2 / 32
第2話
しおりを挟む
この鮮魚コーナーには他に男性社員が三人、女性パート従業員が六人居る。パート従業員は二十代から四十代で、朋美さんは四十代従業員二人の中の一人。一番年長から二番目にあたる。18才の僕なら普通はもっと若い世代の女性に惹かれそうなものだが、僕は熟女が好きなマザコン気質なのかもしれない。安心して甘えられる存在、包み込んでくれる優しさを求めるからだ。そして、この朋美さんはけっこう綺麗な部類に入る。僕以外の男性社員は三十代、五十代と歳が離れている。朋美さんが、僕なんかよりも大人の男性の方に惹かれるのか、それとも若い子の方が良いのか、それが凄く気になるところだ。いつも朋美さんは僕に親切にしてくれるから、僕のことをどう思ってるのか…もしかしたらという思いで勘違いしてしまうこともある。前に一度、「和ちゃんはどの辺に住んでるの?」と聞かれたことがある。僕は実家を出て社員寮で寮生活してることを伝えた。
そしてある日…
僕は体調を崩し、仕事を休んだことがあった。寮で一人、どこにも出掛けられず布団で横になっていると…朋美さんが丁度お昼頃に僕の寮にお見舞いに来てくれた。社員寮と言っても外観は大きな一軒家といった感じで、その中でいくつかの個別の部屋に分かれている民宿のような造りで、朋美さんが玄関から
「和ちゃん!和ちゃん?」と大きな声で呼んでいた。僕はすぐに布団から飛び上がり、部屋のドアを開けて顔を出す。
「す…鈴木さん!どうしたんですか?」
僕は驚きのあまり目を丸くして言った。
「あ、ごめんねぇ~…体調はどう?」
わざわざ僕の心配をして見に来てくれるその優しさに、僕はますます朋美さんに惚れてしまう。
「お陰様でだいぶよくなりましたよ。ちょっと風邪引いちゃったみたいですが、とりあえず熱も少し下がってきてますんで…」
僕と朋美さんは玄関でそんなやり取りをする。そして僕は思わず
「鈴木さん、どうぞ上がってって下さい!何もお出しすることは出来ませんが」
そう言ってしまった。後でその軽率な言動に後悔した。風邪を引いている自分の部屋に朋美さんを招き入れることは、朋美さんにとってリスクがあるからだ。
「ううん、ちょっと様子見に寄っただけだから。私の家はこのもう少し先なの。それより和ちゃん、ゆっくり休んで早く良くなってね!」
朋美さんは優しい笑顔で僕にそう言ってくれた。そして果物や、栄養ドリンクが入ったレジ袋を僕の方へ差し出して
「和ちゃん、独り暮らしって言ってたから栄養ちゃんと摂ってね」
そう言って僕の手に袋を持たせる。その瞬間、朋美さんは僕の手を軽く押さえた。その行動がいったいどうしてそうしたのか、朋美さんの気持ちが気になって僕は戸惑う。これは…もしかして?
だが、朋美さんは「それじゃあねぇ」と言って笑顔のまま振り返り玄関を開け外に出る。そしてもう一度振り返り、手を振りながら去っていってしまった。
朋美さんの姿が見えなくなった後、僕は言い知れぬ孤独感を感じた。朋美さんと…ずっと一緒に居たい…あなたの笑顔を…あなたの温もりを…欲しい…あなたの全てが…自分の欲求がどんどんエスカレートしていく。
次の日、僕はかなり体調も良くなって出勤した。そして午後になり、朋美さんも出勤してきた。僕は朋美さんの方へ歩みより、小声で「鈴木さん…」そう言いかけたとき、朋美さんは小さく頷き僕にウインクしてきた。僕はそれが何も言わなくていいよという合図だと悟り、僕も軽く頷いて心の中でお礼を言ってその場を離れた。朋美さんのウインク…可愛かったなぁ~!僕はその後もずっと朋美さんのウインクした顔を思い出してはニヤニヤしてしまう。その僕のおかしな表情を見て別のパートの女性が、「北村君、どうしたの?何か良いことあった?もしかして昨日休んで彼女とデートでもしたの?」そう言われた。その会話が朋美さんの耳にも入ったらしく、チラチラ僕の方を見ている。僕はあわてて「違いますよ!僕は彼女なんかいませんから!」強く否定して、朋美さんに聞こえるようにアピールした。朋美さんはその瞬間ニヤッとした表情をしたのを僕は見逃さなかった。朋美さん…僕のことをどう思ってるんだろう…どうしても朋美さんの気持ちが知りたい…どうしたら知ることが出来るんだろう…僕は絶対知ることの出来ないであろう朋美さんの心の中を、見透かせる力があったらとため息を洩らす。
そしてその日の遅番のパートさんは、僕に彼女とデートしたのかと昼間に聞いてきた上田恭子(うえだきょうこ)さんだった。
この上田さんという女性は、年齢三十代後半くらいで、若干小太りな感じで少しやらしい目付きな、やらしいとはエッチな方の意味で妖艶とは言い難いが見る人が見ればそう取れそうな感じがする。この上田さんが僕と二人きりになった時、今は旦那さんとはベッドを共にしていないとか、私もまだまだ女なのにだとか、そんなプライベートな夜の話ばかりしてきた。この人はそうとう欲求不満なんだとは思ったが、僕は彼女にそんな話をされても困惑するだけで全く興味が無いのに…という想いで、苦笑いしながら聞き流していた。これがもし、朋美さんにそんな話をされたら、僕はどれほど胸が踊る想いだろうか…
そしてある日…
僕は体調を崩し、仕事を休んだことがあった。寮で一人、どこにも出掛けられず布団で横になっていると…朋美さんが丁度お昼頃に僕の寮にお見舞いに来てくれた。社員寮と言っても外観は大きな一軒家といった感じで、その中でいくつかの個別の部屋に分かれている民宿のような造りで、朋美さんが玄関から
「和ちゃん!和ちゃん?」と大きな声で呼んでいた。僕はすぐに布団から飛び上がり、部屋のドアを開けて顔を出す。
「す…鈴木さん!どうしたんですか?」
僕は驚きのあまり目を丸くして言った。
「あ、ごめんねぇ~…体調はどう?」
わざわざ僕の心配をして見に来てくれるその優しさに、僕はますます朋美さんに惚れてしまう。
「お陰様でだいぶよくなりましたよ。ちょっと風邪引いちゃったみたいですが、とりあえず熱も少し下がってきてますんで…」
僕と朋美さんは玄関でそんなやり取りをする。そして僕は思わず
「鈴木さん、どうぞ上がってって下さい!何もお出しすることは出来ませんが」
そう言ってしまった。後でその軽率な言動に後悔した。風邪を引いている自分の部屋に朋美さんを招き入れることは、朋美さんにとってリスクがあるからだ。
「ううん、ちょっと様子見に寄っただけだから。私の家はこのもう少し先なの。それより和ちゃん、ゆっくり休んで早く良くなってね!」
朋美さんは優しい笑顔で僕にそう言ってくれた。そして果物や、栄養ドリンクが入ったレジ袋を僕の方へ差し出して
「和ちゃん、独り暮らしって言ってたから栄養ちゃんと摂ってね」
そう言って僕の手に袋を持たせる。その瞬間、朋美さんは僕の手を軽く押さえた。その行動がいったいどうしてそうしたのか、朋美さんの気持ちが気になって僕は戸惑う。これは…もしかして?
だが、朋美さんは「それじゃあねぇ」と言って笑顔のまま振り返り玄関を開け外に出る。そしてもう一度振り返り、手を振りながら去っていってしまった。
朋美さんの姿が見えなくなった後、僕は言い知れぬ孤独感を感じた。朋美さんと…ずっと一緒に居たい…あなたの笑顔を…あなたの温もりを…欲しい…あなたの全てが…自分の欲求がどんどんエスカレートしていく。
次の日、僕はかなり体調も良くなって出勤した。そして午後になり、朋美さんも出勤してきた。僕は朋美さんの方へ歩みより、小声で「鈴木さん…」そう言いかけたとき、朋美さんは小さく頷き僕にウインクしてきた。僕はそれが何も言わなくていいよという合図だと悟り、僕も軽く頷いて心の中でお礼を言ってその場を離れた。朋美さんのウインク…可愛かったなぁ~!僕はその後もずっと朋美さんのウインクした顔を思い出してはニヤニヤしてしまう。その僕のおかしな表情を見て別のパートの女性が、「北村君、どうしたの?何か良いことあった?もしかして昨日休んで彼女とデートでもしたの?」そう言われた。その会話が朋美さんの耳にも入ったらしく、チラチラ僕の方を見ている。僕はあわてて「違いますよ!僕は彼女なんかいませんから!」強く否定して、朋美さんに聞こえるようにアピールした。朋美さんはその瞬間ニヤッとした表情をしたのを僕は見逃さなかった。朋美さん…僕のことをどう思ってるんだろう…どうしても朋美さんの気持ちが知りたい…どうしたら知ることが出来るんだろう…僕は絶対知ることの出来ないであろう朋美さんの心の中を、見透かせる力があったらとため息を洩らす。
そしてその日の遅番のパートさんは、僕に彼女とデートしたのかと昼間に聞いてきた上田恭子(うえだきょうこ)さんだった。
この上田さんという女性は、年齢三十代後半くらいで、若干小太りな感じで少しやらしい目付きな、やらしいとはエッチな方の意味で妖艶とは言い難いが見る人が見ればそう取れそうな感じがする。この上田さんが僕と二人きりになった時、今は旦那さんとはベッドを共にしていないとか、私もまだまだ女なのにだとか、そんなプライベートな夜の話ばかりしてきた。この人はそうとう欲求不満なんだとは思ったが、僕は彼女にそんな話をされても困惑するだけで全く興味が無いのに…という想いで、苦笑いしながら聞き流していた。これがもし、朋美さんにそんな話をされたら、僕はどれほど胸が踊る想いだろうか…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる