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BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる
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目覚めると、ミレーさんが俺の顔を覗き込んでいた。
朝から、美女のドアップで幸せです。はい。
「ミレーさん!
戻って来れたんですね!」
「はい、トキトゥ様のおかげです!
本当にありがとう存じます!」
「いえそんな。むしろ俺のせいですみません。本当に」
「謝らないで下さいませ。
トキトゥ様には、感謝しているんです!
本来なら解雇だけでは済まなかった所を、まさか呼び戻して下さるなんてっ」
やべ、泣かしちゃった。慰め方が分からない。
しかも俺のせいなのに感謝されると、より良心が痛む。
「ミレーさんは何も悪くないじゃないですか」
「ぐすっ、でもっトキトゥ様は生死を彷徨われたのにっ」
「彷徨ってないよ。ほら、元気だし」
「トキトゥ様っ」
「ミレーさん」
「こほん。
あー、予定が詰まっておりますので、お支度を」
オスカー君、ナイスタイミングの様な、バッドタイミングの様な。
とりあえず、その目をやめてくれ。
指1本触れてないから。
「もっ申し訳ありません!
直ぐに朝食の準備とお召し物をっ」
「慌てなくて結構です。
それより、その顔をどうにかして下さい。
私の主人に要らぬ噂が立ちます」
「申し訳ありません!!」
「オスカーく、オスカー」
「トキトゥ様、そろそろ慣れて下さい。
はい、起きて下さいね。
本日の予定を申し上げますので」
時々、オスカー君が嫌々俺に仕えているんじゃないかと不安になるよ。
「本日は、朝食後に魔法学の授業を受けて頂きます。
その後は自由時間の予定でしたが、魔術師団団長のドバース卿から面談の申し込みがありました」
「面談?」
「はい。ドバース卿の部下が、以前トキトゥ様に相談した事についてと仰ってましたが」
おっ! ついに憧れの魔法か!
楽しみ過ぎるっ。
あと、相談なんかされたっけ。ーーああ、お嫁さんの件か。
ヤベ、まだ何も試してない。
誰か実験台になってくれないかな。同じくらいの年齢の女性だと、データ取りやすいんだが。
「準備するの忘れてた」
「相談された内容についてですか?」
「うん」
めっちゃ溜息ついてる。
彼って結構、隠さないよね。
「トキトゥ様。
ドバース卿は魔術師団のトップであり、名門侯爵家の出です。
あまり軽視されない様にお願い致します。
恐らく、ベイリー殿下と言えどドバース卿がお怒りになられたら無視は出来ません。
9対1の割合で、トキトゥ様が処罰されます」
「残り1割はどれぐらい、可能性が……?」
「……」
「マジか」
偉い人だと知りつつも、まあ爺さんだしと、どこかで安心していた。
スキルの練習だけはしておこう。
今日の魔法学の授業で何か掴めると良いんだが。
いや、やるしかない。
「なあ、じいさーーじゃなくて、団長さんの孫に嫁いだ女性の年齢分かる?」
「それは何番目の方でしょうか。
たしか、ご令孫は7人いらっしゃって、内4名が男性です。
ご結婚されていないのは1名のみのはずです」
わー、大世帯。
「皮膚に悩みを抱えているって噂の人は?
もしくは社交的だったのに、急に非社交的になった人」
「それでしたら2番目のご令孫の奥様ですね。あくまで噂の範囲内ですが。
年齢は、30代半ばぐらいだと記憶しております」
ミレーさんのちょい上か。
戻って来て早々で申し訳ないけど、頼んでみるか?
「その相談の関係で、メイドさんに実験を頼むってどう思う?」
「さん付けは不要です。
あまり非道徳的でなければ、問題ないかと。可能なら、本人の許可は取って頂きたいですね」
「バカっ、当たり前だろう!
俺を何だと思ってるわけ」
心外だよ、オスカー君。
化粧品の製造だって、被検者は大切なんだ!
その後のモニター調査も!
「失礼致しました。
ですが、世の中にはそう思ってない者も居りますので、お気をつけ下さい」
何それ、ゾッとするんだけど。
万が一、何かあったら訴訟もんだぞ?
それでなくとも、人の皮膚は千差万別なのに。
「恐ろしい世の中だな」
「私はトキトゥ様のそういう所を尊敬しております」
突然のデレか。また唐突な。
俺は、出来れば普段からデレて欲しい。
優しく接してくれ。
「こほん、何ですか?」
「いいえ何も」
ーーコンコン
「ご朝食をお持ち致しました」
「ありがとう……わっ、さっきより目、腫れてない?」
「申し訳ありません。他の使用人に会ったら、また嬉しくなってしまって」
涙脆い年上女性も大変素敵です。
ただ、一抹の不安というか、オスカー君がさっき言った懸念が蘇るな。
やろうと思えば、多少目立たなくは出来るか?
やらないよりマシだよな。
「オスカー、授業まで後どれぐらい時間ある?」
「食事と身支度を合わせて、1時間半程あります」
よっしゃ、それだけあれば十分。
「ミレーさん、水の魔法使えたよね」
「はい」
「じゃあ誰かに火と氷の魔石借りて来させて」
「では私が…」
「そこの貴方、借りて来て下さい」
ミレーさんが行こうとすると、すかさずオスカー君が違うメイドさんに頼んだ。
ナイスプレイ!
「魔石で何をされるんですか?」
「まあまあ、見てなよ。
今度オスカーにもやったげるから」
「??」
今日も朝から最高の料理です。料理長。
俺、城から出て生活出来るかな。
身体も味覚も甘やかされ過ぎてダメ人間になりそうだ。
うんまー。
食後、身支度を終えて、準備は整った。
「じゃ、ミレーさん。このボウル2つに、それぞれ水を入れて、1つは少し熱めの人肌に。もう1つは冷たくして欲しい」
「? かしこまりました」
オスカー君もミレーさんや他のメイドさんも不思議そうに見ている。
フッフッフ、俺はメイクの腕前だけでなく、フェイシャルエステの講習もトップの成績だ。
良く見るが良い!…と言いたいけど、注目されるとロールプレイの大会みたいで嫌だな。
仕事が終わったメイドさんは、退出してくれないだろうか。
「トキトゥ様、出来ました」
「あ、うん。どれ……ん、どっちも適温だ。ありがとうミレーさん」
「お安い御用です」
ハアー、やっぱりミレーさんの笑顔は癒される。目が腫れてても癒されるってどんだけだよ。
「それじゃ、ここ座って」
「かしこまりました、失礼致します」
ゆったりした、アンティークソファーの様な横長の椅子に座ってもらい。
俺は、その背後に回った。
「椅子に浅く座って、背もたれに首を預ける感じで座れる?」
「こうでございますか?」
「うん、オッケー。
始めるから目を閉じて」
「ひゃっ」
「ごめん、じっとしてて。冷た過ぎたら言って」
腫れを引かせる為に、冷水で冷やしたタオルを固く絞り、瞼の上に乗せる。
目の周りを冷却しているうちに、血流を促す様に頭皮を優しくマッサージ。
徐々に頭皮と額にも、手のひらで優しく圧をかけて、コリをほぐしてっと。
「ふわ~」
「くすっ。気持ち良い?」
「はいぃ~」
「結構冷やしたから、次は温めますね。
熱過ぎたら言って下さい」
今度は、人肌より高めに設定したお湯に浸したタオルを乗せる。
そして、眉間、眉尻のツボをプッシュして、目の周りのマッサージを始める。
「ん~っ、何だかとても良い香りが」
「ああ、これ顔用のマッサージクリームなんだ」
「そんなものが…はぁ~」
目元は表皮の厚さが1/2で、少し擦るだけでシワとシミの原因になるからな。
どれだけアイセラムとアイクリームが大事かって事だよ。目ヂカラが全っ然変わってくる。
「コリや浮腫をとるだけじゃなくて、視界もよりハッキリするはずだから、楽しみにしてて下さいね」
「はぁい」
何か、いつものシャキッとした感じじゃなくて、ふにゃふにゃだな。ミレーさん。
それより、オスカー君とメイドさん達の視線が刺さってるんだが。
もう深く刺さってる。えぐりに来てるね、これは。
オスカー君にはちゃんとやるから。
だからそんな目で俺を見るな。
「……えっと、じゃあ最後に、もう1回冷やして温めるね」
「ふぁい」
ついでだから、フェイスラインと首筋もやっとくか。
お? 意外とリンパ詰まってるな。
「ちょっと痛いですけど、我慢して下さいねー」
「え? はぅっ」
うわー、めっちゃ耳の下ゴリゴリしてるわ。自分でマッサージしないのかな?
美人なのにもったいない。
「ーーーはい、終了。
楽にして良いですよ」
あれ、放心状態?
リンパやり過ぎたかな。痛かった?
「ミレーさん? おーい、大丈夫?」
「ーーハッ!
だっ大丈夫でふっ。もう極楽でした! 」
「良かった。うん、目の腫れもマシになったね。後はちょっとだけ、メイクしようか」
でふっ、て。でふって可愛いかよ。
ミレーさんが、まだ覚醒していないうちに、しめ色のアイシャドウで目元を引き締めて、まつげをビューラーで上げた。
我ながら良い出来ではないか?
「誰か手鏡ちょうだい」
「どっどうぞっ」
メイドさんの1人が震える手で、鏡を渡してくれた。
俺にそんな緊張する必要ないからね。初めましての、君。
「はい、ミレーさん。どう?」
「ええっ?! 凄いです!
泣き腫らした顔が嘘の様っ。それに顔の輪郭や首筋が細くなった気がします!
目もっ、え、あれ? 私のまつげどうなってるんですかっ、凄い!」
語彙力どこいった。
「喜んでくれて何よりだ」
「トキトゥ様は高名な魔術師の方だったのですか!?」
「違うよ。これは練習したら誰でも出来るから。まつげは道具がいるけどね」
ものすごくキラキラした目で見られている。ミレーさんからも、手鏡のメイドさんからも。
これは、またやれと言う目なのかな?
「んん゛。さっ、間もなくトキトゥ様は授業がおありです。速やかに退出して下さい」
手鏡のメイドさんが、口を開こうとした時、オスカー君がどデカい咳払いをして、彼女達を追い出した。
「トキトゥ様」
「マズかった?」
「いえ、良い行いをされたと思います。
しかし、今後の事を考えると頭が」
「あーうん? 何かごめん。
今度さっきのするから。肩もオマケで!」
「使用人になさるのは全く感心致しません。その技術はもっと高貴な方に施すべきです。
ーーーーしかし、お願いします」
「・・・うんっ任せて!」
可愛いヤツめっ。
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