黒崎天斗!伝説へのプロローグ

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第43話

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まず他校の生徒らと天斗、剛、薫、そして青木達は天斗と薫の本拠地とも言えるライブハウスに移動した。

それぞれが大きな丸テーブルを囲み座った。

青木がしゃしゃり出てこの場を仕切り始めた。

「先ずはそれぞれ自己紹介しろよ!どこの何者かわからん事にはチームに加えてやることなんか出来ねぇからよ!」

この発言に天斗、剛がお互い目を丸くし顔を見合わた。

他校生達が

「だからお前は何なんだよ!三下!」

「先ずはオメェから自己紹介しろ!」

青木がその言葉にムキになって

「三下扱いしてんじゃねぇーよ!俺は黒崎の存在に影を潜めているがな、こう見えてもそこそこ名の通った青木って者だ!覚えておけ!」

「青木?誰だよそれ?聞いたことねぇな……」

「青木……いや、その名は聞いたことあるぞ……噂では自分より弱ぇ奴にはとことん強気に出るが、強ぇ奴には絶対逆らわない腑抜け野郎だってな……」

青木がその言葉に憤怒の形相で

「てめぇ調子に乗るなよ!」

「てめぇこそ黒崎の名を笠に着て調子に乗ってんじゃねーよ!」

呆れた剛が両者をいさめて

「まぁまぁいきなり仲違いしても仕方ねぇだろ……とりあえず名前と顔覚える為に自己紹介から始めようぜ!」

その言葉に冷静さを取り戻し、他校生の一人が口を開いた。

「先ずは俺からで良いかな……俺は紺野…紺野辰哉(こんのたつや)海老川中から来た」

「こ……紺野!?海老中の紺野かよ!黒崎!こいつはスゲェ奴が舞い込んで来たぜ!紺野って言や腕っぷしでそうとう名の通った奴だ!」

続いて別の他校生が

「次は俺でいいか?俺は黄瀬……黄瀬朗生(おうせあきお)稲川中!俺、黒崎君にずっと憧れてた!黒崎君の武勇伝聞くたびに会いたくて会いたくて、ずっとこの日を待ち侘びてたんだ!今日はテンション爆上がりよ!」

「い……稲中の黄瀬かよ!これまたスゲェ奴が仲間入りしてくれたもんだぜ!知ってるか黒崎!この黄瀬って奴は……」

その言葉を遮る様にまた別の他校生が

「青木……少し黙れ!うるせぇぞ!」

「あぁ!?何だとてめぇ!やんのか!?」

「やってやっても良いが、そこの副総長さんが睨み利かしてるから止めとくわ……俺は紅蓮、紅蓮煌獅(ぐれんこうじ)。赤城学園……青木……お前、ウチの柴崎の舎弟だったんだろ?三下は大人しくしてた方が身のためだぞ?」

「あ?誰が舎弟だって?柴崎がそう言ってたのか?そりゃとんだ勘違いだぞ!帰ったら柴崎に言っとけ!次会うまでに首洗っとけってな……」

剛がこのバチバチの空気に水を差して

「紅蓮……か……お前ウチの傘下に入る気があるんならその態度改めろよ!」

「申し訳ない……以後気を付けましょう……」

紅蓮は納得してはいないようだが、とりあえずこの場は荒らさずといった表情で黙った。

「次俺で良い?俺は白井!白井一翔(しらいかずと)!霞の学園ッス!俺ね俺ね、以前黒崎君の姿見たことあるんだ!集団相手に赤子の手をひねるかの如くパタパタパタっと倒す姿見てすっごく興奮してさぁ~、実は今回こうやって有名どころのメンバーに声かけたのは俺なんだぜ!」

「黒崎……確かにここまで名前を聞いた奴らは揃いも揃って俺の強者リストにある名前ばかりだぜ!どいつもこいつも強さでは文句無しだ!白井もとんでもねぇ奴ら引き連れて来てくれたもんだよ!」

「じゃあ次は俺かな?俺は緑川雄二(みどりかわゆうじ)。恵林(けいりん)中……宜しく」

「緑川……恵林中……どこかで聞いたことあるような……けど、それほど印象に無いな……」

青木がそう言ったが白井が

「緑川知らないとは……青木もモグリ決定!緑川は物静かで口数は少ないがタイマンで負けた事は無い実力者だよ!」

「じゃあこの中でタイマンだったら誰が一番だよ?」

剛のその質問に皆口を閉ざす。

そんな中もう一人まだ自己紹介を済ませていない他校生が口を開く。

「俺だな!自信あるぜ!」

「お前は?」

「俺は紫藤……紫藤楓(しとうかえで)、鴻池(こうのいけ)中だ。俺の見たところ紅蓮もかなり出来ると見たが、俺が一番だ」

天斗と剛は紅蓮の顔を見たがその言葉に対して紅蓮は何も口を挟まなかった。

「紫藤……か……白井……お前……とんでもねぇ奴まで連れてきたんだな……」

青木のその言葉に天斗はただならぬ空気を感じ取っていた。

ここまで沈黙を貫いた薫が初めて口を開く。

「随分とヤンチャそうなのばかりだけど、鉄の掟は守れなければ即死刑だから覚悟しときな!」

その言葉に新たな仲間達が一斉に親指を立てて答えた。

紺野「世の中の秩序……ワルがワルを成敗する……なんかダークヒーローって感じだな」

白井「そうそう、めちゃくちゃカッコ良いじゃん!」

黄瀬「ところでさぁ、薫ちゃんって~……どんな男が好きなのかなぁ~?」

黄瀬が場違いな質問をしたその瞬間剛の顔色が変わる。

紺野「そうそう、俺もそこ気になる!彼氏とかやっぱ居るのかなぁ?」

「そりゃあ強い男だよ!私より強くて私を守れる心の強い男……」

白井「おっ!良いこと聞いちゃった~!俺なんかどうかな?単純に喧嘩だったらけっこう自信あるよ?」

「はっ!?話し聞いてた?私より弱い男なんかに興味ないから!」

白井「ヒューーーーーッ!良いねその気の強さ!薫ちゃんってマジで俺達より強いって思ってんだ?」

紅蓮「白井、止めろ!調子に乗り過ぎだぞ!」

そう言って睨みを利かせた。

その時剛が我慢ならないといった表情で

「お前ら何しに来たんだよ!薫は弱ぇ奴には興味が無ぇって言ってんだろが!」

白井「おぉ~怖っ!」

黄瀬「あれぇ?もしかして副総長さん……薫ちゃんと?」

剛がガタッ!と椅子から立ち上がろうとした瞬間、薫が口を開く。

「私は私より弱い男には興味無いよ。じゃあさ、このメンバー同士で誰が一番強いのか順位決定戦やってみたら?」

「薫……」

「私は強い男が好き。この中で一番強い人なら私をどうにでもしていい!」

「ちょっ……お前それは……」

剛が驚き心配するのをよそに、薫は立ち上がって

「どう?あんた達だって自分達の立ち位置ハッキリさせたいんじゃない?」

紺野「こりゃまた驚いたぜ!こんなぶっ飛んだ女が居たとは!」

紅蓮「確かに面白い女だな」

黄瀬「やろやろ!薫ちゃんを賭けた仁義なき戦い!」

白井「そういうことなら俺マジでやっちゃうけど良い?」

そう言ってそれぞれが立ち上がりにらみ合う。
剛が薫の腕を引っ張り少し離れた所へ移動した。

「薫……お前いったいどういうつもりだよ……」

「剛、私は剛が副総長である威厳を示して欲しい。そのためにこいつ等制して私を迎えに来て!」

「薫……」

メンバー達の睨み合いが続く中、紫藤だけは席を立たなかった。
それを見ていた天斗が

「紫藤……お前は参加しないのか?」

「悪いがそういうの興味無いんで……」

天斗は一人異様な空気をかもし出す紫藤の姿を複雑な思いで見つめる。

紅蓮「副総長さん、俺はあんたとやりたい!」

「あぁ!?」

紅蓮「俺の見たところやっぱ他の奴らよりあんたが一番オーラ出てるぜ!」

黄瀬「おい!そりゃあズルいぞ!いきなりお前だけラスボス戦とか抜けがけすんじゃねーよ!」

白井「てか、これ総当り戦?乱闘?どういう形式でやればいいの?」

紺野「そうだな……誰かが高みの見物で温存しておいしいとこだけ持ってかれるのは割に合わねぇなぁ……」

「フンッ、そんな言い訳するような女々しい奴は最初からリタイアしたら?」

薫の挑発的な言葉に我慢ならないと言わんばかりにこれまで沈黙していた緑川が

緑川「薫ちゃんよう、さっきから言いたい放題言ってくれるけど、どんだげ強い女か知らねーがガチで俺より強いとか思ってる?」

「悪いけど私からしたら雑魚にしか見えないけど?」

黄瀬「ヒャッハー!バチバチ面白ぇ!」

「緑川だったか?薫に喧嘩売るなら俺が買ってやるよ!」

剛が鋭い眼光で睨む。

紅蓮「待ってくれよ!あんたの相手は俺だぜ?」

「あぁ面倒くせぇ!お前らゴチャゴチャうるせぇよ!俺が順番に相手してやるからかかってこいや!」

緑川「別に俺は副総長に喧嘩売るつもりで来たわけじゃね~よ……」

紅蓮「悪いが俺はやってみてぇな!黒崎さんは別格だとして武田剛なんて名前は今まで聞いたこともねーしな……」

「ほう?なら相手んなってやるぜ!」

剛が制服の上着を脱ぎ捨てる。
紅蓮も上着を脱ぎ捨て首と拳の関節をポキポキ鳴らし剛を見下し加減に睨み付ける。

紅蓮がゆっくり前に出て大きく振りかぶり右拳を振り上げた。

“ブンッ”

剛は紅蓮のパンチを難無くかわし余裕の笑みを浮かべている。

紅蓮がもう一度大きく振りかぶり右拳を繰り出したが、剛は顔面に喰らうスレスレでかわし、紅蓮の伸びきった腕の手首を掴みもう片方の手で紅蓮の肘関節押さえてみせた。

紅蓮「うぐっ……」

剛がその気になればこの時点で紅蓮の腕はへし折られている。
紅蓮は勢いよく腕を引っ込め今度は左拳を剛の顔面目掛けて突き出した。
剛はそれをかわし様紅蓮の繰り出した勢いを利用して手首を掴み捻ってそのまま一回転させて投げ飛ばしていた。
手首の関節を極められながら地面に倒れ込む紅蓮……剛は圧倒的な力の差を見せつけ

「紅蓮、どうする?まだやるか?それとも怪我しないうちに負を認めるか?どっちだ?」

紅蓮「ぐっ……俺の負だ……」

紅蓮があっさりと負を認めたので剛も手を離し紅蓮を立たせた。
紅蓮は捻られた手首を押さえながら苦悶の表情で剛を見つめる。
その瞳にはすでに戦意を失っている。

紅蓮が決して弱いわけではない。むしろこの中でも一二を争う実力者で、パンチのスピードも威力も並では無かった。剛が強く成りすぎたのだ。

流石にこの圧倒的な強さを目の前に他のメンバー達もこれ以上剛に挑もうという勇猛果敢な者はいない。

剛がグルリと見回し戦意喪失している顔を見て

「どうした?順番に掛かってこいよ!それとももう終わりでいいのか?」

シーンと静まり返った場内に天斗がその静寂を破り話しだした。

「今後一切仲間同士のいがみ合いは禁止だ!心を一つにして同じ方向を進もう!」

その言葉に全員がうなだれていた。
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