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王都編
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しおりを挟む「せっかくなので、芸を披露してみたのですが。
えっと……どうしましょう」
ダメだ。語彙力死んだ。
「こほん。そうか、よいものを見せてもらった」
「ありがとうゴザイマス」
「ワフッ」
大御所に気を遣われてしまった。すみません、助かります。
ディオンは、そうは思っていないのか、偉いぞとユキを褒めている。
俺に負けず劣らず、親バカだな……。
「まあ本題に入ろうか。少し話してみてもいいかな?」
「はい」
「ユキ、私の言葉が分かるか。分かるなら、前足で2回床を鳴らしてくれ」
「《この老人は、何を言ってるのですか?》」
「……ふむ、通じんか。
ではルーカス、君が今の言葉を伝えてくれ」
教授はユキの目を見て、指示を出した。
だけどユキには、彼の言葉が解らないらしい。
「ユキ。前足で2回、床を軽く叩いて欲しいって」
「《お安い御用です》」
ーーペシペシ
「おおっ!
では、君はこのルーカスにテイムされているのか?
テイムしているなら、1回。違うなら2回吠えてくれ」
「俺がユキをテイムしているのか、だって。
されてたら1回、違ったら2回吠えて」
「ワフッ、ワフン」
「おおぉっ! 素晴らしい! 素晴らしいぞっ」
教授、大・興・奮。
強面な顔で燥がれても恐いだけだ。
「次だ! 君が主人の下に辿り着いた経緯を教えてくれっ」
「お前が俺の所に来た経緯を知りたいそうだ」
「《群れで過ごしていた森が、黒い霧に包まれたんです。徐々に木々は枯れていき、知能の低い生き物が凶暴化しました。
仲間も数名やられてしまいました。それから数日して、武装した人間達が入って来て、凶暴化した生き物を殺していったんです》」
思ってた話と違う。お前、ヘビーな経験をしたんだな。ぐすっ。
「《その中の1人が、フィン殿です。
フィン殿の仲間が父をテイムした事で、森が死んだ事実を知ったんです。
幸い、ワタシは幼かったので、フィン殿がテイマーから保護してくれたんですよー》」
「そうだったのか。大変だったな」
「《いえ、ルゥ様に出会えたので問題ありません。
母は年寄衆を心配して、森に残りましたが、人間が浄化を手伝っているらしいので、大丈夫でしょう》」
「む、何と言ってるのだ?」
「えっと、ーーーーーーー
ーーだ、そうです」
ユキの波瀾万丈な経緯を伝えながら、どこか実感に欠けた。
転生してからというもの、一度もそういった危険な目に遭った事がない。
非現実的っつうか。今まで運が良かったんだなって思う。
「ああ、なるほど。ドーバ領の黒い森の一件だな」
「ドーバ領に……」
「《ルゥ様、どうかされましたか》」
「……いや、ユキは強い子だなって思っただけだよ」
「《ワタシはもっと強くなりますよ?》」
そういう意味じゃないんだけど…いっか。
気にしてないみたいだし。
それからも質問を繰り返し、教授は2つの仮説を立てた。
「うむ。君の話を全て事実と仮定すると、2つ考えられる。1つ、黒い森現象により何らかの影響を受けた。もしくは、独自の進化を遂げた。
これは、凶暴化したホワイトウルフが既存の種で、凶暴化から逃れた個体が霧を克服する因子を持っていたと考える」
「進化ですか」
「左様。2つ、未発見のスキル、又は森の民の遺伝子をルーカス、君が所持している可能性だ。
ワタシは後者が有力と考える。誤差の範囲と言ってしまえば、それまでだが……“名付けしてから”というのが、重要なポイントに思えてならん」
ここにきて、俺、非凡説爆誕。
テオドールが完璧すぎて霞んでいたが、やはり俺もそれなりに転生特典的な何かを持っているのか?!
ヤバイ、にやける。俺の輝かしい未来が見えるぞ!
「アダム卿。2つ目の仮説については、検証可能ですか? スキルは神殿でどうにかなりそうな気がしますが。
ーー森の民は…」
森の民って、もしかして地雷種族?
それだったら検証不要です。俺、一般人なんで。
特殊要素とか要らないんで、平穏に暮らしたいです。
「スキルは可能だ。私自身もスキル鑑定の装置を保有している。それで試し、何も出なければ中央神官長に頼んでも良いと思う」
「中央神官長っ!?」
とんでもない大物の名前が出てきちゃったよ?
しかもスキル鑑定装置って、国に数台しかねーよな。
何でこの人持ってるわけ!
「中央にも顔が効くのですか。流石はアダム卿です」
「だてに長く生きとらん。
問題は、森の民についてだ。森の民は180年前に滅んだとされている。逸話は数多く残っているが、身体的特徴は一切文献に載っていない」
あ、コレは厄介なパターンだ。
うん。違う違う。俺、普通の母親と普通の父親から生まれたから、そんな面倒臭い血は流れてません。
じぃちゃん、ばぁちゃんも超普通。親族皆んな普通。
はい、ちがーう。俺は関係ありませーん。
むしろテオドールじゃないっすか。アイツがそうなんじゃないっすか。
「では、どうすることもーー」
「いや。方法がないわけではない」
なにぃっ?! そういうのいいから。求めてないから!
「ーー! あるんですか」
「ある。ただ、確実ではない上に、困難だ」
ディオンやめて。これ以上聞かないでくれ。
俺達の平穏の為に。メアリーママが怒りますよっ。
パパさんが寝起き以外もラスボスになっちゃうから!
「それはいったい」
「……王家の、それも直系の王族のみ閲覧出来る手記があると言う噂がある。
だが、史実を辿っても森の民と王家の繋がりに重要な点はない。にも拘らず、公開される事なく、秘匿されているというのは、可笑しな話だと思わんか」
「王家にとって、不都合な事があるという事ですか」
「あくまで噂だ。歴史学や民俗学の奴等のな。
しかし、事実であった場合、森の民が滅んだとされる理由もきな臭くなるわけだ」
「……」
触らぬ神に祟りなし。臭いものには蓋をしろ。これに限るよ。
さあ諦めましょう。一歩間違えたら、全員死にますからね。
「少し、父に相談しても宜しいですか」
「構わん」
「仮にですが。王家から協力を得る方法をお持ちなんですね?」
「あるわけないだろ。
だが、伝手はある」
「伝手…ですか」
「うむ。卿は忘れている様だが、私を誰だと思っている。
今代の王太子の魔物学の講師はーーーー私だ」
ギィヤアァァーっ!!!
そういや、そうだったー! 王族とコネクションがあるんだ、この教授。
「あ、あのぉ~。そ、そんな噂に過ぎない事で、おっ王族を煩わすというのは、だっ、駄目なんじゃないでしょうかっ、な、なぁんて」
団長……。よく言った団長。貴方は最高に正しい。
「何故だ」
「「え?」」
「森の民が魔物と共存していたというのは、有名な紀伝にも記されている。
魔物学の発展の為、これは重要な行程だと思うがね」
「そっ、そんなあっ」
これだから学者ってヤツは。俺、知~らないっ。
どうか教授の一存で、俺達は巻き込まれただけにしてもらえますように。
数日後、俺は腰を抜かす事になる。
「ディオン、ルーカス。困った事になった」
「どうされたんです、父上」
「パパさん?」
「お前達、王弟殿下に招待されたぞ」
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