モブ王子、悪役令嬢に転生した少女をフォローする

豆もち。

文字の大きさ
12 / 13
モブ王子、興味を持つ。

4





 
 トーマスによって連れて来られた宝飾師、細工技師達が壁一列に縮こまっている。目立つ2人が親方的な人達で、他の人は従業員かな。
 ええー、僕にどうしろと。
 朝っぱらからごめんね。ウチの侍従長が。



「殿下、先ずは陛下のバックルからお願い致します」
「あー、うん。ふあ。ねむ…」
「アベルト殿下?」
「はっ! うん、分かった。作り始めよっか。
君達も朝から悪いね。よろしく頼むよ」
「「「とんでもございません!
光栄の極みでござますっ」」」


 昨夜考えた結果、王様に冠はマズイつて事で、ベルトのバックルを作る事にした。
 兄様は、ブローチね。きっと似合う。


「あの~、ご指示通りの石をお持ちしたのですが……本当にコレで宜しいのですか?」
「うん、十分。ありがとう」
「恐れ入ります」


 宝飾師が恐る恐る、トレーの上の細かい石を見せてくれた。
トーマスは、所謂屑石と呼ばれるそれを見て、少し不満気だ。


「殿下。今からでも、使用される宝石を変えてみては如何でしょう」
「昨日ちゃんと言ったでしょ。立派な石じゃ勿体ないって」
「ですが……少々貧相では?」


 加工する時に出た欠片や、規格外の小さい石だから、輝きは小さいし、たしかにショボい。
だけど、それで良いんだ。
 まとめて集めちゃえば、派手になるから!
 レオの毛だって、白銀に輝いて見えるけど、抜け毛はただの白い毛なんだ。
宝石も一緒だよ。同じ光り物だから。


『(ルトよ。絶対に何か勘違いしておるぞ)』


 せっかくだから、お父様をイメージして作ろう。
 その前に、型をどうしようか。無難に銀製のやつで……ああ、この真四角の形に決めたっ。
 石の意味とか考えてたら、時間が足りないから~、お父様の髪と同じ深い赤の石とぉ、瞳の金色!
……金色ないや。黄色でいっか。金色だと思えば、そう見えない事もないし。
 よし、良い感じ。黙々と作業を進めていくと、細工技師から待ったがかかった。


「お待ち下さい、殿下」
「へ」
「とても素晴らしい配色と、殿下の見事な手捌きには、感銘を受けます」
「ありがとう」
「いえ。そこで、差し出がましいのですが、私奴からご提案がございます」


 おお~、鼻息が荒いな。
 トーマス、この職人は大丈夫なの。


「話してみて」
「はい。我々の仕事では、加工して終わる作り方が主です。ですが、上位貴族の皆様がお持ちになる装身具は違います」
「へー。素材の問題じゃなくて?」
「勿論、素材も大きく異なりますが、1番は付与魔法が施されているか、否かです」


 付与魔法か。なるほど、考えてもみなかった。
剣や鎧に付ける魔法だとばかり。
 出来るなら絶対やりたい。王宮に付与魔法使える人居たっけか。
 

「貴方は出来るの?」
「はい」
「ほんとっ! じゃあ、疲労回復と防御と……」
「で、殿下?」
「ん? あ、欲張りすぎた?」
「いえ…その、申し上げ難いのですが、私では付与出来るのは1つ。よほど良い石を使っても2つが限界です」


 ありゃりゃ。だったら、防御にしようかな。


「ねえ、付与の仕方を教えてもらえない?」
「構いませんが、付与魔法は適性者が少ないので、その……」


 適性かぁ。きっと僕が適性なしで悲しむんじゃないかと心配してるんだね。
さっきから、ちらちらトーマスに助けを求めてるし。


「アベルト殿下。ここは、彼にお任せしては如何ですか」
「そうだね。でもやり方は教えてくれる?」
「はっはい! 勿論でございます。説明しながら、付与致しますね」
「うん、ありがとうね。えっと……」
「サイークと申します、殿下」
「じゃあ、作っちゃうから少し待ってて。サイーク」
「はい」


 石の配置を決めたら、宝飾師に頼んで填め込んでもらう。
その間に、兄様のブローチに取り掛かる。
 お母様と同じプラチナブロンドの髪色と、瞳の金…もどきの黄色! 
バックルと違って、デザインは自由だから~、レオにしよう!
 兄様もレオが大好きだもん。僕もお揃いで作っちゃおっかな。


「あれ、上手くいかない」
「おや、可愛いらしい。白い犬、いや狼でしょうか」


 トーマス。褒めてくれるのは、嬉しい。
けど、これはレオだよ。狼よりずっと強い、獅子なんだから。


「むぅ。ハイ、配置終わり!
填め込みよろしく!」
「???」


 トーマスの分からずやめっ。


「では殿下、バックルの方は出来上がった様なので付与を始めて宜しいですか」
「お願い」
「何を付与するか、お決まりですか」
「うん。防御が良いな。こう、盾になるような」


 身振り手振りでサイークに希望を伝える。
 イメージは結界に近い。


「そうですね。石のランクが低いので、防げて下級魔法1~2回と言ったところでしょうか」
「そっかあ。まあ、ちゃんとした魔法具は別に持ってるから、大丈夫。それでよろしく」
「はい。方法は単純です。付与したい効果を出来るだけ具体的にイメージします。あとは、付与する媒体に集中して魔法を発動させるだけです」
「ふんふん」
「それでは、発動しますね。付与効果は防御。それをイメージしーーーーな゛っ」
「ふむふむ、イメージ、イメージ。
わっ! 光った! すごい、これで完成したの?」


 サイークの隣で一緒に付与するフリをして、気分を味わう事が出来た。
しかも、僕が「ココだ!」と、思った瞬間に石が光った。ナイスタイミングだよ、サイーク。
 僕とサイークは気が合うのかも知れない。


「……そんな、馬鹿な」
「どうしたの。失敗しちゃった? 大丈夫だよ、まだ材料あるから」
「ブローチの方も準備が出来ております。
サイーク殿、此方からされますか?」


 サイークの固まった顔を見て、僕は慌ててフォローに入った。
トーマスも気を利かせ、先にブローチを勧めている。


「おい、サイーク。今のは、まさか」
「あ、ああ。そのまさかだ」


 あ、2人は知り合いなのか。優秀な職人同士だから、知らない方がおかしいのかも知れないけど。
 君達、仲良いね。僕等を放って、バックルをあらゆる角度から観察するとは。ある意味肝が据わって今るよ。


「ごっほん。殿下の御前ですよ」
「「はっ、し、失礼致しました!」」
「さ、付与を続けて下さい。殿下をお待たせするおつもりですか」


 全然待ってない。むしろ驚くほどスピーディーに進んでいる。
 台座に填めてもらう時だって、宝飾師の手先が速すぎて、見えなかったくらいだ。
 僕なんか、ぷるぷる震えながら配置してったのに。


「はひっ。し、しかし、侍従長殿っも、問題が発生致しまして」
「何ですと。まさか今更、付与出来ないと言うのではないでしょうね。貴方は、王族を謀ったのですか!」
「ヒイィッ」
「もしかして、小さすぎて無理だった?
別に無しでも僕は良いよ」


 どうせトーマスとカリアに言われて、作らされてるだけだから。
 完成度より、作った事実さえあれば問題なし。
 お父様も兄様も、僕にそこまで求めてないよ。


「いいえっ、付与は完了しております!」
「あ、そうなの。じゃあ、良いじゃない」
「ただ、私が付与したわけではありません」


 んん?


「それは、元から付与魔法が施されていた、という事でしょうか」
「違います。宝飾師シトリンが用意した石に、その様な物はありませんでした」
「……まさか!」
「はい。恐らく、そのまさかにございます」
「今直ぐ、鑑定士を手配しなさい!
それと、王妃殿下に本日の朝食を遅らせる連絡を!」
「「「承知しました!」」」


 なんだ、なんだ。どうした急に。
 トーマスが大きな声で指示を飛ばし、メイド達が一気に部屋から飛び出して行く。


「トーマス?」
「殿下、もう少々お待ち下さいませ。
あ、カルロ殿下のブローチは、そのままにしておいて下さいませ。陛下のバックルには、触れない様に」
「分かった」
「結構です。私、席を外しますが、直ぐ戻って参ります。その間、職人達かれらとお話されていて下さい」
「うん」
「アイリーン、殿下と彼等に新しいお茶を」
「はい」


 ねえ、なんなの。せめて説明してから、出てって。
除け者にされたみたいで、淋しい。





「アベルト殿下。私共と、宝石の種類や付与効果について、お話しませんか?」
「うん、する!」


 説明よりも、もっと楽しそうな誘いを受け、僕はすっかりご機嫌になった。
 アイリーンには、その間、生温かい目で見られていた。
 さっきまで空気に徹してたくせに。こういう時だけ~。
やめろ、見るな。僕の不満が解消されたわけじゃないんだぞ!


「二重付与と言うのはですね」
「えっ、二重? もっかい、もう1回今の話して!」

「(アベルト様、ちょろすぎます。アイリーンは心配で心配で……ああ、かわい)」




感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしさえいなければ、完璧な王太子だそうです。

ふらり
恋愛
人並外れた美貌・頭脳・スタイル・武勇を持つウィンダリア王国の25歳の王太子は、完璧な王太子だと言われていた。ただし、「婚約者さえいなければ完璧な王太子なのに」と皆が言う。12歳の婚約者、ヴァイオレット・オルトニーは周囲から憐みの目を向けられていた。 「私との婚約は、契約で仕方なくなのかい? もう私に飽きてしまっている? 私は今でも君にこんなに夢中なのに」 13歳年下の婚約者少女に執着溺愛する美貌も能力も人間離れした王太子様と、振り回される周囲のお話です。小説家になろうにて完結しております。少しずつこちらにもあげていくつもりです。ファンタジー要素はちょっぴりです。

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

亡き姉の身代わりとして嫁いだ私ですが、離縁状を置いた翌朝、夫が私の「真実」に気づいたようです』

まさき
恋愛
「サインはもう、いただきました。あとは私がこの屋敷を出るだけです」 ​五年間の結婚生活。侯爵令嬢エルゼが演じ続けたのは、亡き姉・ロザリーの「身代わり」という配役だった。 夫であるカイル公爵が愛していたのは、かつて雪の中で自分を救ってくれた初恋の少女・ロザリー。 生き写しの妹であるエルゼを娶りながらも、彼は一度も彼女を「エルゼ」と呼ぶことはなかった。 ​冷淡な視線、姉と比較される日々。 「君はどこまでいっても、ロザリーの代わりにはなれない」 その言葉を最後に、エルゼは静かに離縁状を置き、屋敷を去る決意をする。 ​しかし、彼女が消えた翌朝。 カイルは、エルゼが大切に遺していった古い小箱を見つける。 そこにあったのは、十五年前のあの日、彼が「命の恩人」に預けたはずの片方のカフスボタン。 そして、幼いエルゼが綴った、あまりにも切ない真実の日記だった。 ​――「あの日、雪の中で貴方を抱きしめていたのは、お姉様ではなく、私だったのです」 ​真実を知り、絶望の中でエルゼを追うカイル。 だが、すべてを捨てて「自分」を取り戻したエルゼは、もう二度と、彼の隣で微笑む仮面の妻には戻らない。 ​これは、名前を奪われた女が自由を掴み、愚かな夫が真実の愛を失うまでの、静かで鮮やかな再生の物語。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!

夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」 婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。 それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。 死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。 ​……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。 ​「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」 そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……? ​「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」 ​不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。 死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。