大陸を散策する聖女と滅ぶ王国~婚約破棄は引き金~

鷲原ほの

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本編

17. 発見できるはずなのです!

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 愚かな弟セビルンドなど相手にならず、平凡な父親こくおうなんかより自分が最高権力者に適していると信じて疑いすらしていないのだから。

(クソッタレ! 俺様を怒鳴ったところで意味はないだろ!)

 当然、解決策を思い付いているわけでもないのにと、上から怒鳴られた苛立ちだけが浮かぶ。
 ちなみに、聖女という存在の重要性は並外れた治療の貢献だけではない。
 一般的な女神像の輝きすら、聖女の魔力は魔物の活性を抑える退魔の結界となり、国家の運営に大きすぎる影響を及ぼす。その効果次第では、兵力の割り振りを改めなければならないほど重要だ。
 その時代に聖女という存在がいるかいないか、それだけでどれほどの大国だとしても大きく浮き沈みしてきた過去がある。
 ちなみに因みに、好き勝手に喚くだけのサイバードは、王子として学んでおくべき指揮系統すら理解できていない。聖女を捜せと命令を出しておけば、そのうち上手い具合に見付かると思い込んでいたくらいなのだ。
 分からないことが分からないような状態でしかないのである。

「婚約の目的、その最大の狙いは、国家運営を左右しかねない聖女を抱え込んで我が神聖王国に留まらせるためだ」

 王族や爵位持ちだけではなく、王宮に長く勤めている貴族出身の近衛兵や行政官には、公然の秘密として浸透している。無茶振りを続けていても、逃げられないようにするための隷属だ。
 自分の損害とならないのだから、無駄に口を出そうとする者も現れなかった。長く消えなかった仕来りが、そういうものだと受け入れる者を増やしていった。
 一部が言い始めた、聖女とは私欲を捨て去り奉仕したい変わり者だという認識まで否定されることもなくなった。

「お前が好む令嬢がおるのであれば、聖女を正妃としたあと、その令嬢を王妃として迎え入れ子を成せばよかったのだ。我が王家は代々、そうやって血筋を繋いできたのだからな」
「付け加えますなら、過去に聖女から正妃となられた女性との間に、跡継ぎは産まれておりません。昔々、神聖王国が興った頃ならば人気取りという一面が強くなかったとは申しませんが、国家の繁栄にもっとも適した道が選ばれてきたのでございます」

 そうしている方が都合は良かったのだから。歴代の教皇が干渉してこなかったという事実があるのだから。
 人気取り以上に、自分勝手な都合を押し付けていることを本当に分かっているのかいないのか。それでも、国家の運営とは、当たり前に教え込まれた彼等にとってそういうものになったのだ。
 ちなみに、神聖王国の歴史には正妃の産んだ女児が一人だけ記録されている。
 だが、跡継ぎとなる王子が記録されたことはない。このことが記録されていないだけなのかどうか、さすがの宰相でも王家の闇に踏み込んで調べようとはしていない。

「この際、はっきり教えておいてやろう。お前が身勝手に破棄した婚約は、ただお前と結婚するための約束などではなく、国益のために奉仕させる隷属の契約を結んだ要の部分を担っていた。聖女がいなくなった責任は、これから起こるであろう不都合は全てお前の愚行の結果だと思え、分かったな」
「…………」

 頷いたかのように見えるギリギリの速度でサイバードは頭を垂れた。
 しかし、胸中では納得などしていない。
 大事なことを教えていなかったお前達が悪いのではないかと、国王や宰相の失態だと理不尽さで満たされている。
 跡継ぎに据えることなどできないと見捨てられそうになっているなんて、遠回しに言い過ぎていて伝わっていない様子である。自分が国王となれば、必ず仕返しをしてやると足元を睨んでいるのだから。

「ガルリゲスよ、現状の報告を続けてくれ。手掛かりなどは見付かっておるのか?」

 切り替えるように頭を振って、表情を引き締めた国王は報告書に目を落とす。

「いいえ、現状では上手く運んでいるとは言えませぬ。王都から城門を抜けた痕跡がないことから、王都におります騎士達は殿下の指示により王都の捜索を続けておりますが――」
「なんだ、馬鹿をやらかしたサイバードが勝手に指揮をしておるのか?」

 どこか淡々と告げる宰相に、呆れたようにサイアントは背もたれに寄り掛かった。

「俺様が指揮していて見付かっていないのは、間違いなく逃亡を助ける組織があるからに違いありません」

 ここまで至ってなお、自分の落ち度などないと解釈するサイバードがすんなりと顔を上げて吠える。

「しかし、厳重な王都より逃げられるはずがないことから、もっと大掛かりに捜索すれば発見できるはずなのです!」

 優秀な自分ではなく、結局は部下が頼りにならないことが原因なのだと、自信満々に言い繕う言葉に淀みなどない。

「……ハァ。宰相として、同じような考えのまま動いておるのか?」

 大きな溜め息と共に、言外にもちろん違うよなと含めて、留守を任せていた相手に否定の言葉を求めた。
 段々、真面目に相手をしてやることも煩わしくなってきている様子で。

「犯罪組織などもそうですが、それ以上に他国の介入は考えにくいところです」

 王都広しとは言え、騎士団や警備兵の捜索で十分発見できる期間があったと王子の考えをやんわりと否定する。
 それに連れ去ったところで、設備が整っていなければ大規模な儀式は難しい。
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