臨時バイト先は、“よろずや あやかし”?!

はちのす

文字の大きさ
3 / 10

よろずや あやかし

しおりを挟む

突然向けられた問いに、俺は即答することができなかった。
何故かというと、射抜くように俺を見る瞳が、俺の内側を洗いざらい映し出してしまうような透き通った物だったからだ。
先ほどまで猫又にカリカリ引っ掻かれていた人間とは思えないほど、聡く、清い存在であるように感じたのだ。

(あ、人間じゃなくて妖怪だったか)

あまりにも見た目が人間すぎて、どちらなのか一瞬判断に迷ってしまった。
俺を見透かすような黒の目を光らせていた店主は、数秒こちらを見つめた後に、深く溜息を吐いた。

「確かに、お前が何を考えてるかは手に取るように分かる。だが、依頼に来たのなら、自らの口で頼むのが筋ってもんだ」

 店主は猫又を縁側にポイッと放り投げると、胡座をかいて肘をついた。猫又に対する扱いが、あまりに雑だ。
 でも、店主の言うことは全くの正論だ。俺からきちんと話して……

(……って、今、俺の考えていることが分かるって言ったか?) 

「おお、やはり人間といえど、吾輩たちを視る事ができるとなると、興味を惹かれる存在だったか。だが、無精者が一にも二にもなく依頼を聞こうとするなど、天変地異の前触れかにゃ? 」

 猫又は店主の周りをグルグルと歩き回りながら、機嫌が良さそうに尻尾を揺らしている。

「あ、あの、俺の考えていることが分かるって……」

「ああ、人間。お前には分からんかもしれんが、コイツは神通力を持っていてな。思考を読むなんてことは容易い」

 やっぱり、あの見透かされてしまうような不思議な空気感、それは間違いなく能力の所為だったんだ。
 猫又は俺には分からないだろうと言っていたが、神通力で何かされているっていう雰囲気ぐらいは掴むことができそうだ。

「そうですよね、いきなりすみません。ここには依頼したいことがあって来ました……俺のこの“貴方達”を視る力、還すことは出来ませんか? 」

 俺の発言に驚いた猫又が、噛み付かんという勢いで俺に抗議を示してきた。尻尾がバシッと当たる感覚がする。

「に"ゃ?!にゃ、にゃにを言っているんだ!普通の人間にはない、貴重な眼だぞ! それを還すなどと……はて、還すと言ったのか? 」

「そうです。俺のこの力、多分ですけど、誰かに与えられた力だと思うんです」

 猫又は俺にバシバシと叩きつけていた尻尾を止めて、俺の話の続きを促した。俺はそこまでの身の上話をする予定ではなかったものの、可愛らしい猫又のお願いだと思うと、話さないという選択肢は無いも同然だった。
 だってしょうがないじゃないか、俺は生粋の猫好きなんだ。

「2年ほど前に、道で怪我した烏を保護したんです。そしたら、そのタイミングから、突然貴方たちのような存在が視えるようになってしまったんです」

「吾輩と同様、獣に化ける妖怪もいることは確かだな。いいだろう、むしろ幸運ではないか。妖の世界に半歩足を踏み入れたんだ。常人ではなくなったという事だぞ」

「良くないですよ……そのせいで、人間社会に馴染めなくなってしまって、災難続きなんです。俺としてはすぐにでもこの力を無くしたいところです」

俺の答えがお気に召さなかったのか、猫又は不満げに喉を鳴らすと、また俺の足を尻尾で叩き出した。
地味に痛いから、やめて欲しいんだけどな。
そんなことを考えていると、押し黙っていった店主がゆっくりと口を開く。

「その願い、叶えよう」

「にゃ?!」「へ、出来るんですか?!」

「ここは“よろずや あやかし”。その手の願いで叶えられない物はない。……ただし、条件がある」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...