10 / 13
モブ王子、興味を持つ。
2
しおりを挟む少しして、おやつセットが運ばれて来た。
カリアも居る。さっきの騒動は、収まったのかな。
「カルロ様、アベルト殿下。お茶をお持ち致しました。本日は王妃様が取り寄せられた、東方の茶葉と、焼き菓子でございます」
「へえ、母上が。楽しみだね、アベルト」
「はい」
兄様もカリアも、何事もなかったみたいに……
さっきまでの事は、もう忘れたの?
おっかないなぁ。もお。
「わあっ! 兄様、お茶が緑色だよ!」
「ああ、初めて見るな。東では、茶は全て緑なんだろうか」
こんな透き通った緑色のお茶があるんだ。
紅茶とは違う、柔らかい香りがする。
どんな味がするんだろう。お菓子に合うのかな。
お薬みたいな味だったらどうしよう。薬草茶みたいなやつ。
「うん、独特な味わいだ。悪くない。アベルトも飲んでみると良い」
「ゔ、独特なのか……ん、美味しい?」
ホッとする感じだ。やっぱり、慣れない味ではあるけど、意外と好きかも知れない。
「口に合わなかったか?」
「ううん。僕、このお茶好きかも」
「そうか。良かったな」
あ、う。また兄様の撫で撫で攻撃が始まった。
どうしよう。お菓子食べたい。だけど、撫でられたい。お菓子に手を伸ばしたら、止まっちゃうよね。
ううーん。どうしたものか。
「カリア、この茶葉は確保出来るのか?
母上に伝えてくれ。アベルトが気に入った、と」
「勿論でございます」
む。まずいぞ。母上の耳に入ったら、買い占めちゃうかも。
いくらするのか知らないけど、きっと貴重なお茶なんでしょ?
お金が無くなったら大変だ。お菓子が食べられなくなるっ!
「兄様、たまにで良いです!
毎日飲むなら、やっぱり紅茶が良いなぁ、僕」
「そうか。でも、あっても困らないだろう。
むしろ、アベルトが飲みたい時に無い方が心配だ。ある程度は常備すべきだ」
僕の兄様は、何を馬鹿な事仰ってるんだ。
カリア達も頷かないの。無駄遣いだから。
「茶葉は湿気に弱いと聞いた事があります。
余分に保管しても、悪くしてしまうだけですよ。きっと」
「っっっ!
なんて賢い子なんだ、お前は!
素晴らしい。天才だっ」
今日も兄バカが絶好調だね、兄様。
僕は、将来ちゃんと自立した男になれるんだろうか。
でも甘やかされるの好き。
「おほほ。では、ほどほどに取り寄せるよう、手配致します」
「ああ、頼む」
「やったー」
1時間程おやつタイムを楽しんだ後、兄様は侍従長のトーマスに連れて行かれた。
さっきの件だな。トーマスって、いつもは優しいけど、怒ると恐いんだよねー。
暇だ。部屋に戻ろうか。このまま庭で遊ぶ?
でも兄様居ないし。アイリーンは何処だろ。
誰か遊び相手を呼んでもらおうと、片付けを進めるカリアに聞いてみた。
「ねえ、カリア。誰か暇な人居ない?
お昼寝もしちゃったし、何かして遊びたい」
「此方でですか?」
「うん。アイリーンは忙しいかなぁ」
カリアも他のメイド達も、ピタッと険しい顔で固まった。
ごめん、皆んな忙しいよね。
「(カリア様、私暇です。暇になる予定です)」
「(カリアさん、ここは私が)」
「(あら、アイリーンなら呼べば直ぐに来るのでは?)」
「(しっ! お黙り! いつもアイリーンが独り占めしてるじゃないっ)」
「(そうよそうよっ)」
「あの、忙しかったよね。やっぱりレオと遊ぶから大丈夫」
だから、目をギラギラさせながら黙らないで。
「いえ、殿下。それでは私と遊びましょう。
このカリア、かけっこでも騎士ごっこでも、花飾りでも、何でも致します」
「え、本当?」
「「「(ずるいっ!)」」」
「ええ、お任せ下さいまし」
わあ~!
カリアと遊ぶの2年ぶりくらいじゃない?
「じゃあね、じゃあねっ!
かくれんぼと花飾り!」
「まあ殿下、私かくれんぼは得意です。負けませんよ」
「僕も得意だもんっ」
かくれんぼでレオは目立つから、姿を消してもらう。
よーし、上手に隠れよう。
─────────
──────
────
「はぁ~、楽しかった」
『良かったな、ルト。夕食まで時間がある。少し休むと良い』
「うん。レオだっこ~」
『うむ』
かくれんぼは、何度やっても直ぐ見つかってしまった。
だけど、楽しかったからいいや。次は勝つもん。
花飾りはちょっと大変だった。
僕は、シロツメクサで簡単にと思ったんだけど、お母様に花冠を作りたいと言ったら、カリアが気合い入りまくっちゃって。
結局、庭師のブラウン爺も巻き込んで「配色がどうだ」「花言葉がどうだ」と、温室の花まで使って作ったんだよね。
2人の本気度に、少しビビったのは内緒だ。
レオは呆れてた。
ちなみに、一発で上手くはいかなかった。
だから、僕の試作品はレオとカリアの頭に載っている。ブラウン爺も羨ましがってたから、腕輪を作ってあげた。
お母様のは、我ながら良く出来たと思う。
夕食の時にあげるんだ。
ーーふぁさ
「ほうっ」
『寝るなら早く寝ろ。起きれなくなるぞ』
「うん。う~、気持ちい」
ベッドの上で横になったレオのお腹に身体を預け、目を閉じる。
レオの毛はね、長毛でサラサラな見た目なんだ。
けど実際は、ふわっふわで綿菓子みたい!
すご~く幸せな気持ちになれるんだ。
こうやって寝る体勢をすると、身体を丸めて僕を包んでくれる。
尻尾の先っちょで、おでこを撫でられるのも気持ち良い。
そして僕は、アイリーンが起こしに来るまで爆睡した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる