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20 ひとりぼっち
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今思い返すと、小さな異変はいくつもあった。
初回ログインで何故か草原スタートになってしまったり、本来この辺りには出現しないはずのベアウルフがいたり、平均値に設定されているはずの僕のステータスが偏っていたり、体験版では出てこないはずの高難易度の依頼の話が聞けてしまったり。
でもそれは、正式リリース前の体験版だし、そういうこともあるのかな? ……程度にしか考えていなかった。
だからまさか、『ログアウトボタンが消失』するなんて、思いもしなかった。
夕焼け空の下、本来あるはずの場所にログアウトボタンが見つからず、開いたままのパネルを前に、僕は呆然と立ち尽くしてしまった。
◇
予定していた検査も全て終わり、明日には退院できることになった6日目の午後。
いつものようにログインすると、ポンっとお知らせパネルと共に、アナウンスが流れてきた。
『本日はサポートキャラのメンテナンスのため、呼び出し不可となっています。緊急メンテナンスのため、連絡が遅くなり申し訳ありません。メンテナンス終了後にアナウンスをさせていただきます。ご不便をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします』
一通り目を通すと、パネルはシュッと消えた。
「うーん、今日はユキいないのかぁ」
サポートキャラとして頼りにしているというのももちろんあるけど、やっぱりユキは僕にとって癒しだ。今日も会えるのを楽しみにやってきたのに、メンテナンスで会えないなんて、すごく残念。
でも仕方がないから、今日は街の外には絶対出ないようにして、のんびり過ごそうかな。もうすぐラパンも来るだろうし。
僕は通りを歩きながら、ラパンが来るのを待った。けど、お昼になっても現れない。
いつもほぼログインと同時に現れるのに、珍しいな? そう思いつつ、連絡先も知らないので一人で過ごすことにした。
ラパンと一緒に食べようと思ったのに会えないから、いつもの食事処ではなく、街の中心にある広場にあるキッチンカーに行ってみた。手軽に食べられる軽食が売られている。
一人の時に知らない食べ物を口にする勇気もないので、シンプルなホットドッグとソーダのセットを頼んだ。テーブルが設置されているので、そこで食べた。
「何しようかな~」
いつもはユキやラパンと一緒だから、やりたいことはたくさんだし、あっという間に時間が過ぎていく。……なのに今日は、いつまで経っても空が茜色にならない。
「あ! まだやったことのない、アイテム生成にチャレンジしてみようかな!」
一人でいるのが寂しくて、思わず心の声が口から出てしまった。けど、あたりを行き交う人々は、僕の独り言は気に留めず、隣にいる人と楽しそうに話をしながら通り過ぎていった。
そりゃそうか。ここにいるのは、みんなNPCだもんね。僕が話しかけない限りは、会話が発生しない。
奇跡的な出会いをしたラパンがいつも隣にいたから、それが当たり前になってしまっていたんだ。
体験版はプレイヤーに滅多に会えないと言っていたから、これが普通だということに今さらながら気づいた。
僕は、アイテム生成のことについて聞こうと、重い足取りで街外れの初心者の部屋に向かった。
「ようこそ、初心者の部屋へ。ご利用されますか?」
「はい」
「それでは、こちらに手をかざしてください」
AI搭載のNPCでも、受付などテンプレでのやり取りになるのかな?
初めてここに来た時のやりとりと違って、やけに機械的な印象を受けて余計に寂しくなってしまった。
けど、手をかざして認証され、僕の情報を引き出したからだろうか。ふと表情が変わったような気がした。
「シロさんですね。先日はご利用ありがとうございました。……本日はどうされましたか?」
「えっと、アイテム生成についてお聞きしたくて……」
「アイテム生成ですね。承知しました。……今日は、お連れ様はいらっしゃらないのですか?」
ルナさんは、受付作業をしながらも、僕の周りに視線を移す。
「あ、今日は1人なんです」
「そうなんですね。ログイン回数に限らず、アイテム生成がまだの方でしたら、一緒に説明させていただこうと思ったのですが……」
「次回は、一緒に連れてきます」
「アイテム生成は何かと便利ですので、一度はお話を聞いていただけると、参考になると思いますので、ぜひ」
ルナさんはそう言ってにこりと笑った。
相手はAI搭載のNPCだとしても、気にかけてもらえたのがすごく嬉しくて、1人で心細い僕の心に、じわりと温かい気持ちが流れ込んできた。
初回ログインで何故か草原スタートになってしまったり、本来この辺りには出現しないはずのベアウルフがいたり、平均値に設定されているはずの僕のステータスが偏っていたり、体験版では出てこないはずの高難易度の依頼の話が聞けてしまったり。
でもそれは、正式リリース前の体験版だし、そういうこともあるのかな? ……程度にしか考えていなかった。
だからまさか、『ログアウトボタンが消失』するなんて、思いもしなかった。
夕焼け空の下、本来あるはずの場所にログアウトボタンが見つからず、開いたままのパネルを前に、僕は呆然と立ち尽くしてしまった。
◇
予定していた検査も全て終わり、明日には退院できることになった6日目の午後。
いつものようにログインすると、ポンっとお知らせパネルと共に、アナウンスが流れてきた。
『本日はサポートキャラのメンテナンスのため、呼び出し不可となっています。緊急メンテナンスのため、連絡が遅くなり申し訳ありません。メンテナンス終了後にアナウンスをさせていただきます。ご不便をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします』
一通り目を通すと、パネルはシュッと消えた。
「うーん、今日はユキいないのかぁ」
サポートキャラとして頼りにしているというのももちろんあるけど、やっぱりユキは僕にとって癒しだ。今日も会えるのを楽しみにやってきたのに、メンテナンスで会えないなんて、すごく残念。
でも仕方がないから、今日は街の外には絶対出ないようにして、のんびり過ごそうかな。もうすぐラパンも来るだろうし。
僕は通りを歩きながら、ラパンが来るのを待った。けど、お昼になっても現れない。
いつもほぼログインと同時に現れるのに、珍しいな? そう思いつつ、連絡先も知らないので一人で過ごすことにした。
ラパンと一緒に食べようと思ったのに会えないから、いつもの食事処ではなく、街の中心にある広場にあるキッチンカーに行ってみた。手軽に食べられる軽食が売られている。
一人の時に知らない食べ物を口にする勇気もないので、シンプルなホットドッグとソーダのセットを頼んだ。テーブルが設置されているので、そこで食べた。
「何しようかな~」
いつもはユキやラパンと一緒だから、やりたいことはたくさんだし、あっという間に時間が過ぎていく。……なのに今日は、いつまで経っても空が茜色にならない。
「あ! まだやったことのない、アイテム生成にチャレンジしてみようかな!」
一人でいるのが寂しくて、思わず心の声が口から出てしまった。けど、あたりを行き交う人々は、僕の独り言は気に留めず、隣にいる人と楽しそうに話をしながら通り過ぎていった。
そりゃそうか。ここにいるのは、みんなNPCだもんね。僕が話しかけない限りは、会話が発生しない。
奇跡的な出会いをしたラパンがいつも隣にいたから、それが当たり前になってしまっていたんだ。
体験版はプレイヤーに滅多に会えないと言っていたから、これが普通だということに今さらながら気づいた。
僕は、アイテム生成のことについて聞こうと、重い足取りで街外れの初心者の部屋に向かった。
「ようこそ、初心者の部屋へ。ご利用されますか?」
「はい」
「それでは、こちらに手をかざしてください」
AI搭載のNPCでも、受付などテンプレでのやり取りになるのかな?
初めてここに来た時のやりとりと違って、やけに機械的な印象を受けて余計に寂しくなってしまった。
けど、手をかざして認証され、僕の情報を引き出したからだろうか。ふと表情が変わったような気がした。
「シロさんですね。先日はご利用ありがとうございました。……本日はどうされましたか?」
「えっと、アイテム生成についてお聞きしたくて……」
「アイテム生成ですね。承知しました。……今日は、お連れ様はいらっしゃらないのですか?」
ルナさんは、受付作業をしながらも、僕の周りに視線を移す。
「あ、今日は1人なんです」
「そうなんですね。ログイン回数に限らず、アイテム生成がまだの方でしたら、一緒に説明させていただこうと思ったのですが……」
「次回は、一緒に連れてきます」
「アイテム生成は何かと便利ですので、一度はお話を聞いていただけると、参考になると思いますので、ぜひ」
ルナさんはそう言ってにこりと笑った。
相手はAI搭載のNPCだとしても、気にかけてもらえたのがすごく嬉しくて、1人で心細い僕の心に、じわりと温かい気持ちが流れ込んできた。
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