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モブ王子、興味を持つ。

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 少しして、おやつセットが運ばれて来た。
 カリアも居る。さっきの騒動は、収まったのかな。


「カルロ様、アベルト殿下。お茶をお持ち致しました。本日は王妃様が取り寄せられた、東方の茶葉と、焼き菓子でございます」
「へえ、母上が。楽しみだね、アベルト」
「はい」


 兄様もカリアも、何事もなかったみたいに……
さっきまでの事は、もう忘れたの?
おっかないなぁ。もお。


「わあっ! 兄様、お茶が緑色だよ!」
「ああ、初めて見るな。東では、茶は全て緑なんだろうか」


 こんな透き通った緑色のお茶があるんだ。
 紅茶とは違う、柔らかい香りがする。
どんな味がするんだろう。お菓子に合うのかな。
お薬みたいな味だったらどうしよう。薬草茶みたいなやつ。


「うん、独特な味わいだ。悪くない。アベルトも飲んでみると良い」
「ゔ、独特なのか……ん、美味しい?」


 ホッとする感じだ。やっぱり、慣れない味ではあるけど、意外と好きかも知れない。


「口に合わなかったか?」
「ううん。僕、このお茶好きかも」
「そうか。良かったな」


 あ、う。また兄様の撫で撫で攻撃が始まった。
 どうしよう。お菓子食べたい。だけど、撫でられたい。お菓子に手を伸ばしたら、止まっちゃうよね。
ううーん。どうしたものか。


「カリア、この茶葉は確保出来るのか?
母上に伝えてくれ。アベルトが気に入った、と」
「勿論でございます」


 む。まずいぞ。母上の耳に入ったら、買い占めちゃうかも。
 いくらするのか知らないけど、きっと貴重なお茶なんでしょ?
お金が無くなったら大変だ。お菓子が食べられなくなるっ!


「兄様、たまにで良いです!
毎日飲むなら、やっぱり紅茶が良いなぁ、僕」
「そうか。でも、あっても困らないだろう。
むしろ、アベルトが飲みたい時に無い方が心配だ。ある程度は常備すべきだ」


 僕の兄様は、何を馬鹿な事仰ってるんだ。
カリア達も頷かないの。無駄遣いだから。


「茶葉は湿気に弱いと聞いた事があります。
余分に保管しても、悪くしてしまうだけですよ。きっと」
「っっっ!
なんて賢い子なんだ、お前は!
素晴らしい。天才だっ」


 今日も兄バカが絶好調だね、兄様。
 僕は、将来ちゃんと自立した男になれるんだろうか。
 でも甘やかされるの好き。


「おほほ。では、ほどほどに取り寄せるよう、手配致します」
「ああ、頼む」
「やったー」


 1時間程おやつタイムを楽しんだ後、兄様は侍従長のトーマスに連れて行かれた。
さっきの件だな。トーマスって、いつもは優しいけど、怒ると恐いんだよねー。


 暇だ。部屋に戻ろうか。このまま庭で遊ぶ?
でも兄様居ないし。アイリーンは何処だろ。
 誰か遊び相手を呼んでもらおうと、片付けを進めるカリアに聞いてみた。


「ねえ、カリア。誰か暇な人居ない?
お昼寝もしちゃったし、何かして遊びたい」
「此方でですか?」
「うん。アイリーンは忙しいかなぁ」


 カリアも他のメイド達も、ピタッと険しい顔で固まった。
 ごめん、皆んな忙しいよね。


「(カリア様、私暇です。暇になる予定です)」
「(カリアさん、ここは私が)」
「(あら、アイリーンなら呼べば直ぐに来るのでは?)」
「(しっ! お黙り! いつもアイリーンが独り占めしてるじゃないっ)」
「(そうよそうよっ)」


「あの、忙しかったよね。やっぱりレオと遊ぶから大丈夫」


 だから、目をギラギラさせながら黙らないで。


「いえ、殿下。それでは私と遊びましょう。
このカリア、かけっこでも騎士ごっこでも、花飾りでも、何でも致します」
「え、本当?」
「「「(ずるいっ!)」」」
「ええ、お任せ下さいまし」


 わあ~!
 カリアと遊ぶの2年ぶりくらいじゃない? 


「じゃあね、じゃあねっ!
かくれんぼと花飾り!」
「まあ殿下、私かくれんぼは得意です。負けませんよ」
「僕も得意だもんっ」


 かくれんぼでレオは目立つから、姿を消してもらう。
 よーし、上手に隠れよう。






─────────
──────
────


「はぁ~、楽しかった」
『良かったな、ルト。夕食まで時間がある。少し休むと良い』
「うん。レオだっこ~」
『うむ』


 かくれんぼは、何度やっても直ぐ見つかってしまった。
 だけど、楽しかったからいいや。次は勝つもん。
 花飾りはちょっと大変だった。
僕は、シロツメクサで簡単にと思ったんだけど、お母様に花冠を作りたいと言ったら、カリアが気合い入りまくっちゃって。
 結局、庭師のブラウン爺も巻き込んで「配色がどうだ」「花言葉がどうだ」と、温室の花まで使って作ったんだよね。
 2人の本気度に、少しビビったのは内緒だ。
レオは呆れてた。
 ちなみに、一発で上手くはいかなかった。
だから、僕の試作品はレオとカリアの頭に載っている。ブラウン爺も羨ましがってたから、腕輪を作ってあげた。
 お母様のは、我ながら良く出来たと思う。
夕食の時にあげるんだ。


ーーふぁさ


「ほうっ」
『寝るなら早く寝ろ。起きれなくなるぞ』
「うん。う~、気持ちい」


 ベッドの上で横になったレオのお腹に身体を預け、目を閉じる。  
 レオの毛はね、長毛でサラサラな見た目なんだ。
けど実際は、ふわっふわで綿菓子みたい!
すご~く幸せな気持ちになれるんだ。
 こうやって寝る体勢をすると、身体を丸めて僕を包んでくれる。 
尻尾の先っちょで、おでこを撫でられるのも気持ち良い。

 そして僕は、アイリーンが起こしに来るまで爆睡した。




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