11 / 59
10 依頼所
しおりを挟む
「よお、今日も来たか、シロ」
ユキと今日は何をしようかと考えていたら、後ろから声がかけられた。
――この声は!
僕が期待に胸を膨らませて振り返ると、そこには軽く手をあげ、爽やかに微笑むラパンが立っていた。
「ラパン!」
僕は嬉しくなって、思い切りラパンの胸に飛び込んだ。
「おおっ、今日も朝から元気がいいな」
「うん! ラパンに会えて嬉しいから!」
僕は思い切りぎゅーっとラパンに抱きついて、頼り甲斐のある胸に顔を埋めた。
ラパンはスラッとした長身だけど、こうやって胸に飛び込むとわかる。剣術に長けているだけあって、しっかりと筋肉がついている。
「すっかり懐いたな」
ラパンはそう言いながら、僕の頭をポンポンと撫でてくれる。うん、これこれ。僕はこうやって頭を撫でられるのが好きなんだ。
でも、やっぱりこの感じ、すごく昴さんに似ている。同じように、僕を見守る優しいお兄さんだからかな?
あれ? ラパンは何歳なんだろ。そもそも、この世界に年齢なんてあるんだろうか。
僕が頭の中でごちゃごちゃ考えていると、頭上から声がした。
「今日の計画を立てたいから、そろそろ離れられるか?」
楽しそうに笑いながら言われて、自分がいつまでもピタッとラパンに抱きついているのを思い出した。
「あ! ごめんね。ラパンの腕の中って、心地が良いから」
顔を離してヘラッと笑うと、ラパンは「ったく、無自覚って怖いよな」って、ぼそっと言った。
何? 無自覚がどうしたの?
僕は意味がわからなくて、コテっと首を傾げた。
「今日は何か、簡単な依頼でも受けてみるか?」
「依頼?」
「討伐系じゃない、街の外に出なくても受けられる依頼もあるんだ」
「それなら僕にもなんとかなるかもしれない!」
昨日の初心者の部屋で、僕は戦闘に向いてないんだと、よーくわかった。
ラパンやユキのように、前線で切り抜けていける人のサポートはできそうだけど、練習じゃない戦闘になったら、テンパって全くの役立たずになりそうだ。
体験版なら、強大な敵に立ち向かう必要もないし、目的を持って旅に出なくても大丈夫。この町でずっと過ごすのだってありなんだ。
「依頼所は、案内所の隣の建物だ」
ラパンがそう言って指差した先には、依頼所の看板が見えた。ひっきりなしに、人が出入りしている。
僕が行って邪魔にならないかな? って心配になりながら、ラパンの後について建物内に入った。
「難易度の高い依頼もあるけど、おそらく体験版では受けられないはずだ。昨日シロが食事処で聞こえてきた、時が止まった街の噂も、難易度が高い依頼なんだ」
「え? そうなの?」
「本来は、人々の話として聞こえてこないはずなんだが……」
そういえば、僕がベアウルフに襲われた時も、こんな風に考え込んでいた。
知り合いに頼まれて何度もログインしていると言っていたから、何か異変があったら気づくのかな? わかんないけど。
「まぁ、とりあえず何か依頼を受けてみよう。何か気になるのはあるか?」
「えーっと。……あ! これ、お土産屋さんのお手伝いというのは?」
「なになに? お土産屋の品出しの手伝い求む?」
「わー、なんかスーパーみたい!」
「じゃあこの紙を取って、受付に持って行こう」
この世界のお土産にも興味あるし、きっとこの依頼なら迷惑をかけずにすみそうだ。
僕はラパンの言う通り、掲示板に貼ってある依頼の紙を手に持ち、受付へと向かった。
「はい、この依頼を受けるんですね。依頼主はメプさんですね。では、これを持って、街の真ん中にある広場の近くにある、お土産屋に行ってください」
「わかりました」
「完了しましたら、依頼主にサインをいただいて、またここに戻ってきてくださいね」
「ハイっ!」
僕は元気に返事をすると、依頼所を出た。目指すは街の中心地だ。
まだログインしたばかりだからなのか、人通りはそんなに多くない。
周りに迷惑がかからないとわかったので、僕はスキップしながら道を進んだ。もうこれだけで楽しい。
「依頼主は、どんな人かなー」
「ああ、会えばわかるけど、ゆったりしていて穏やかだよ」
「ラパンは会ったことあるの?」
「俺も依頼を受けたことがあるからな」
「えーっ! ラパンも品出し?」
僕が驚いてラパンを見たら、楽しそうに「ほんと、シロといると飽きないな」って笑って言った。
褒められてる……よね? 僕はそう思うことにした。
「ちょっと厄介な客が来て困っているから、対応してほしいと言う依頼だったんだ」
「厄介な客?」
「いわゆるクレーマー。店側の落ち度がないのに、難癖つけてくるようなやつ、どの世界でもいるんだな」
「えー、そんなの、NPCじゃないでしょ? プレイヤーってこと?」
「おそらくな。知り合いに頼まれて何回かログインをしていると言っただろ? 他の人より、ちょっとだけこのゲームに詳しいんだ」
僕はVRゲーム自体も初めてだったし、リベラリアのプレイだってもちろん初めてだ。
だから、普通のVRゲームと体験版の違いもよくわからないし、ラパンが説明してくれる断片的なことしかわからない。
どうしてプレイヤーがNPCに嫌がらせをするのかも、全く理由を想像できなかった。
「それでそのクレーマーはどうしたの?」
「まぁ、ちょっと反省させて、もう二度と現れないように約束させただけだから、そいつがどうなったかは知らないけどな」
ラパンはなんかサラッと言ったけど、僕は、ラパンが何をしたのか想像するのはやめておこうと思った。
ユキと今日は何をしようかと考えていたら、後ろから声がかけられた。
――この声は!
僕が期待に胸を膨らませて振り返ると、そこには軽く手をあげ、爽やかに微笑むラパンが立っていた。
「ラパン!」
僕は嬉しくなって、思い切りラパンの胸に飛び込んだ。
「おおっ、今日も朝から元気がいいな」
「うん! ラパンに会えて嬉しいから!」
僕は思い切りぎゅーっとラパンに抱きついて、頼り甲斐のある胸に顔を埋めた。
ラパンはスラッとした長身だけど、こうやって胸に飛び込むとわかる。剣術に長けているだけあって、しっかりと筋肉がついている。
「すっかり懐いたな」
ラパンはそう言いながら、僕の頭をポンポンと撫でてくれる。うん、これこれ。僕はこうやって頭を撫でられるのが好きなんだ。
でも、やっぱりこの感じ、すごく昴さんに似ている。同じように、僕を見守る優しいお兄さんだからかな?
あれ? ラパンは何歳なんだろ。そもそも、この世界に年齢なんてあるんだろうか。
僕が頭の中でごちゃごちゃ考えていると、頭上から声がした。
「今日の計画を立てたいから、そろそろ離れられるか?」
楽しそうに笑いながら言われて、自分がいつまでもピタッとラパンに抱きついているのを思い出した。
「あ! ごめんね。ラパンの腕の中って、心地が良いから」
顔を離してヘラッと笑うと、ラパンは「ったく、無自覚って怖いよな」って、ぼそっと言った。
何? 無自覚がどうしたの?
僕は意味がわからなくて、コテっと首を傾げた。
「今日は何か、簡単な依頼でも受けてみるか?」
「依頼?」
「討伐系じゃない、街の外に出なくても受けられる依頼もあるんだ」
「それなら僕にもなんとかなるかもしれない!」
昨日の初心者の部屋で、僕は戦闘に向いてないんだと、よーくわかった。
ラパンやユキのように、前線で切り抜けていける人のサポートはできそうだけど、練習じゃない戦闘になったら、テンパって全くの役立たずになりそうだ。
体験版なら、強大な敵に立ち向かう必要もないし、目的を持って旅に出なくても大丈夫。この町でずっと過ごすのだってありなんだ。
「依頼所は、案内所の隣の建物だ」
ラパンがそう言って指差した先には、依頼所の看板が見えた。ひっきりなしに、人が出入りしている。
僕が行って邪魔にならないかな? って心配になりながら、ラパンの後について建物内に入った。
「難易度の高い依頼もあるけど、おそらく体験版では受けられないはずだ。昨日シロが食事処で聞こえてきた、時が止まった街の噂も、難易度が高い依頼なんだ」
「え? そうなの?」
「本来は、人々の話として聞こえてこないはずなんだが……」
そういえば、僕がベアウルフに襲われた時も、こんな風に考え込んでいた。
知り合いに頼まれて何度もログインしていると言っていたから、何か異変があったら気づくのかな? わかんないけど。
「まぁ、とりあえず何か依頼を受けてみよう。何か気になるのはあるか?」
「えーっと。……あ! これ、お土産屋さんのお手伝いというのは?」
「なになに? お土産屋の品出しの手伝い求む?」
「わー、なんかスーパーみたい!」
「じゃあこの紙を取って、受付に持って行こう」
この世界のお土産にも興味あるし、きっとこの依頼なら迷惑をかけずにすみそうだ。
僕はラパンの言う通り、掲示板に貼ってある依頼の紙を手に持ち、受付へと向かった。
「はい、この依頼を受けるんですね。依頼主はメプさんですね。では、これを持って、街の真ん中にある広場の近くにある、お土産屋に行ってください」
「わかりました」
「完了しましたら、依頼主にサインをいただいて、またここに戻ってきてくださいね」
「ハイっ!」
僕は元気に返事をすると、依頼所を出た。目指すは街の中心地だ。
まだログインしたばかりだからなのか、人通りはそんなに多くない。
周りに迷惑がかからないとわかったので、僕はスキップしながら道を進んだ。もうこれだけで楽しい。
「依頼主は、どんな人かなー」
「ああ、会えばわかるけど、ゆったりしていて穏やかだよ」
「ラパンは会ったことあるの?」
「俺も依頼を受けたことがあるからな」
「えーっ! ラパンも品出し?」
僕が驚いてラパンを見たら、楽しそうに「ほんと、シロといると飽きないな」って笑って言った。
褒められてる……よね? 僕はそう思うことにした。
「ちょっと厄介な客が来て困っているから、対応してほしいと言う依頼だったんだ」
「厄介な客?」
「いわゆるクレーマー。店側の落ち度がないのに、難癖つけてくるようなやつ、どの世界でもいるんだな」
「えー、そんなの、NPCじゃないでしょ? プレイヤーってこと?」
「おそらくな。知り合いに頼まれて何回かログインをしていると言っただろ? 他の人より、ちょっとだけこのゲームに詳しいんだ」
僕はVRゲーム自体も初めてだったし、リベラリアのプレイだってもちろん初めてだ。
だから、普通のVRゲームと体験版の違いもよくわからないし、ラパンが説明してくれる断片的なことしかわからない。
どうしてプレイヤーがNPCに嫌がらせをするのかも、全く理由を想像できなかった。
「それでそのクレーマーはどうしたの?」
「まぁ、ちょっと反省させて、もう二度と現れないように約束させただけだから、そいつがどうなったかは知らないけどな」
ラパンはなんかサラッと言ったけど、僕は、ラパンが何をしたのか想像するのはやめておこうと思った。
85
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる