【完結】君を知らないまま、恋をした

一ノ瀬麻紀

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 僕たちがメプさんのところへ向かって歩いていると、突然空からピンクの物体が降ってきて、僕の腕の中に飛び込んできた。

「モモチ!」

 どうやって飛んできたかは謎だけど、ピンクの物体がモモチだということはすぐにわかった。

「これから、メプさんのところに行こうと思ってたんだ。モモチはどうしたの?」
「モモチもメプさんのところに行く! ユーアさんも一緒だよ」
「ユーアさんも……」
「お主たちがメプのところに向かっていると、水晶が教えてくれたからな」
「わっ」

 ユーアさんも合流するんだね? って言おうとしたら、耳元で話しかけられ、びっくりして飛び退いてしまった。
 ユーアさんが、いつの間にか僕の隣に並んで歩いていたのに、全く気づかなかったんだ。

 でもその後ろで、ラパンはくすくすと笑っているし、いつの間にかラパンの肩に移動していたユキも、楽しそうに肩の上でぴょこぴょこっと跳ねている。
 あ、そうか。気づいていたのに、僕の反応が見たくて黙っていたのか。
 僕はちょっと口をへの字にして不満を表してみたけど、やっぱりユキは可愛いからまぁいいかって思っちゃうんだ。我ながらチョロいな。

「みんな、いらっしゃ~い」
「メプさん、こんにちは。先日はお世話になりました」
「いいのよいいのよ~。困った時はお互い様よぉ~」
「あの後は問題なく、いつも通りです」
「よかったわねぇ~。楽しんでいってねぇ~」
「はい」

 この前お世話になったお礼と、エラーの解消と問題なくログアウトできたことの報告。その後のログインも通常と変わらずできたことの報告をした。

 メプさんのお言葉に甘え、2階の住居部分でしばらくみんなで談笑した後、またねと約束をしてお土産屋さんを後にした。
 久しぶりにみんなと過ごした時間は、あの日の緊張を忘れさせてくれるくらい穏やかで楽しい時間だった。



 メプさんたちと別れてから、食事処で夕飯を食べることにした。
 ゲーム内ならではの料理が楽しくて、何回か食べているけど、今日頼むものを僕はもう心に決めていた。

「今日も日替わりがいいな」

 僕は好き嫌いがほとんどないから、日替わりを選んで、何が出てくるかわからない楽しみを味わいたいんだ。

「僕も!」
「俺も一緒にするかな」
「じゃあ、すみませーん、日替わり2人前と、ハーフお願いしまーす」

 グリーンヒルには、人間だったり獣人だったり、小動物だったり、いろんな種族が住んでいたり立ち寄ったりするから、料理もサイズがいくつか用意されているから助かる。
 料理だけではなく、普段の衣料品や、冒険者用の武器や防具もサイズ展開が多い。

「お待たせしました~。本日の日替わりは『虹魚のホイル焼き』です」
「これは、どういった料理なんだ?」
「仕掛けがあるので、まずはホイルを開けて、召し上がっていただければと思います」

 とにかく食べてみろってことだね。どんな仕掛けなんだろう、楽しみだな。
 ワクワクしながらホイルを開けようとした瞬間、香りが漂い、さらに切り開くと、パァッと虹が出てきた。

「虹!?」

 料理から虹が出るなんて初めて見たよ。

 ホイルを完全に広げると、虹は消えて、シャボン玉がふわふわと浮かんだ。シャボン玉が魚の上に静かに降り立つと、弾けて一気に香りが広がった。

「すごい! いい香り!」

 表面がキラキラと虹色に輝く魚をひとくち食べてみると、口いっぱいに香りが広がった。白身魚の香草焼きのような感じだ。

「うーん、美味しい~!」
「うまい!」
「僕、もっと食べられそうー」

 ユキは手が使えない代わりに、魔法で器用にフォークとナイフを使って、ホイル焼きを食べていた。
 体に見合う半分量のはずなのに、あっという間に食べ終わったようだった。

「ごちそうさま」
「おいしかったです」
「また食べたいなー」

 僕たちは、ホイル焼きのほかにも何品か頼み、最後はデザートで締めた。
 ふわふわ雲のパフェは、クリームが雲みたいに口の中で消えていって、本当に雲を食べているみたいだった。楽しくておいしくて大満足だった。

「そういえば、今日はどこで寝るのか考えてなかった」

 久しぶりのログインで浮かれていた僕は、すっかり今夜の宿のことを失念してしまっていた。

「大丈夫。2部屋予約してあるから」
「え? ほんと? さすがラパン! ありがとう!」
「僕、シロと一緒?」
「当然だな。ユキはシロのサポートキャラだし、そばにいるべきだろ」
「うん、任せといて!」
「ユキ、頼もしいよ」

 僕は、大好きなユキをぎゅーっと抱きしめた。
 ラパンも好きだし、僕たちは晴れて恋人になったけど、ユキに対する好きはまた別なんだ。兄弟に近い感情なのかもしれない。
 そんなユキと、今夜は寝るのも一緒なんだ。どんな話をしよう。とても楽しみだな。

 ワクワクした気持ちを抑えきれず、僕は思わずスキップしながら道を進んでいく。
 マジックバッグに付けた、うさぎのキーホルダーもゆらゆらと揺れ、ユキも同じように、ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねた。

 うさぎ獣人の僕、うさぎのキーホルダー、うさぎのサポートキャラのユキ。うさぎ好きの僕は、それだけでもとても楽しい気持ちになった。
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