【完結】君を知らないまま、恋をした

一ノ瀬麻紀

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「朝食を買ってきたから、一緒に食べよう」

 呼び鈴が鳴ったので、眠い目を擦りながら扉を開けると、ラパンが袋を手に持って立っていた。

「広場で朝市をやってたんだ。そこのパンが美味しそうだから買ってきた」
「えー。僕も行きたかったなー」
「行く前に声かけたのに、全然返事がないから俺だけで行ったんだよ。昨日は夜更かししてたんだろ?」
「うっ……。だって楽しかったんだもん……」

 昨日は初めてのお泊まりで、楽しくて嬉しくて、なかなか眠れなかったんだ。
 ログアウトボタン消失トラブルの時に、泊まったことはあるけど、あれは別。
 初めてリベラリアの夜を過ごしたけど、あの時は気持ちは落ち込んでるし、先は見えなくて不安だし、結局寝付けないまま朝を迎えたんだ。
 同じ『なかなか眠れない状態』なのに、こうも違うのかと思った。

 ラパンは、買ってきたパンとサラダをテーブルに並べた。そして、部屋に備え付けのコンロに鍋をかけ、スープを温めて、よそってくれた。これも朝市に売っていたらしい。

 食べ終わった後、今日1日の日程を確認した。

「今日はまず、グリーンヒル周辺のモンスターを狩って、素材集めするでいいか?」
「うん。この前攻撃魔法でモンスターを仕留めることができたから、今度はもう少し手際よくやっつけたい」
「練習を兼ねてだな」
「今日は、ラパンもユキもいるから、思い切りやってみてもいいかなって」
「わかった」

 ラパンがテーブルにマップを広げると、素材採取の場所の確認をした。

「この辺りがいいと思う。近くに回復の泉があるんだ。小回復だけど、実戦練習にはちょうど良いと思う」
「そんな便利な場所が!」
「この前のエラーの後に、ちょっとしたアップデートが入ったんだ。大きな変化はないけど、細かいところで利便性が上がっている」
「そうなんだね。僕も魔法でサポートできたらいいなって思うから、頑張る!」
「無理はするなよ」
「うん!」

 僕たちは宿のチェックアウトをし、荷物はマジックバッグにしまい、ラパンの提案したエリアに向かった。



「シロ、なかなか良かったぞ」
「うん、すごく頑張ってた。今日だけでも、魔法範囲は広がったし、威力も上がったよね」
「2人がいたから、大丈夫だと思ったんだ」

 午前中に依頼所へ行き、僕の訓練ついでにクリアできそうな依頼を受けて、そのまま草原に出た。
 いざという時に守ってくれる人がいると思うと、とても心強かった。僕は自分の力以上の結果を出せたんじゃないかな。

 僕たちはグリーンヒルに戻ってきて、依頼の達成報告と報酬を受け取り、貸し部屋に集まっていた。

「これ、さっき落ちてたものなんだけど……」

 僕はさっき草原で拾ったアイテムを、マジックバッグから取り出した。それは、ヘアゴムのような、何かわからないものだった。

「ああこれは、防御がプラスされるアクセサリーだ」
「ヘアゴムじゃなくて、アクセサリー?」
「鎧やローブなど、しっかりと装備するものと比べると軽視されがちだが、ステータス異常回避の効果や、身につけているだけでHP回復したり、冒険が後半になるほど効果の高いものが出てくるんだ」
「じゃあ、例えばこういうのを自分で作ったら、何か効果が付加されるのかな?」

 僕は、バッグの中からミサンガを取り出した。こちらの世界の糸を使って編んだものだ。

「僕、小さい頃から手芸が好きで、こっちの世界でも時間がある時に作ってみたんだ」
「これには、わずかにモンスター避けの効果が付与されているね~」
「ユキ、わかるの?」
「僕、アイテム鑑定できるからね」
「えー。早く教えてよ」
「今まで必要なかったもん」

 さりげなく自慢された気もするけど、サポートキャラだから、できることが多いんだろうなと納得することにした。
 プレイヤーが楽しく体験版を遊べるように、ちょうどいい塩梅でサポートしてくれているんだろうな。

「もしかしたら、僕が1人の時にこのミサンガを持ってたから、モンスター遭遇率が低くなってたのかも?」
「そうかもしれないね」
「そっかー。良かった。あれ以上出てきたら、僕1人じゃ手に負えなかったもん」

 小さい頃の趣味が、こんなところで役に立つとは思ってもいなかった。

「ねぇ、回復系のアイテムだけじゃなくて、アクセサリーも作ってみたらどう?」
「アクセサリーを?」
「うん、自分たちで身につけるのもいいし、売って資金にするのもいいね」
「僕は戦闘するより、そっちの方が性に合うかもしれないなー」
「じゃあ、午後はアクセサリーを作ってみる? 初心者の部屋に練習用のアイテムがあるから、まずはそこで作るといいかな」

 ユキが提案してくれたので、午後はモンスター狩りをする代わりに、初心者の部屋でアクセサリー制作をしてみることになった。
 ミサンガの効果は小さいけど、これが重要なアクセサリーを作れるようになったら、僕も役に立てるってことだよね。

 僕の作ったアクセサリーを身につけ、颯爽とモンスターをやっつけるラパンとユキの姿を想像して、ワクワクと胸が高鳴った。
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