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2章 新生活スタート
60 別れ、決意
しおりを挟む準備するから出て行けと研究室から追い出された俺は、教室へ向かっていた。
皆、寂しがるだろうか。
(俺だって、仲良くなれた友人が数ヶ月留学します、と言ったら寂しくはあるが…でもまあ応援するかな。)
ただ、冒険というものが、安全な道のりになるとは言い難い。
それもあってか、みんな今生の別れの様に捉えるんだ。
「それに実際、学院に籍を置き続ける可能性も薄いし…」
「カンザキィ~!」
「どわっ!」
考えに耽っていた俺を背後からの衝撃が襲う。
なんだと振り返ると、グリムがガッチリと俺に抱きついていた。
「グリム?どうした」
「今日さぁ、ビビビッと来て!アイツらが何処かに旅立つだろうって予知があったの。もしかしてぇ、君関係?」
「…流石」
俺はグリムに向き直り、冒険へと発つことを伝えた。
「なるほど…戻り方を探すんだねぇ」
「それもある。けど、望み薄とは思ってるんだ。それよりも、この学院に囚われた2人を外に出してやりたいんだ」
「ふ~ん、いいなあ…ねぇ、それオレも連れてってよ」
「ん?何かやりたい事でもあるのか」
「うん。オレ…この目でしてきた事、今後していかなきゃ行けない事…それを確かめたいんだぁ」
グリムは俺の手を取ると、指と指を絡ませる様に握り込む。
「こうしてぇ、オレと手を繋いでくれる人がいれば…どんな過去も受け止められそうってこと!」
にっ!と笑って、改めて俺に真正面から抱きつく。
「それに、仇敵同士が同じパーティーメンバーって面白くな~い?」
「ふふ、そうやって言える所がグリムの強さだな」
「むふ~!あ、でもでも、あの秘密はずっと2人だけの秘密だからねぇ」
「あぁ、バレなきゃな」
「よぉし!グリムさん張り切ってカンザキの秘密を守りますっ!」
おー!と拳を突き上げて楽しげに笑うグリムに、元気を分けられた気がした。
…存外、皆に別れを伝えるのも堪えていたみたいだ。
「今は挨拶に回っている所なんだ。あとはクラスに行けば終わりだ」
「そっかぁ、じゃあ一緒に行くぅ」
ブンブン!と繋いだ手を前後に揺らしつつ、楽しげに隣を歩くグリム。
(パーティーの良いバランサーになりそうだな)
「…ということで、数ヶ月学院を離れる事になった。復学の予定は今のところ未定だ」
「ッ」
「そうかよ」
クラスの雰囲気は、いわば地獄の雰囲気だ。
部活から偶然戻ってきたユージンと、ザックに事情を聞かせた。
ユージンは泣きそうに顔を歪め、ザックは感情が昂って怒りに変換されているようだ。
「皆にはすまないと思ってはいるが、また会える日を楽しみにしている。仲良くしてくれて、ありがとう」
「で、俺はついていきまぁす!」
「こらグリム」
ここぞとばかりに腕に引っ付き、2人に対してマウントを取るグリムにデコピンをかます。
(尊い人なはずなのに、こんな扱いをして良いのかとは思っているが…)
「いててっ…んもう!愛が痛い~」
「はぁ」
「…俺は、行けねぇ。資格がなければ生活を立てられないからな」
先程までの怒りはグリムの行動によって鎮まったようで、今度は打って変わって得意げな表情になっていた。
「カンザキが戻ってくるまでに、剣技だけでなく魔獣の知識も優秀者になる。復学したら勝負だ」
「え、無理だ…絶対に負ける」
「最初から諦めるなよ!…時折はラビッツに、会いに来ねぇのか」
俺に向けられる視線は、言葉の表面だけの意味合いだけではなく、裏に潜むものを感じさせた。
「あぁ、近くに寄ったら会いに行くよ」
「…!ふん」
嬉しそうに顔を赤らめ、鼻を鳴らしたザックは席に引き返していった。
俺に会いに来い、と言わないあたりが素直じゃない。
「カンザキ…俺、俺」
「ユージン」
「…仕方ないから譲ってあげるぅ、ほら」
「わっ、」
グリムはユージンの腕を取ると、自分の位置と入れ替わらせた。
勢いのまま俺に抱きついてしまったユージンは、俺よりも体格がいいにも関わらず、シュンと萎んでしまう。
「俺…」
「何だ?」
「俺、皆みたいに、快く送り出せない…そんな自分が嫌だ」
「そうか」
今までも、駄々を捏ねるような態度を取ることがあったが、本当に拗ねていたとは。
手持ち無沙汰だった手で、少し高い位置にある頭を撫でる。
それに気付いたようで、俺の顔色を窺いながらも頭を擦り寄せてくる。
「それでも、俺も着いて行けない…どうしても、騎士団に入りたいんだ。」
「うん、前にも言ったけど、天職だと思う。応援してる」
「でも!カンザキとも離れたくない」
駄々っ子になってしまったユージンの頭を撫でながら、どうしたものかと思案した。
「近くに寄ったら会いに来るよ」
「本当に?」
「本当だ」
しばらくそうしていると、少し落ち着いたようで自ら身体を離した。
「ごめんな、ダサいところ見せた」
「いや、それだけ想ってくれて…俺としては嬉しいよ」
「…そういうところだぞ」
「?」
いじけたように俺から離れると、絶対会いに来いよ、と再度念押しされた。
「そうだ、連絡を取り合えるような魔具を探しにいかないか?すぐに出発すると言っても、数日はあるだろ?」
「そうだな、そうしよう。俺としても、皆とは連絡を取り合えると嬉しい」
「よっしゃ!じゃあ明日はちょうど試験休暇だからな。街へ出かけよう」
「…俺も行っていいか」
おずおずとザックが申し出てくる。
そんな怖がらずとも、断る訳なんてないのに。
「あぁ、みんなで行こう」
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