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よろずや あやかし
しおりを挟む突然向けられた問いに、俺は即答することができなかった。
何故かというと、射抜くように俺を見る瞳が、俺の内側を洗いざらい映し出してしまうような透き通った物だったからだ。
先ほどまで猫又にカリカリ引っ掻かれていた人間とは思えないほど、聡く、清い存在であるように感じたのだ。
(あ、人間じゃなくて妖怪だったか)
あまりにも見た目が人間すぎて、どちらなのか一瞬判断に迷ってしまった。
俺を見透かすような黒の目を光らせていた店主は、数秒こちらを見つめた後に、深く溜息を吐いた。
「確かに、お前が何を考えてるかは手に取るように分かる。だが、依頼に来たのなら、自らの口で頼むのが筋ってもんだ」
店主は猫又を縁側にポイッと放り投げると、胡座をかいて肘をついた。猫又に対する扱いが、あまりに雑だ。
でも、店主の言うことは全くの正論だ。俺からきちんと話して……
(……って、今、俺の考えていることが分かるって言ったか?)
「おお、やはり人間といえど、吾輩たちを視る事ができるとなると、興味を惹かれる存在だったか。だが、無精者が一にも二にもなく依頼を聞こうとするなど、天変地異の前触れかにゃ? 」
猫又は店主の周りをグルグルと歩き回りながら、機嫌が良さそうに尻尾を揺らしている。
「あ、あの、俺の考えていることが分かるって……」
「ああ、人間。お前には分からんかもしれんが、コイツは神通力を持っていてな。思考を読むなんてことは容易い」
やっぱり、あの見透かされてしまうような不思議な空気感、それは間違いなく能力の所為だったんだ。
猫又は俺には分からないだろうと言っていたが、神通力で何かされているっていう雰囲気ぐらいは掴むことができそうだ。
「そうですよね、いきなりすみません。ここには依頼したいことがあって来ました……俺のこの“貴方達”を視る力、還すことは出来ませんか? 」
俺の発言に驚いた猫又が、噛み付かんという勢いで俺に抗議を示してきた。尻尾がバシッと当たる感覚がする。
「に"ゃ?!にゃ、にゃにを言っているんだ!普通の人間にはない、貴重な眼だぞ! それを還すなどと……はて、還すと言ったのか? 」
「そうです。俺のこの力、多分ですけど、誰かに与えられた力だと思うんです」
猫又は俺にバシバシと叩きつけていた尻尾を止めて、俺の話の続きを促した。俺はそこまでの身の上話をする予定ではなかったものの、可愛らしい猫又のお願いだと思うと、話さないという選択肢は無いも同然だった。
だってしょうがないじゃないか、俺は生粋の猫好きなんだ。
「2年ほど前に、道で怪我した烏を保護したんです。そしたら、そのタイミングから、突然貴方たちのような存在が視えるようになってしまったんです」
「吾輩と同様、獣に化ける妖怪もいることは確かだな。いいだろう、むしろ幸運ではないか。妖の世界に半歩足を踏み入れたんだ。常人ではなくなったという事だぞ」
「良くないですよ……そのせいで、人間社会に馴染めなくなってしまって、災難続きなんです。俺としてはすぐにでもこの力を無くしたいところです」
俺の答えがお気に召さなかったのか、猫又は不満げに喉を鳴らすと、また俺の足を尻尾で叩き出した。
地味に痛いから、やめて欲しいんだけどな。
そんなことを考えていると、押し黙っていった店主がゆっくりと口を開く。
「その願い、叶えよう」
「にゃ?!」「へ、出来るんですか?!」
「ここは“よろずや あやかし”。その手の願いで叶えられない物はない。……ただし、条件がある」
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