【完結】VRゲームの世界でキミを待つ

一ノ瀬麻紀

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19 うさぎの街

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「いらっしゃーい!」

 3匹の子うさぎたちは、僕たちの足元まで来て、ぴょんぴょん跳ねながら、口々に「いらっしゃい」とか「こんにちは」とか元気に挨拶をしてくれた。
 それに続いて、この前助けたうさぎさんが顔を出した。

「いらっしゃい。わざわざ足を運んでくださり、ありがとうございます。モンスターは大丈夫でしたか?」
「こんにちは。モンスターを寄せ付けないアイテムを使ったので、何事もなくたどり着けました」
「それは良かったです。ささ、とりあえず家でお茶でもと言いたいところなのですが、我が家はうさぎ仕様になってまして、ちょっと手狭なのです。なので甘味処でお茶でもしませんか?」
「甘味処?」
「甘いお菓子と美味しいお茶をメインに、軽食なども取り扱っているお店ですよ」
「それはぜひ行きたいです!」

 僕とうさぎさんが盛り上がっていると、その様子をラパンとユキがニコニコと嬉しそうに見つめていた。
 最近はラパンだけじゃなく、ユキまでも僕の保護者のようになっている気がする……。

「私はうさぎの姿のままで変化へんげできないので、おもてなしができなくて、申し訳ないです」
「そんなことないです。こうやって歓迎していただき、素敵なお店を紹介してくださるだけでも、僕は嬉しいんです」
「そう言っていただけると、私も嬉しいです。……あ、ここですここです!」
「うわぁ、可愛い!」

 足を止めたのは、まるでお菓子の家のような、メルヘンチックな建物だった。
 可愛いものが好きな僕は、一気にテンションが上がった。

 店内も、うさぎモチーフのグッズなどを中心に、可愛いもので溢れ返っていた。

「この街って、住んでるのもうさぎが多いし、グッズやモチーフもうさぎ関連が多いんですね」
「ええ、そうなんです。うさぎを前面に押し出した、観光地になればいいなって、街全体で頑張っているところなんです」
「それは僕も大歓迎です! どこを見てもうさぎだなんて、夢みたいです」
「ふふふ。じゃあ、常連さんになっていただけそうですね」
「もちろんです!」

 ログイン禁止を言い渡されて、気落ちしていた日のことなどすっかり忘れるくらい、僕は幸せで楽しい気持ちでいっぱいになった。
 先生に、ゲームの中とはいえ無理しすぎないようにと言われたのも忘れ、ついつい一緒になってぴょんぴょん跳ねてはしゃいでしまった。


「楽しい時間は、あっという間ですね……」

 僕は、うさぎさんと3匹の子うさぎたちに見送られ、街の出入り口まで来ていた。
 うさぎさんを訪ねて、ホワイトバロウに来たのはついさっきのような気がするのに、もう夕焼け空だ。
 明るいうちにグリーンヒルに戻らないと、夜は昼間より強いモンスターが出るらしい。とは言っても、アイテムを使えば問題ないけど、ログアウト時間が遅くなってしまうのもいけない。

「また遊びに来てくださいね」
「もちろんです。何度でも来ます」

 僕たちは再会を約束して、街を出た。夕焼けは綺麗だけど、今はログアウトの時間が近づいているのを実感してしまうから、やっぱり寂しい景色に思えてしまった。



 この日の夕飯も、食事処で済ませることにした。他にも食事ができるところはあるけど、ここが一番メニューが多い。
 ゲーム世界の不思議な食材や料理にもだいぶ慣れ、見た目が変わっているものを選んで注文するようになった。だって、現実世界じゃあり得ない料理も多くて、ここでしか楽しめないから。

「本日の日替わりメニューだって!」
「なんだろう? 聞いてみるか?」
「ううん、聞かないで頼んで、何が出るのか楽しみたい!」
「ほぉ、来たばかりの頃とは大違いだな」

 僕が余裕ぶって、内容がわからないメニューを注文しようとしたら、ラパンは楽しそうに笑った。

「お待たせしました、こちら、『星砂のリゾット』です」
「星砂!?」
「はい、ルミナ海岸の砂浜で取れる、特別な星砂なんです。この星砂だけは食べられるんですよ。食感も楽しいので、温かいうちに召し上がってみてください」

 僕は店員さんの言葉を半信半疑で聞きながら、スプーンですくってみると、僕の知っているのと見た目そっくりな星砂が入っていた。食べたらガリッとかいわないよね? ちょっと心配になったけど、ぱくりと食べた。

「うわぁ! すごい、口の中でパチパチはじける! あの有名アイスみたい!」

 しかも、とても美味しい。リゾットは優しい味で、星砂の刺激が不思議なアクセントになっている。

「ほんとだ!」
「おもしろーい!」

 ラパンもユキも、初めて食べたらしく、僕と同じような反応をしている。僕たちは顔を見合わせ笑い合った。

「ごちそうさまでした。美味しかったー!」
「次回も日替わりメニューを頼んでみるか?」
「いいね! 新しい出会いがきっとあるよ!」
「そうしよー」

 僕たちは楽しく次の約束をしながら、店を出た。
 そして、今日は宿には泊まらず、この場で解散することになった。
 また明日ねーと言いながら、パネルを出現させ、ログアウト操作をした。

 この時僕は、明日もいつものようにゲームを楽しめると、疑いもしなかった。
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