。
「ルーナさん!準備が出来たのでジャイアントアントを蹴散らして下さい!」
「まったく…ローレンスも偉くなったものね。人使いが荒いじゃない」
そんなルーナを受け流すとローレンスはウインドを器用に操って器から液体を巻き上げて一直線にクイーンアントをめがけて液体を降り注がせた。
卵の孵化に集中して微動だにしなかったクイーンアントがその液体を掛けられた瞬間、悲鳴のような鳴き声を上げてのたうち回った。
「思った通り!ルーナさん、トドメを刺しましょう」
「任せて!」
表皮が腐食して脆くなったところにルーナはドラゴンフレイムで焼き払うとトドメに脳天をアイスランスで貫いた。
「さすが!ルーナさん」
「いいからクイーンアントだけ回収したら街に向かうわよ」
「はっ、はい!」
「まーだ寝てるわよあの子」
「マナを完全に失うと、大地からごく僅かに放出されるマナを身体が自然と吸収して身体に最低限のマナを貯めないと人体というものは活動休止状態になってしまいますからね。仕方がないです」
「それじゃ今日も師匠の業を盗みに行きましょっか」
「ルーナさんはずっとそれですね笑」
「美容ポーションなんて王都でさえ見たことがないもの。売り出したらきっと貴族のご婦人方が殺到間違いなしよ」
こんな時でもルーナのガメつさは健在だ。
「ところでレミルちゃんはずっとおばあちゃんと過ごしていくの?」
「そう…ですね。私はここでの暮らししか知りませんし、お店もあってここ以外での暮らしは考えられないです。おばあちゃんも1人では心配ですから」
「それもそっかぁ。私は神級魔法使いを目指してるんだけどね、レミルちゃんたちの暮らしも良いかなって思えて来ちゃったんだ」
「そうですか?私たちは大地の恵によって生かされているようなものですから王都のように何でも揃っている生活のほうが魅力的に感じてしまいます。ところでルーナさんはどうして神級魔法使いを目指そうと思ったんですか?確かこの国にはルーナさんのお父さましか神級魔法使いはいないですよね」
「となりの芝生は青い的にないものねだりなのかな。うーん…私はね、お母さんを小さい頃に亡くしているの。大体は魔法使いってね、その家系というか血で能力が大体決まるものらしいのよ。それでうちは一人娘でお母さんも居ないから他に兄弟が出来るようなこともないでしょ?それで父と2人で暮らしてきて、そんな父1人で育ててくれた父に恩返し出来るのが父と同じ神級魔法使いになることだと思ってって言うのが一番の理由かな」
「とっても素敵です!私はおばあちゃんのように高い品質のポーションを生み出すことは出来なくて、才能がないんですかね。だからこそしっかりと定められた道を守っていこうと頑張るルーナさんを私も心から応援させて欲しいです」
「ありがとう。でもレミルちゃんだってポーションは作れなくても剣技に精霊魔法に私もビックリするほど出来ることもあるじゃない。ローレンスみたいなポンコツは血迷って森を破壊しだすし、レミルちゃんと旅が出来たらどんなに私の気苦労も減るかと思うと…」
「またまた、ローレンスさまはそもそも王子さまじゃないですか。その将来は私たちの国を背負って頂くのですからそんな言い方はあんまりですよ」
「いいのいいの、事実なんだから。ローレンスが即位したらいつまで国が残るかも分からないし、移住先を見つけておいたほうがいいかもしれないわ。おまけに変態だから襲われないようにレミルちゃんも気を付けてね?」
「アハハ、ルーナさんとローレンスさまは本当に仲が良いんですね。羨ましいです。この村の若者はみんな王都に行ってしまってお二人のように親しい人が身近に居てくれるのは本当に羨ましいですから」
2人が談笑していると、緊急事態を知らせる鐘が打ち鳴らされた。
「どうしたの?」
「緊急事態を知らせる鐘です。ちょっと出てみましょう」
村の中心にある広場に駆けていくと大きな傷を負った兵士が倒れていた。
その光景を見たルーナはすぐさま駆け寄るとヒールをかけた。
「何があったの?私は特級魔法使いのルーナよ。状況を説明して。」
「ありがとうございます。私はシエルの街を守る衛兵です。突如多くの魔獣がリベイル川を越えてシエルの街に押し寄せて来ました。私はこの事態を伝えるべく王都に向かっていたのですが途中で不意に魔獣に襲われ傷を負ってしまったのです。私の知る限り、マンサル王国の方角からも煙が上がっていたので被害が出ていると思われます。」
「分かったわ。あなたはこのまま馬で王都に向かって報告をお願いするわね。まずは私が先行してシエルの救出に向かうわ」
「承知しました。」
「ところで魔獣は何が居たか分かる?」
「見たこともない数のジャイアントアントが地面を埋め尽くし、金色の光を放つ巨大な蟻のような魔獣も見えましたので、もしかするとクイーンアントだったのかもしれません。」
「ありがとう。これは厄介ね…ひとまずあなたは急ぎ向かってちょうだい」
「レミルちゃん、一緒に来てもらっても良いかしら」
「もちろんです。ローレンスさまはどうしましょう。」
「あれはとりあえず馬にくくりつけて向かいましょうか。さすがにそろそろ目を覚ます頃合いでしょ?」
「そう…ですね。ポーションもおばあちゃんに用意してもらってきます。」
「じゃあ私は準備をしているから。」
ルーナはローレンスの眠っているベッドに近寄ると、力いっぱい頬を叩いた。
「起きなさい!ローレンス!シエルの街が大変なの」
「…。」
「ローレンス!あなたはこの国を守るのが仕事でしょう?起きなさい!」
「…。」
「おら、このポンコツ!起きろ!!」
「…。」
「ローレンス?ほら、あなたが大好きなおっぱいよ?」
「おっぱい!?!?」
「マジでコロス。こいつ絶対コロス…」
「えっ?あれ…?ルーナさん……?」
ルーナは激しく後悔していた。
ローレンスを頼ろうと思った自分に。
「ローレンスさまは目を覚ましたのですか?」
「そうみたいね…ビックリするくらい下衆な言葉にはしっかり反応して起きたわよ」
「???」
レミルは意味が分からなかったが、ルーナの最上級に怒りを堪えている様子と、ようやく目を覚ましたローレンスが馬にくくりつけられている様子を見ると何も聞けなかった。
「レミルちゃん、準備はいい?」
「はい、ポーションはお店にあるだけ全てもらってきました」
するとルーナは馬を全力で走らせシエルを目指した。
森を抜けると草原に出て視界が開けると遠くにシエルの街が見えた。
「ルーナさん、この辺りにもジャイアントアントが来ています」
「まずはシエルの街にたどり着くことが最優先で行くわよ。」
「はい!」
「分かりました」
「私は進路を切り開く為に前方を優先して殲滅するわ」
「では僕は左右を叩きますので、レミルさんは撃ち漏らした敵をお願いします」
「分かりました」
ルーナとローレンスは範囲魔法でひたすら湧き出るジャイアントアントを叩き、シエルの街に近付くと国境の重要都市として外壁がしっかりと巡らせてあるお陰でなんとか耐えている様だった。
「ローレンス、あそこ!」
ルーナに言われた先を見ると南門が破られている。
必死に応戦しているようだが、なにせ敵の数が多すぎる。
「ルーナさん、南門の方に周りましょう!」
ルーナは進路を南門方向に取ると、全速力で敵の中を突っ込んだ。
「もうちょっとです!」
ローレンスはルーナに言うともはや積み重なるように蠢くジャイアントアントにメテオを撃ち込んだ。
天から降りしその隕石は、雨の様に地面に降り注ぐと轟音をたてて無数のジャイアントアントを巻き込んで爆ぜた。
「ひぃ…ルーナさん…あちこちにクレーターできちゃってますよ!」
「うるさい!それどころじゃないでしょ!それよりあんたは早く自分のやることをやって!」
「アイアンウォール」
ローレンスが詠唱すると、破られた門を塞ぐように鉄壁が現れた。
「やった!」と、思ったのも束の間、街に向かっていたジャイアントアントは一斉にローレンスたちにその矛先を向けた。
「レミルさん、ここからなら外壁を登れそうですか?」
「なんとか…ギリギリ行けると思います。」
「分かりました!外壁までルートを作るので街の負傷者のケアをお願いします」
「アイスウォール」
氷の壁が道のように外壁の上まで続いてジャイアントアントを跳ね除けるとレミルはウインドウォーカーで瞬く間に街にたどり着いた。
「さて…このジャイアントアントはいくら倒しても数が減りません。やっぱりクイーンアントがどこかに居るはずなので、それを叩かないと終わりません。」
「そうね。じゃあ二手に別れるわよ。見つけたら合図をちょうだい!」
「はい!ルートさん、気を付けて下さいね」
「もちろんよ。ローレンスとは違うから」
二手に別れると、ローレンスは西側の川の方へ、ルーナは街を東側から回り込んで北側へ馬を走らせた。
ローレンスは川に近づくほどにジャイアントアントの数が増えるのを感じた。
「この先に…居る。」
3重詠唱の範囲魔法でもそのおびただしい数に歩みが遅くなってくるとジャイアントアントの出す蟻酸の攻撃が直接当たらずも馬を蝕んだ。
「ヒール」
なんとかヒールでしのぎつつもオーバーバッファフローのように押し寄せるジャイアントアントに押されつつあった。
ひとまず少し距離を取って前進よりも確実に仕留めていく事にシフトチェンジして片付くのを待った。
しかし、一向に向かってくるジャイアントアントが途切れることはなくローレンスが片付けているのと同程度が延々と生み出されていることになる。
ローレンスはそれで確信して空に向かってライトニングを打ち上げると空で眩い光を放った。
「ルーナさん…気付いてくれ…!」
この数にひたすら撃ち続けるしかない状況にレミルさんにもらったマナポーションも少なくなってきた。
「ローレンス!どきなさい!」
するとローレンスの間近にメテオが降り注ぐ。
「ルーナさん!殺す気ですか!」
「だからどきなさいって言ったでしょ?この前のトラウマなのかしょっぼい魔法で押されちゃって情けない。」
「最上位魔法を使うなって言ったんじゃないのよ。時と場合で何を使うかちゃんと考えて撃ちなさいって言ってんの!お分かり?」
「は、はい!」
「あそこの窪みを見て。あそこから湧き出してるみたい!一気に叩くわよ」
2人は同時に最大の魔力を込めて、最大火力の範囲魔法であるメテオを3重詠唱で唱えるとジャイアントアントの出現域めがけて撃ち込んだ。
轟音と土煙でしばらく視界が閉ざされていたが、しばらくするとその出現域であった中心には金色に輝くジャイアントアントの十倍程度はありそうな大きさの羽蟻が鎮座していた。
「あれは…クイーンアントよ。」
「あれだけの攻撃を食らってもあまりダメージを負っていない感じです」
「クイーンアントはね、金属のように硬い表皮に覆われているの。だから攻撃がすこぶる通じにくいのよ」
「金属ですか…厄介ですね。とりあえず少し近付いてみましょう」
近付くと余計にその大きさのにおののいた。
「やはり…ダメージはほとんどなさそうです。」
「でもこれをなんとかしないと無限にジャイアントアントを生み出して収拾がつかなくなるわよ」
「そうなんですよね…んー……そうだ。ジャイアントアントのドロップから蟻酸を集めて下さい!」
「蟻酸?そんなのどうするのよ」
「いいから!時間が無いので急いで!」
メテオのおかげでガラス化した砂を集めて魔法で高温にすると即席の巨大な器を作ると蟻酸を投入して濃縮した。
「ルーナさん!準備が出来たのでジャイアントアントを蹴散らして下さい!」
「まったく…ローレンスも偉くなったものね。人使いが荒いじゃない」
そんなルーナを受け流すとローレンスはウインドを器用に操って器から液体を巻き上げて一直線にクイーンアントをめがけて液体を降り注がせた。
卵の孵化に集中して微動だにしなかったクイーンアントがその液体を掛けられた瞬間、悲鳴のような鳴き声を上げてのたうち回った。
「思った通り!ルーナさん、トドメを刺しましょう」
「任せて!」
表皮が腐食して脆くなったところにルーナはドラゴンフレイムで焼き払うとトドメに脳天をアイスランスで貫いた。
「さすが!ルーナさん」
「いいからクイーンアントだけ回収したら街に向かうわよ」
「はっ、はい!」
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