残業リーマンの異世界休暇

はちのす

文字の大きさ
16 / 68
2章 新生活スタート

14 真の門番

しおりを挟む
【お知らせ】
念のため総攻めタグ追加しました。
モフってしかいないですが、今後のことも考え、念のためにつけました。

****


食堂であの視線を受けながら食事を終えた。

今回は誰からも話しかけられることはなかった。

それだけの事で、疲労が段違いだ。
昨日は本当に酷かったな…

遠い目をしながら歩みを進めていると、
目の前のマーナが立ち止まった。

あれ、ここは…



「門の前?」


「そうだ。昨日カンザキが素通りした門だ。」


「素通りって…いや、門番さんにきちんと声をかけなかったことは謝る。

けど、最初に通りかかった時はただ突っ立ってただけだったからさ。」


だってあの門番の彫像、明らかに置物ですって顔してたし。
まさか動き出すなんて思わなかったし…


「それは大した問題じゃあるまい。
そもそもカンザキをのが問題なんだ。」


ー 弾く…?


「ここの門は持たざる者はそもそも学院自体を見ることができないよう魔法がかけてある。
それを全く意に介さず侵入出来たんだ。大問題だろう。」

「剰え、ここの門番の意識すら掻い潜った。…そうだろ?


(いやだからそれは俺のせいじゃな…
え、グリフォン…?)


ー 彫像にそんな大仰な名前つける訳ない…よな?

俺の考えを裏付けるかのように、
大空から翼をはためかせ降りてくる存在を視界に捉えた。


「お陰で大目玉だよ。本当に君、いつ入ったんだい?」


あああ…このワシのような頭と翼、獅子の肢体を持つこの生き物…
中二図鑑で見たことがあるぞ…


「グリフォン…」


「うん、正解。やっぱり知ってたんだ。僕が張ってたこと。」


(いや知らないってば!!)


緊張から、その反論は口の中で反芻されただけだった。

これは規格外の生物が出てきてしまったぞ…
助けを求めてチラリとマーナを見遣ると、爆笑の態勢に入っていた。
何故に。


「こいつにどうやって入った?と聞いたらな、入れたから入ったと…!ククク…ハハハ」


「なっ…!許可した覚えはないんだけどなあ!」


こちらをキッと睨みつける。


(ヒィィイイ怖い怖い!マーナのやつ、わざと煽りやがったな…!)


「もっと言うと、招き入れられた、とも言っていたぞ…とんだ失態だなあ、グリフォン。」


ストォォップ!!
それ勘違いだから、やめてくれ!!!


グリフォンの圧力のせいでツッコミを入れることもままならない。


ー もしかして、今日が命日…?


心の中でドナドナしていると、
マーナが肩を組んできた。

え?どう言う展開?


「まあそういう事で、カンザキは私が守っている訳だ。手出しは不要だぞ?」


いやいや、流れが全然見えない。


「ふぅん、君、カンザキっていうんだ?
覚えたよ。マーナガルムが気に入るなんて相当だね。

…何したの?」



ピリピリとした静電気が身体に纏わり付く感覚がした。

なんだろう、と思っているうちにその感覚が霧散した。



「…ッ!へえ、面白い。」


「おい、手出しするなと先ほど言ったはずだが。」


「こんなん味見程度じゃん。ケチ。」


なになに?また俺のいないところで話が進んでる。


「ねぇ、カンザキ少年。なんで魔法が効かないの?君、魔力もないのに。」


(え、魔法が効かない…?)

どういう事だ…?魔力がないだけじゃなくて、俺自身に魔法が効かないのか…?


「おい、やめろ。大人しく巣に帰れ。」


「何だよ呼び出しといて…
そんなに大事なの?…へえ…」


グリフォンはこちらに向き直り
クリッとした目を細めた。

こちらもやはりいちいち動きが人間臭い。


「ね、僕とお話ししようよ。
なんとなく君をスルーしちゃったワケも分かったし。

今度は君と仲良くなりたいなあ…」


「あっ、オイ!待て!」


素早く嘴で摘み上げられ、背中に乗せられると、瞬く間に上空に引き上げられた。

必死にその羽毛にしがみつき、瞑った目を開いてみると
マーナは既に見えなくなっていた。


(し、死ぬ…)


命綱なしでこんな上空まで連れてこられてしまったら、残された選択肢は死のみだ。

サヨナラ世界…

そんな間抜けな考えをしているうちに、本館の最上階に到着した。


(ここ、校長室よりも上の階だ…屋上に近いな。)


「とうちゃーく!急にごめんね。こうでもしなきゃ、君と2人でお話できないと思って。」


「構わない(ですよ…)」


空中散歩の余波で、口はガタガタしており無論キチンとした発音など出来るはずもなかった。


「ありがとう!」


グリフォンは嘴を俺の頬に寄せてきた。
グリフォン式の謝意の表し方なのだろうか。

咄嗟に隣の家のタロ(柴犬)の頬擦りを思い出し、ノスタルジーに浸ってしまった。

タロ、元気でやってるかな…


無意識で、グリフォンの嘴に口付けし、頬の毛をモフ、と堪能する。

首元の毛を撫でつけて…


ー ハッ!!!!


何やってるんだ俺!!
今のは完全に変態の所業だ。
弁明できない。

ホラ!グリフォンも固まってるじゃん!!!

バカ…俺…


警察に捕まった際の弁明を考え始めていたら、グリフォンから蚊の鳴くような声がした。


「どうしよ、話そうとしてた事全部忘れちゃった…」


ああああごめんね…

さっきから思ってたけど、外見と話し方のギャップ凄くない…?

って、どうでも良いよね…本当にごめん…


「ごめん、つい、可愛くて。」


「可愛…っ?!」


(これはまた言葉選びをミスりましたね…!)


「…もっかい、撫でてくれる?」


キュルン、と目を潤ませてこちらを覗くグリフォン。

…こんなの、陥落しないわけがない。



フサ…

マーナの毛の触り心地とはまた違う、羽毛特有の柔らかさと軽さ。

今まで触った事がない、繊細な感触だ。

(確か鳥は、顔付近以外は接触NGだったはず。)


まず嘴の辺りの羽を解す。

グリフォンは撫でられて気持ち良さげに目を瞑っている。

そこからスルリと頬の少し奥に手を伸ばした。


「!そこ…ッ」


ー ここがお気に召したらしい


柔らかく撫でつけ、クリクリといじってやると喉を鳴らし始めた。

身体を預け、こちらに擦り寄ってくる。

首辺りまで手を下ろし、撫であげるとブルリと身体を震わせた。


「ん、…」


あ、この角度めっちゃ顔にモフモフが当たって気持ちいい。

グリフォンは嘴で首辺りを甘噛みしてきた。


「すごい…気持ち良すぎておかしくなりそう…」


(え、そんなかな…凄いな俺の手…)


もしやこれでマッサージ店でも開けるのでは…?

ぼへっとそんな事を考えていると、
グリフォンが人型になっていた。

え、いつの間に??


「聖獣の姿の時は羽とか触られたくないんだけど、人型なら大丈夫なんだ!
ね、撫でてよ。」


緩くウェーブした金の髪の毛をウルフカットにしている20代後半の男性だ。

現代風にいうとチャラい。

喋り方で言うと、さっきのグリフォンの姿より、むしろこっちの方がマッチしているかもしれない。


「どこを撫でればいいんですか?」


「えっとそうだな…頭と首!あと羽の生えてる肩甲骨あたり!」


(注文が嫌に明確だな。)

もしかすると聖獣って皆面倒臭いタイプなのか…?

失礼な事を考えつつ、オーダー通りのモフモフを開始する。


重たい前髪を掻き上げるようにして、巻き込みながらサラリと指を通す。

その間に頬を撫でるのも忘れずに。


「クルル…」


おっ、ちゃんと鳥っぽいぞ。
マーナの時もそうだったけど、やっぱり鳴き声は変わらないのか。

顎を持ち上げ、喉を擽り、撫で付ける。

ピクピクと反応しながら大人しく撫でられている様を見ると、ちょっと悪戯したくなってきてしまった。

ごめんな、グリフォン。

羽を避けて肩甲骨の辺りを揉み解すついでに、背筋をツツーっとなぞってみた。


「ひぁ!」


短い鳴き声を上げながらビクリと反応する。

お、好感触。


「も、もう…恥ずかしいよ…」


顔を赤くしながら少しモゾモゾし始めた様子を見て、
なんかいけない事をした気分になってしまった。


「はい、お終い。」


「ええー!もうちょっと撫でてよー!」


「約束があるので。また今度。」


時計は既に16時を指していた。
マーナを拾ってから校長室に行くから、時間がかかる。


「カンザキ!大丈夫か?」


息を切らせたマーナがズカズカと歩いてきて、張り付いていたグリフォンをベリっと剥がした。


「いたっ!何するのさ!」


「それはこちらのセリフだ。突然拐かしておいて何を言っている。」


「ぶー!独り占めは無しだよ!僕にも少年と遊ぶ権利はある!」


言い争いを辞めそうにないので、こちらから割って入ることにした。


「グリフォンさん、そろそろ約束の時間が…」


「あ、そうだったね。
今度からグリフって呼んで?その方がいい。」


「わかったよ、グリフ。じゃあまた。」


それが気に障ったのか、マーナが尻尾で叩いてきた。


「おい、カンザキ。誰彼構わず愛称で呼ぶな。私だけにしろ。」


「ぶー!独占反対!きっとカンザキ少年は博愛主義ですぅー!」


お、よくわかってるじゃん。

いや、そんなことはどうでもいい。

これじゃ埒があかないから、とマーナを引きずって校長室まで辿り着いた。

とにかく、時間間に合ってよかった…

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...